国内で初のCirtified Wireless USB開発者会議が開かれる ――Wireless USB Developers Conference
2005年9月28日~29日,ウェスティンホテル東京(東京都目黒区)にて,「Wireless USB Developers Conference」が開催された.最近,パソコンとその周辺機器の間のインターフェースとして普及しているUSBプロトコルを無線接続でも利用しようという動きが目立っている.例えば,WiMedia Allianceが策定しているUWB(Ultra Wideband)技術を物理層やMAC(media access control)層に用いるUSB規格は「Cirtified Wireless USB」と呼ばれている.この規格はWireless USB Promoter Groupによって策定されているが,今後はUSB-IF(Implementers Forum)に規格管理や認証テスト,ロゴのライセンス発行などを移管することが決まっている.
WiMedia Allianceは,スペクトラム拡散方式としてマルチバンドOFDM(orthogonal frequency division multiplex)を用いたUWBの物理層とMAC層,および上位の通信プロトコルのインターフェースをとるための「コンバージェンス層」までをRF共通プラットホームとして規定している(写真1).
本会議では,Cirtified Wireless USB(以下,Wireless USB)の仕様策定の進みぐあいや地域ごとの電波法対応状況などを報告する講演が行われた(写真2).また,技術セミナやUSB-IFのメンバ企業による製品のデモンストレーションなども実施された.例えば,米国Synopsys社は同社のWireless USBデバイスIPコアを実装した評価ボードを用いて,実際にディジタル・カメラに取り込んだ画像をホストへ転送し,表示するといったデモンストレーションを行った.
●あとは認証テストとアソシエーション・モデルを取り決め
2005年5月に,Wireless USB Promoter Groupが策定したWireless USB 1.0仕様が公開された.通信距離が3mのとき,最大480Mbps転送の高速通信を目ざしている(通信距離が10mでは最大110Mbps).また,既存のUSB機器に対応するため,ワイヤ・アダプタというデバイス・クラスを設けた.HWA(host wire adapter)は有線でUSBホスト(パソコン)と接続し,DWA(device wire adapter)は有線でUSBデバイス(周辺機器)と接続する.HWAとDWAの間はUWBで無線通信を行う(写真3).DWAには最大127台のUSBデバイスを接続できる.
本会議では,セキュリティ機能を向上させるための仕様「アソシエーション・モデル Rev.09」を策定したことが発表された.アソシエーションとは,USBホストとUSBデバイスを最初に接続する際の正常な(安全な)通信が行えるまでのプロセスを指す.
例えば,有線のUSBの場合,ケーブルを介してホストとデバイスを接続すれば,接続先を認証して通信を開始できる.セキュリティ面の問題もない.一方,無線通信の場合,電波の不正傍受などの問題がある.そこでRev.0.9では,アソシエーションの方法として次の二つのモデルを用意した.一つ目のモデルは,従来のように最初にケーブルを使ってアソシエーションを行う方法である.アソシエーションが終われば,その後,そのホストとデバイスはケーブルを介さず無線通信できる.二つ目のモデルは,ホストとデバイスに数値を入力・照合させる方法である.これらのアソシエーション・モデルについては,2005年末に一般に公開される予定.
●IPベンダや半導体メーカの製品発表が相次ぐ
Synopsys社は,Wireless USBに準拠したデバイスIPコア「DesignWare Cores Wireless Universal Serial Bus(WiUSB)」を開発した.
本会議におけるデモンストレーションでは,ディジタル・カメラで撮影した画像(JPEG)を,本IPコアを実装した評価ボードに取り込み,LCD(液晶ディスプレイ)パネルに表示させたり,UWBの無線通信を介してホスト側の評価ボードに転送していた(写真4).評価ボードは,CPUとしてARM9が搭載されており,その上で組み込みLinuxが走っていた.
なお,本IPコアを実装したFPGAと米国Alereon社のUWBチップ・セット「AL4000 PHY」については,相互接続性を確認済みであるという.AL4000 PHYは,RFフロントエンド・トランシーバLSI「AL4100 AFE」とベースバンドLSI「AL4200 BBP」からなる.AL4100 AFEは最大480Mbpsのデータ転送速度に対応する.パッケージは外形寸法が5mm角の32ピンVQFN.AL4200 BBPが対応するデータ転送速度は55Mbps~480Mbps.パッケージは100mm角の108ピンBGA.いずれも現在サンプル出荷中.量産出荷の開始時期は2006年第1四半期.これとは別にMACとベースバンドを1チップに集積した「AL4300」も同時期に出荷される予定.
今後,Synopsys社は台湾のRealtek Semiconductor社のPHYチップとの相互接続性テストも行っていくという.
イスラエルのWisair社は,HWA(ホスト・ドングル)とDWAの評価ボードを展示した(写真5).両ボードともに,同社のUWBチップ・セットを搭載している.本チップ・セットは,RF IC「502」とベースバンド(MACを含む)LSI「531」からなる.531は最大200Mbpsのデータ転送速度に対応する.
HWA評価ボードはすでに出荷を開始しており,会場でもHWAどうしでデータ転送を行うデモンストレーションを披露していた.本評価ボードには,UWBチップ・セットのほか,USBコネクタやUSBトランシーバ,UWBアンテナなどが搭載されており,パソコンのUSBポートに差し込んで利用する.対応OSは,Windows 2000/XP.外形寸法は23mm×69mm.
DWA評価ボードは2005年内に発売される予定.USBポートを2チャネル備えている.バルク転送,インターラプト転送,コントロール転送に対応する.動作時の消費電力は500mW程度.外形寸法は50mm×109mm.
なお,本評価ボードではとくにアソシエーションを行っていないという(つまり,認証を行うことなくホストとデバイスが接続される).同社の説明員によると,次のバージョンのベースバンドLSIでは,MAC部分にアソシエーション・モデル仕様にのっとった機能を集積させるという.今後は,UWBのMACとUSBコントローラを1チップに集積することも計画している.