"ロボコン"開催で組み込み業界を目指す学生を増やす ――ETロボコン2005 チャンピオンシップ大会

組み込みネット編集部

tag: 組み込み

レポート 2005年11月29日

 2005年11月16日,パシフィコ横浜(神奈川県横浜市西区)にて,「ETソフトウェアデザインロボットコンテスト(通称ETロボコン)2005 チャンピオンシップ大会」が開催された.主催は社団法人 日本システムハウス協会(JASA).2005年7月には内田洋行の潮見オフィスで予選大会が開催され,53チームが参加した.今回のチャンピオンシップ大会には,その中から選抜された20チームが参加した(写真1)

 参加者は,メーカ所属の若手エンジニアや個人参加のエンジニア,大学生,高校生などさまざま.本コンテストの最大の特徴はハードウェアを統一している点で,ソフトウェアのできばえの優劣を競う.

 本コンテストでは,走行体(ロボット)の分析と設計のモデリング,およびコース走行タイムの二つを競う.前者はUMLで記述し,7月の予選大会で公開および表彰式が行われた.本大会のねらいはモデリングを実際に体験し,それをソフトウェア上で具現化する体験を通して,技術者のスキルを向上させることにある.

p1.jpg
[写真1] コースの全景
2005年7月の予選で選抜された20チームが走る.

●コースは1周20メートル,ラインをトレースしながら走る

 走行体は1周約20メートルのコースを2周,幅3㎝ほどのラインをトレースしながら走る.コースはイン・コースとアウト・コースに別れており,2チームが併走する.1度アウト・コースを走ったチームは,約1時間後に行われる2回目の走行の際,イン・コースを走る.今回のチャンピオンシップ大会では,イン・コース,アウト・コースを走行した合計タイムで順位が決まる.

 コースの難所は大きく三つある.一つ目は4メートルほどの坂道で,登りが4%,下りが2%のこう配をもつ.二つ目はアウト・コースに設けられた60㎝ほどの破線のラインである(写真2).トレースしづらい代わりにコースをショートカットできる.三つ目はイン・コースに設けられた凸凹道(通称オフロード)で,ライン上に割り箸のような棒が8本ほど置いてある.これをクリアできれば,コースをショートカットできるうえに,トータルのコース・タイムから10s引かれるという特典がある.この二つ目と三つ目の難所については,避けて遠回りすることもできる.

 走行体は,LEGO Mindstormsを利用して組み上げたもの(写真3).改造は不可.走行体も電池も主催者から規定のものが提供される.入力センサとして,ラインをトレースする光センサと,ステアリングが中央にあることを検知するタッチ・センサを備える.モータ出力として,前後の駆動用モータと,ステアリング用モータをもつ.

p2.jpg
(a)アウトコース上の破線

p2_b.jpg
(b)インコース上のオフロード

[写真2] コース上の難所
難所を通過できればコースをショートカットできる.

p3.jpg
[写真3] 走行体の外観
LEGO Mindstormsで構成されている.ハードウェアは全チーム共通とし,走行前に車検がある.

●NECソフトウェア北陸のチームが優勝

 タイム・トライアルの結果,本大会ではNECソフトウェア北陸(石川県白山市)第三ソリューション事業部 組み込み&ツール開発グループのエンジニアが結成したチーム「ムンムン」が優勝した(写真4).同チームの鈴木孝宗氏によれば,1回目の走行終了時,2位のチーム「アルゴノーツ」がかなりよいタイムを出しており,2回目でイン・コースをまともに走れば勝てない可能性があった.そのため,出走直前までオフロードを走るか走らないかで悩んだが,当日の他チームの完走率が低いことや,自分たちのオフロード走行の成功率が5~6割であることを考慮し,オフロードを避けたという.結果的にこれが勝因となったようだ.

 2位のアルゴノーツは,システム・インテグレータ企業であるアルゴ21(東京都中央区)のエンジニアで構成されたチーム(写真5).7月に行われた予選大会の「分析と設計のモデリング(モデル部門)」でゴールド賞を獲得している.2回目のアウト・コース走行の際に,破線ラインをショートカットできず時間を大きくロスした.

p4.jpg
[写真4] チーム「ムンムン」
NECソフトウェア北陸のエンジニアが結成したチーム.

p5.jpg
[写真5] チーム「アルゴノーツ」
アルゴ21のエンジニアが結成したチーム.

●個性のある走りが観客を楽しませた

 競技参加者は走行体をコース上に置き,「GO!」の合図とともにスタート・ボタンを押す.観客が多かったせいか,その際,緊張で手が震えている参加者も少なくなかった.

 出場全チームの完走率は約50%.スタート位置から動かない走行体やコーナを曲がりきれない走行体,オフロードで動けなくなる走行体などがあった.中にはオフロード手前で向きを180°変えて背面から進入する走行体や,意図的にラインのないところを走りコースの大幅なショートカットをねらう走行体もあった.いずれも失敗に終わったが,観客を大いに楽しませた.

 唯一の高校生チームである「勝工ロボ研」(茨城県立勝田工業高等学校 コンピュータ部)(写真6)は,決勝戦では完走できなかった.同チームの森本弘明氏によれば,予選よりもロボットを早く走らせるため,ラインをトレースする光センサの首振りのアルゴリズムを変更し,首振り角度を小さくなるように調整したという(首振りを小さくするとラインの検出精度は落ちる).同チームは2005年11月前半に行われた「パソコン甲子園2005」に出場し,8位に入賞している.

 独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)の調査によれば,組み込みソフトウェアの技術者は17.5万人で,企業が求める人的リソースに対して7万人が不足している.IPA研究員で本大会実行副委員長でもある渡辺 登氏は,今回のようなソフトウェア技術者のためのロボコンを開催することで,組み込みエンジニアを目指す学生が増えることを期待しているという.

p6.jpg
[写真6] チーム「勝工ロボ研」
茨城県立勝田工業高等学校コンピュータ部が結成したチーム.

組み込みキャッチアップ

お知らせ 一覧を見る

電子書籍の最新刊! FPGAマガジン No.12『ARMコアFPGA×Linux初体験』好評発売中

FPGAマガジン No.11『性能UP! アルゴリズム×手仕上げHDL』好評発売中! PDF版もあります

PICK UP用語

EV(電気自動車)

関連記事

EnOcean

関連記事

Android

関連記事

ニュース 一覧を見る
Tech Villageブログ

渡辺のぼるのロボコン・プロモータ日記

2年ぶりのブログ更新w

2016年10月 9日

Hamana Project

Hamana-8最終打ち上げ報告(その2)

2012年6月26日