スキル,ついてますか~組み込みソフトウェア開発の人間学~(3) ――派手なロボコン,地味なロボコン

渡辺のぼる

tag: 組み込み

コラム 2005年8月18日

 最近,テレビで人型ロボットが戦う番組があり,妻や娘も楽しみにしています.ユニークな戦いが繰り広げられており,ガンダム世代の筆者もとても楽しんで見ています.そのほかにも,二つのロボットがお互いにじゃま(防衛)しながら課題に取り組む高専ロボコン1,ロボットがチームを組んでサッカーをするロボカップ2などの大会があり,どれも見ていて楽しいものばかりです.

 人型ロボットの開発は,組み込みシステム開発の花形だと思います.目に見える処理がある,という点が良いと思います.ロボット開発に限らず,組み込みシステム開発の多くはハードウェア制御を伴うので,「動く」という喜びを感じられる点は同じかもしれません.しかし,単一の機能を実現するだけではなく,画像や音声といったデータ処理,センシング,アクチュエータ制御,通信制御,姿勢制御などを総合的に含んでおり,臨機応変に動くので,いっそう魅力的に見えるのでしょう.

 若いころにロボット・コンテストに参加する機会に恵まれた人は幸せだと思います.ロボット開発は机上だけでなく実際にものを動かすので,開発を通して多くのスキルを得られるでしょう.また,ロボット・コンテストを通して,開発プロジェクトを経験できるというのも,とても良い機会だと思います.このような経験を持つ若者がいる限り,日本の将来も明るいのではないでしょうか.

●見た目は地味でもソフトウェアが生きるUMLロボコン

 でも,それらのロボット・コンテストを見ていると,「これは組み込みシステム開発の勝負というより,アイデア勝負ではないか?」と思うこともあります.また,「サーボ・モータの性能勝負」という感じがすることもあります.もちろん,アイデアもハードウェア部品も重要ですが,組み込みソフトウェア技術者の視点で見ると,ロボットの形状が規定されている「UMLロボット・コンテスト(UMLロボコン)」3などのほうが,みな同じLEGO MINDSTORMSの部品を使うので,純粋にソフトウェアの腕で勝負できるように感じます.テレビなどに華々しく取り上げられる高専ロボコンなどに比べると地味ですが....

 車のレースに例えると,UMLロボコンはワンメーク・レース4でドライバが腕で勝負するレース,ほかのロボコンはフェラーリかマッハ号が勝ち残るレース,と言えます.組み込みソフトウェア技術者のスキルアップを考えたとき,UMLロボコンの存在は重要だと思います.また,要素技術としては制御以外にも通信や画像処理,音声処理などもあるので,これらを主として使うコンテストの企画もあったらいいなと思います.

●老いも若きも,いざコンテストへ!

 大せっかくロボット・コンテストに参加するのであれば,開発だけでなくプロジェクト管理も含めて,一連の標準的な開発を経験できる機会として利用するのもよいかもしれません.まぁ,そんなことを考えるのはもう若くない管理者ばかりで,参加する若い人にとっては,仲間といっしょになにかをやり遂げることそのものがいちばん重要かもしれませんが....

 ともあれ,2005年のUMLロボコン(ETロボコン)は,7月2日と3日の2日間にわたり,東京都江東区にある内田洋行の潮見オフィス5で開催されます.また,このロボコンにおいて優秀な結果を出したチームは,2005年11月に開催されるET ロボコン・チャンピオンシップ大会6に招待され,再度そこでコンテストを実施する予定になっています.残念ながら参加申し込みはすでに締め切ってしまったようですが,若い方もそうでない方も,休日の散歩がてら,のぞいてみてはいかがでしょうか?

 なお,「組込みソフトウェアスキル標準(ETSS)」の策定作業のほうですが,何とか3月末までにまとめることができ,組込みソフトウェア開発力強化推進委員会から経済産業省に対して案を提出しました.2005年4月現在は,経済産業省内でレビューや加筆,修正を実施中です.情報処理推進機構(IPA)の事業成果などを展示する総合展示会「IPAX 2005」(2005年5月18日~20日に開催予定)のころまでには公開したいと思っています.



 注1;高等専門学校連合会とNHK,NHKエンタープライズが主催するロボット・コンテスト.URLは「http://www.official-robocon.com/jp/kosen/kosen2004/」.

 注2;日本の研究者らが提唱し,世界大会なども開催されている競技会.URLは「http://www.robocup.or.jp/」.

 注3;2005 年から「ETソフトウェア・デザイン・ロボコン(ETロボコン)」に改称した.URLは「http://www.etrobo.jp/」.

 注4;ワンメーク・レースとは,メーカや車種,改造の範囲などを限定し,参加者が同じような条件のもとで行うレースである.

 注5;ドラマ「踊る大捜査線」のロケ地(警視庁湾岸警察署)でもある.

 注6;組み込み技術に関する展示会「ET2005」内にて開催される.ET2005のURLは「http://www.jasa.or.jp/et/」.

(本コラムはDESIGN WAVE MAGAZINE 2005年6月号に掲載されました)


わたなべ・のぼる
組込みソフトウェア管理者・技術者育成研究会(SESSAME)

◆筆者プロフィール◆
渡辺のぼる.電機メーカ系ソフトウェア開発企業のファームウェア開発者.2002年以降,組込みソフトウェア管理者・技術者育成研究会(SESSAME)において組み込みソフトウェア技術者のスキルを体系的に整理するスキル標準の草案を作成.2004年9月,スキル標準の策定に専念する職場に出向,現在に至る.

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