「ZigBee対応」をうたう無線センサ・ネットワーク・モジュールが続々と ――センサ総合展2005
2005年4月6日~8日,東京ビッグサイト(東京都江東区)にて,センサに関する技術に関する展示会「センサ総合展2005」が開催された(写真1).近年,温度や湿度,位置などのセンサ情報を無線通信で取得するワイヤレス・センサ・ネットワークが注目されている.展示会場には「センサネットワークゾーン」が設けられ,短距離ワイヤレス通信規格「ZigBee」を利用したセンサ・ネットワーク・モジュールの展示やデモンストレーションが多くのブースで行われていた.また,スカイリー・ネットワークスやクロスボーなどは,アドホック型ネットワーク用に独自に開発した通信プロトコルのデモンストレーションを行った.
●物流管理,セキュリティ向けのセンサ・モジュールにZigBeeを採用
ZigBeeは,ネットワーク層以上を規定した短距離の無線通信プロトコル規格である.2004年12月に最終仕様がZigBee Allianceから発表された.物理層およびMAC(media access controller)層については,IEEE802.15.4に準拠している.データ転送速度は最大250kbpsとBluetoothなどと比べて低速だが,消費電力が低く,電池寿命は年オーダになるという.家電ネットワークや産業用モニタ/制御システム,センサ・ネットワークなどで利用される.
NECのブースでは,NECエンジニアリングが開発したZigBee対応のセンサ・モジュール「ZB24FM」のデモンストレーションが行われた(写真2).モジュールの外形寸法は37mm×23mm×6mm.RF ICやマイクロプロセッサ,アンテナ,外部センサ接続用コネクタなどが搭載されている.ZigBeeのプロトコル・スタックはマイクロプロセッサに実装されている.2005年5月からサンプル出荷を開始する.量産出荷の開始時期は,同年7月末を予定している.家電ネットワークやセキュリティ機器における需要を見込んでいる.
また同ブースでは,NEC三栄による備蓄米貯蔵倉庫の温度・湿度モニタのデモンストレーションが行われた(写真3).温度センサと湿度センサを取り付けたセンサ・モジュールのデータを,中継器を介して受信端末に無線で送信する.利用する周波数帯は2.4GHzで,データ転送速度は最大250kbps.センサ・モジュールと中継器の通信距離は最大30mである.受信端末とパソコンの間の通信は,RS-232-CまたはUSB 2.0を介して行う.
2005年4月中に,本モニタ・システムを用いた実証実験を開始するという.センサ・モジュールの動作電圧は3V,動作時の消費電流は12μA.10分間隔で本モジュールが動作した場合,単3電池2本で1年間駆動する.
一方,日立製作所は無線センサ・モジュールの試作品を展示した(写真4).試作品では,通信距離が10m程度の微弱無線を利用している.現在,ZigBeeに対応したモジュールを開発しているという.2006年度中にはZigBee対応製品を出荷する予定.こうしたセンサ・モジュールは,施設の安全管理やセキュリティなどに応用される.
●独自の通信プロトコルによるアドホック型無線ネットワーク
スカイリー・ネットワークスは,アドホック型無線ネットワーク向けに開発したプロトコル・スタック「MicroDECENTRA(Ver.3.0)」のデモンストレーションを行った(写真5).アドホック型はアクセス・ポイントが不要で,無線端末どうしが直接通信し合うネットワークである.
MicroDECENTRAは,メッシュ型,スター型といったネットワーク・トポロジに対応している.ノード間では自動的に時刻同期が行われ,必要なときだけノードを起動させてデータの送受信を行うため,消費電力を抑えることができる.コード・サイズは20kビット.ソフトウェアの開発言語はC言語.OSはμITRONに対応している.
本プロトコル用の評価キットや開発キットも提供する.例えば,開発キットは3台の無線端末,サンプルのプロトコル・スタック,コンパイラ,ROMへの書き込みツールなどが含まれる.無線端末は2.4GHz帯を利用している.データ転送速度が1Mbpsの場合の見通し通信距離は80~100m,250kbpsでは200m.
本展示会では,無線ネットワークのノードの一つを箱の中に入れ,電波が届きにくい環境でネットワークがどのように構築されるのかをデモンストレーションした.この場合,箱の中のノードはホストに直接電波が届かないことを判断すると,ノードどうしのバケツ・リレーでホストまでデータを送れる別の経路を見つけ出す.こうした通信経路の制御を本プロトコルが行う.
これとは別に,同社はパソコン間をワイヤレスLAN(IEEE802.11b)で接続するプロトコル・スタック「DECENTRA」も提供している.対応OSはWindowsとLinux.映像や音楽などのデータ量の多いアプリケーションに適している.
シリコンセンシングシステムズジャパンのブースでは,米国Crossbow Technology社のアドホック型無線ネットワーク「MOTE」のデモンストレーションが行われた.本ネットワークは,同社のセンサ付きアクティブ型RFIDタグと無線センサ・ネットワーク向けのソフトウェア「TinyOS」で実現されている.例えば,2005年4月から量産出荷が開始される「MICA-z」はIEEE802.15.4に準拠している.通信プロトコル処理にはTinyOSを利用している(写真6).MICA-zの動作電圧は3V,消費電流は受信時が40mA,待機時が30μA.外形寸法は64mm×35mm×27mm(アンテナを除く).現在,ZigBeeに対応したソフトウェアを開発中であり,将来的にはTinyOSとZigBeeの両方のプロトコルに対応していきたいという.
なお,2005年3月に,Crossbow社は住友精密工業と合弁会社「クロスボー」を設立した.同社は,Crossbow社のセンサ・ネットワーク関連機器の販売,技術サポートなどを担当する.
また同社は,MOTE向けのデータ閲覧ソフトウェア「MOTE VIEW 1.0」のデモンストレーションも行った(写真7).本ソフトウェアを用いて,センサ・ネットワークのトポロジやセンサ・データ(表,波形)を表示する.データの更新は最小1秒間隔で行える.