開発競争の波は「優れたカメラ」から「防犯システム」へ ――SECURITY SHOW 2006

組み込みネット編集部

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レポート 2006年3月15日

 防犯機器や防犯システムに関する展示会「SECURITY SHOW 2006」が2006年3月7日~10日,東京ビッグサイトにて開催された(写真1).出展社数は過去最多の224社,来場者数は79,646人に達した.従来はカメラそのものの性能をアピールする展示が目立ったが,今回は無線LANやハード・ディスク,ネットワーク・カメラ,人検知センサなどを組み合わせた「防犯システム」の展示が目立った.これらの防犯システムはすでに現場に導入され,運用されているものも多いという.

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[写真1] SECURITY SHOW 2006の会場入り口
2006年3月7日~10日,東京ビッグサイトで開催された.

●ネットワーク・プロセッサを搭載したセキュリティ装置開発用ボード

 沖テクノクリエーションはセキュリティ装置開発用ボード「セキュリティ・アプライアンス・プラットフォーム SecApPlat-Engine」を展示した(写真2).Ethernet MAC(media access control)や暗号・復号処理,帯域制御などの機能を内蔵した米国Intel社製のネットワーク・プロセッサや,パケットの識別や抽出,検索を行うFPGA,検索機能付きメモリであるCAM(content addressable memory)などを搭載する.

 このボードは,ファームウェアを入れ替えることで機能をカスタマイズできる.例えば同社では,データ・センタにおいて外部からのワームの進入を防止したり,セグメント単位にデータを保護するセグメント・プロテクタを提供している.また,トラフィックの分散配置や集中監視,制御を行うトラフィック・プロテクタ,メール送受信の際の機密漏えいを防ぐメール・コンフィデンス・プロテクタなども提供している.

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[写真2] 沖テクノクリエーションのセキュリティ装置開発用ボード

●ハード・ディスクを暗号化してノート・パソコンの置き忘れに対処

 三菱電機は,ファイル暗号化ソフトウェア「CRYPTOFILE PLUS」のデモンストレーションを行った.同社独自の暗号化アルゴリズム「Misty」やNTT(日本電信電話)と共同開発した128ビット・ブロック暗号「Camellia」などを使用して,パソコンのハード・ディスク上のデータを暗号化する.例えばノート・パソコンを社外に置き忘れた場合などでも,第3者による復号化が不可能になる.

 複数ある外部記憶メディアに対して,一括してファイルの持ち出し管理を行うソフトウェア「CRYPTOFILE LOCK」も同時に発売する.このソフトウェアの解除かぎはUSBメモリ上に記録され,そのUSBメモリを対象のパソコンに差したときだけデータを外部メディアに記録できる(写真3)

 さらに,パソコンへログオンする際に,Felicaや指紋で本人認証を行う「MistyLOGON Lite」も展示した.

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[写真3] ファイルの持ち出しを管理できるソフトウェア「CRYPTOFILE LOCK」を記録したUSBメモリ(写真左)

●人の顔を0.012sで検出するソフトウェアをデモ

 オムロンは画像中の複数の顔を高速に検出できるソフトウェア「顔検出センサV2」を展示した.このソフトウェアを米国Texas Instruments社のDSP「TMS320C6400シリーズ」の上で動作させた場合,静止画なら0.06s,動画なら0.012sで検出できる.認識できる顔の向きは左右60°,顔のサイズは20ピクセル以上,顔の数は最大140.このソフトウェアが使用するメモリの容量は,ROMが170Kバイト,RAMが330Kバイトと小さく,カメラ付き携帯電話にも搭載できるという.

 顔の検出では,目と口で構成される三角形を認識し,その後,数十万のパターン・ファイルをもとに学習したアルゴリズムで画像を解析する.正しく検出できる割合は92%.同社では監視カメラ市場での利用を見込んでいる.本アルゴリズムをIPコア,もしくはLSIの形態で提供することもできる.

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[写真4] 「顔検出センサV2」で検出したオムロン説明員の顔

●対象物までの距離を正確に把握できる画像処理システムを展示

 東芝テリーは「監視用画像処理システム」を展示した.同社製のステレオ・カメラ・ユニットから取得した画像をもとに,物体の3次元座標情報を取得する.3次元の座標情報を得ることで,対象物までの距離を正確に測定できる.例えば,金網に近づいた人が,その金網に触れたり金網を越えたりしたかどうかを正確に把握できるという.このアルゴリズムはパソコンやDSPなどで実行できる.同社では,デパートや駅,空港,倉庫,銀行の防犯などでの利用を見込んでいる.カメラ,ボード,パソコン,ソフトウェアを含むシステムとして提供する.価格は100万円台前半になる予定.

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[写真5] 東芝テリーの「監視用画像処理システム」
写真右は侵入者と金網の距離.システムは侵入者が金網に触れたことを認識し,警報を発している.

●暗闇でもカラー撮像が可能な電子倍増型高感度カメラ

 東芝は,0.001lx(ルクス)という低照度でも動画像をカラーで撮影できる電子倍増型高感度カラー・カメラ「IK-1000」を展示した.日本テキサス・インスツルメンツのインパクトロンCCDを採用している.画素数は約33万.最低被写体照度は動画時に0.001lx,蓄積時に0.000016lxである.同社ではまったく照明のない環境,例えばダムや工場,飛行場などでの利用を想定している.価格はおよそ150万円前後.

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[写真6] 高感度カラー・カメラ「IK-1000」で撮影した回転する物体の画像
左がIK-1000による動画像.右は従来のカメラで露光時間を長めにした画像.

●特定小電力のボタン型送信機を使う学校向け通報システムを展示

 日立ビルシステムは,学校向けの緊急通報システム「学校みはり番」を展示した.職員室に置かれる受信機やコントローラ,警報表示器に向けて,各教室や体育館に設置されたボタン型送信機から異常を知らせる.通信方式は特定小電力である.特定小電力の通信距離は見通しで100mのため,校舎内に2~3個の電波中継器を設置する.価格は10教室モデルで129万円.オプションとして腕時計型送信機やペンダント型送信機も用意する.同システムは70の小中学校への納入実績をもつ.

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[写真7] 日立ビルシステムの「学校みはり番」

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