ヘッド・ハンターの視点(8) ――人気の第2新卒

米焼酎

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コラム 2005年9月12日

  筆者は,人材紹介(いわゆるヘッド・ハンティング)のしごとに従事しています.3~4月は入社される方が多いためか,人事の方へのコンタクトがたいへん難しく,イライラが募りました.書類選考には1ヵ月かかるのが普通ですし,催促しないと返事はなかなか来ません.この時期は,すべてのプロセスに2倍の時間がかかってしまいます.筆者らにとっては頭の痛い季節です.おまけに候補者の方からは,「ここまで待ったのだから,夏のボーナスをもらってから退社して,7月入社にしたい」との声.結局,書類提出から入社まで5ヵ月もかかってしまいました.

 この3月まで,新年度と景気の上昇を見据えた求人案件が多くあり,積極的な採用活動が展開されていました.4月からは調整時期で一服感がありますが,景気の上昇とともに追加の求人案件が増えることでしょう.今はオセロ・ゲームにたとえると,黒色のコマ(一服の会社)と白色のコマ(好調な会社)がそれぞれ50%ずつ,一進一退の状況です.白色のコマが優勢となるのは夏ごろと予測しています.

●第2新卒のエンジニアは人気がある

 大学卒業後,就職して2,3年たったころに転職活動をされる方のことを「第2新卒」と呼んでいます.数年前,企業の業績が良くなかったころに新卒採用を見送った会社が多かったため,この年代の社員の数は極端に少なくなっています.業績が回復した今,企業が積極的に確保しておきたい人材です.経験をリセットして再出発可能な年齢ですし,社会人の基本マナーを身に付けているのでたいへん人気があります.問題があるとすれば,30~40才代の転職希望者の場合と違って,職種や業種の選択のところから相談を始めなくてはならないことです(反面,職務経歴書の内容が簡単なので助かる).

 友人の紹介で第2新卒のAさんに会って,事情を聞きました.Aさんの場合,学生時代の就職活動中に所属していた講座(研究室)の先生から「設計のしごとができるからこの企業へ推薦する」と言われ,何もわからず入社されたようです.その時点では,企業の概要はわかりますが,具体的な職務や給与のしくみまでじっくり比較検討する手段もなく,そのまま入社されたそうです.初めて社会に出るのですから,しかたありません.3年間勤務されて,「設計職は楽しいのだが,休日出勤や残業と給与の関係,しごとの進めかたについて納得できないことがある」とのこと.

 Aさんとは3回会って希望を聞きながら業種や職種を整理し,希望がより具体的になるように多くの会社を紹介して,訪問できる機会を作ることにしました.職務経歴書や履歴書を3社に提出して今回の目的をお伝えし,3社の会社訪問を実施しました.そのうちの1社の会社訪問で,直属の上司となられる方との面談がうまく運び,職場の見学も含めて3時間の面会となりました.結果は,お互いに納得できる内容とのことでした.条件提示,退社手続きとスムーズに進み,無事転職されました.ほかの2社も,筆者の説明段階では,同じ程度の興味を持たれていましたが,実際に会社を訪問すると想像と現実の違いがはっきりとわかったようです.

●外資系企業の日本法人への転職では本社の経営状態を確認

 最近,相次いで外資系企業の日本法人が閉鎖されるというニュースを聞きました.本社のグローバルな視点で決まってしまいますから,社員の方々にとってはやりきれない気持ちかと思います.外資系企業の日本法人へ転職を希望される方は,こうしたリスクがあることを理解しておいてください.

 今回のニュースにおける共通点は,いずれの会社も日本のビジネスが会社全体の2/3以上を占めていた点です.日本のビジネスが順調なので業界で話題となり,メディアでも取り上げられていたので,ニュースを聞いた時には信じられませんでした.日本が重要な市場であることは確かですが,米国,欧州,アジア地域のビジネスの拡大も必要で,いくら日本法人だけががんばってもどうにもならないこともあります.

 転職先として外資系企業の日本法人を選ばれる場合は,かならず本社の経営状態(期待ではなく実績)を調べてください.とくに米国,欧州,アジア地域でビジネスの柱がしっかりでき上がっているかどうかを.未上場の会社の場合は不明な点が多いので,調べるのはたいへんかもしれません.以前,筆者が勤めていた日本法人2社の日本の売り上げ比率はそれぞれ10%と20%で,いずれの会社も,現在,存続しています.

 先日,昨年末に転職された30歳前半の営業職の方から,近況報告のメールをいただきました.元気で活躍されていると思ってメールを開いてみたら,「やっと落ち着きつつも,ゆらゆらと今後の身の処しかたを考えながら日々を送っております」と書かれていました.会社は入ってみないとわからないことがありますが,「十分納得したうえで転職を」と願う日々です.

(本コラムはDESIGN WAVE MAGAZINE 2005年7月号に掲載されました)


◆筆者プロフィール◆
米焼酎(ペンネーム).30年前,F- 8,8080,Z-80マイコンと出会い,半導体業界にあこがれて二つの外資系半導体メーカを経験.今は,人材コンサルタントの修行中.話をするのが好きで,焼酎があるとお尻に根が張って何時までも飲む癖がある.

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