自動車を意識したセンサ応用例に注目が集まる ――国際計量計測展&センサエキスポジャパン2006

組み込みネット編集部

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レポート 2006年4月12日

 2006年4月5日~7日,東京ビッグサイト(東京都江東区)にて,センサに関する展示会「センサエキスポジャパン2006」と,計量計測機器・技術に関する展示会「国際計量計測展」が開催された(写真1).会場では,自動車への応用を意識した展示が多く見られた.例えば,2台のカメラを使い自動車の外形などを数秒で測定できる3次元計測システムや,自動車のエンジン・ルームの容積を数秒で測定できる超音波計測システムなどが展示され,来場者の注目を集めた.

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[写真1] 国際計量計測展の入場登録所付近
2006年4月5日~7日,東京ビッグサイトで開催された.

●乾燥状態のまま物体の体積を測定できる体積計

 リオンは音響式の体積計(容積計)を展示した(写真2).従来,物体を水中に沈めて算出していた物体の体積や密度を,音響(15Hz~45Hz)を利用することで,乾燥状態のまま,およそ2秒で測定できる.

 例えば,燃焼室容積計「VM-230」は,エンジン製造工程において,シリンダ・ヘッドやシリンダ・ブロックなどで構成される燃焼室の上に,容積計のヘッドを載せることで燃焼室の容積を測定できる.また,同時に吸排気弁のリーク量も測定できる.精度は0.1ccで,すでに自動車メーカ数社への納入実績をもつ.価格は150万円前後.

 同社ではほかにも食肉,魚肉の脂肪率の測定や,プラスチック,金属の比重の測定などでの利用を見込んでいる.

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[写真2] リオンの音響式体積計の測定槽

●レーザ方式よりも測定時間が短い光学式の3次元ディジタイザ

 丸紅ソリューションは,ドイツGOM社の非接触光学式の3次元ディジタイザ「ATOS」シリーズを展示した(写真3).ディジタイザの構成要素は大きく二つ.一つは左右のCCDカメラとその中間にあるプロジェクション・ユニット(対象物にしま模様の光を投影)から構成されるセンサ・ヘッド,もう一つはセンサ・ヘッドから取り込んだ点群データを表示・修正・検査する専用ソフトウェアである.

 面による一括測定を行うため,他社のレーザ走査タイプよりも測定時間が短い.測定精度はおよそ0.1mm以下で,自動車の扉の形状や自動車全体の形状を3次元データ化する用途などに向く.このディジタイザから得られるのはポリゴン・データ.別売りのソフトウェアを使えば3次元CADの標準フォーマット(IGES,Initial Graphics Exchange Specification)に変換できる.

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[写真3] 丸紅ソリューションの非接触光学式3次元ディジタイザのセンサ・ヘッド
自動車メーカでは,メカ設計者が設計した金型をもとに,熟練工が自身のノウハウを注ぎ込み金型を製作する.その金型をディジタル・データ化したものがリファレンスのデータとなり,海外で金型を起こすケースもある.その際,このディジタイザが利用されている.

●周波数応答性に優れる力センサ

 旭日興産はスイスKistler社の力センサを展示した.動的分解能が0.05g~数gと高い.旭日興産では製造治具のピン・ヘッダの押しつけ圧や自動車の溶接機の押しつけ圧をリアルタイムに測り,ピン・ヘッダの基板への未接触や,溶接時のスパークといった異常を検知する.この力センサは,水晶で作られたワッシャを内蔵し,ワッシャに加わる圧力によって発する電荷を測定する.ひずみゲージも0.05g程度の力を測ることはできるが,測定時にひずみゲージそのものがひずむので,周波数応答性が良くない.

 力センサ「9207」(写真4)の測定範囲は±5kg重,応答特性は±10kHz以上.価格はセンサのみでおよそ29万円.

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[写真4] 旭日興産が扱うスイスKistler社の力センサ

●カーナビや携帯電話への応用が期待される6軸のモーション・センサ

 マイクロストーンは,外形が10mm×20mmと小型の6軸モーション・センサを展示した.3軸の加速度センサと3軸の角速度センサを内蔵し(写真5),X/Y/Z方向の加速度と,X/Y/Z軸周りの角速度を検出できる.同社ではカー・ナビゲーション・システムや携帯電話,携帯型ゲーム機,病院でのリハビリ指導などでの利用を見込んでいる.

 加速度センサの検出範囲は±2.5gで精度は1%,周波数範囲はDC~1000Hzになるもよう.角速度センサの検出範囲は±300°/sで精度は1%,周波数応答性は20Hzになるもよう.

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[写真5] マイクロストーンの6軸モーション・センサ
左側が加速度センサ,右側が角速度センサ.

●USB接続の計測モジュール

 米国National Instruments社は,パソコンにUSB接続できる小型計測モジュール「USB-92xxシリーズ」と「USB-60xxシリーズ」を展示した(写真6).内蔵する機能はモジュールによって違っており,価格が2万円から20万円までの9品種を用意する.

 例えば,低価格モデルの「USB-6008」は,分解能が12ビットでサンプル・レートが10kサンプル/sのアナログ入力を8チャネル,ディジタルI/Oを12チャネル,アナログ出力を2チャネルもつ.学生の実験や回路規模の小さいボードの動作チェックなどに利用されているという.

 また,中位モデルの「USB-9211」は,分解能が24ビットで入力電圧範囲が±0.08Vの熱電対に対応したアナログ入力を4チャネルもつ.同社ではパソコンの筐体温度や自動車の車内の温度測定などでの利用を見込んでいる.

 これらのモジュールには,測定したデータをパソコンに取り込んで表示したり,読み出したり,Excelにエクスポートしたりできるソフトウェア「VI Logger Lite」が付属している.

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[写真6] パソコンにUSB接続して使う米国National Instruments社の計測モジュール
学生の実験やボードの動作チェック,温度測定などに向く.会場では2週間の無料貸し出しキャンペーンを行っていた.

●波の高さや周期,向き,流速を測定する海象計

 カイジョーソニックは,波の高さや周期,向き,流速を測定する海象計「USW-1000」を展示した(写真7).本体上部に水位変動測定用の超音波送受信器(200kHz)をもつ.さらに,鉛直軸から30°傾いた3方向に対して,水粒子速度測定用の超音波送受信器(500kHz)を三つもつ.水深50mまでの海底に設置でき,ケーブル長は最大5km.

 例えば,防波堤を設計する際の事前調査や,津波,高潮などの異常監視に利用できる.すでに国土交通省港湾局の全国港湾海洋波浪情報網(NOWPHAS,ナウファス)や原子力発電所で数十台が運用されているという.

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[写真7] カイジョーソニックの海象計「USW-1000」
海中で十数年の運用実績をもつ.同社では観測システムとして,データ処理装置や記録計,Webサーバ,電話応答装置なども扱う.

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