三菱電機,SiC薄膜チャネルを利用して低ON抵抗を実現したパワー・モジュールを試作 ――Nano tech 2005

組み込みネット編集部

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レポート 2005年3月 3日

 2005年2月23日~25日,東京ビッグサイト(東京都江東区)において,ナノテクノロジに関するカンファレンスおよび展示会「Nano tech 2005」が開催された(写真1).MOSFETのチャネル(エピタキシャル層)にSiC(Silicon Carbide)を利用し,十数nmの厚みで平たん化することで低ON抵抗を実現した三菱電機のパワー・モジュールや,ナノインプリント技術を用いて微細パターンを施した日立製作所のウェハなどが展示された.

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[写真1] Nano tech 2005
2005年2月23日~25日,東京ビッグサイトにおいて,ナノテクノロジに関するカンファレンスおよび展示会「Nano tech 2005」が開催された.来場者数は総計39,069名.

●チャネルをnmレベルの薄膜で平たん化して低ON抵抗を実現

 三菱電機は,SiCデバイス素子化技術として,MOSFETとショットキー・バリア・ダイオードを用いたパワー・モジュールのデモンストレーションを行った.SiCはシリコン(Si)と比べて融点が高く,イオン注入の速度が速い.そのため,イオン注入を行うと,チャネル表面に凹凸ができる.これを平たん化するために,チャネル部分にSiCの薄膜を形成した.一般にチャネルが厚くなればON抵抗を小さくできるが,その一方で耐圧は下がってしまう.今回試作したMOSFETではSiCの薄膜を十数nmとし,1.2kV/1Aの耐圧と12.9mΩ/cm^2のON抵抗を実現した.

 デモンストレーションでは,本技術で試作したMOSFETとショットキー・バリア・ダイオードを用いて3相モータを駆動させた(写真2).3相インバータは6個のMOSFETと6個のショットキー・バリア・ダイオードで構成されている.また,コンバータには6個のショットキー・バリア・ダイオードを用いた.なお,デモンストレーションではパワー・モジュールは200Vの耐圧とした.

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(a) 3相モータを駆動する

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(b) デモンストレーションに使用したパワー・モジュール

[写真2] SiCデバイスを用いたパワー・モジュールのデモンストレーションのようす
(a)は200Vの3相モータを駆動するデモンストレーションのようす.(b)は,デモンストレーションに用いられた,パワー・モジュール.上側の青い線で囲んだ部分がインバータ(6個のMOSFETと6個のダイオード),下側の赤い線で囲んだ部分がコンバータ(6個のダイオード).

 また同社は,半導体の微細パターン形成用プロセス技術「RELACS(Resolution Enhancement Lithography Assisted by Chemical Shrink)」のパネル展示を行った(写真3).本技術は,レジスト・パターンの形成後,レジスト内に存在する酸成分を利用することで,トレンチ幅を100nm以下にするプロセス技術である.具体的には,通常のパターン形成後,専用の加工補助材料(AZ R200)を塗布し,熱処理を施す.すると,レジスト内の酸が拡散して加工補助材料と架橋反応(分子間の結合)を起こし,元のパターンの内側に熱硬化した樹脂層が形成される.最後に,パターンを洗浄して一連のプロセスが終了する.

 本プロセス技術は三菱電機の半導体部門(現ルネサス テクノロジ)とAZエレクトロニックマテリアルズが共同で開発した.プロセスの開発は三菱電機が,材料関係はAZエレクトロニックマテリアルズが担当した.量産レベルで,70nmプロセスまで対応できる.すでに,本プロセス技術を使ってルネサス テクノロジのLSIが製造されているという.

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(a) 加工補助材料(AZ R200) (b) RELACSプロセス
[写真3] 専用加工補助材料とRELACSプロセス
加熱温度でトレンチ幅の制御を行う.試作段階では50nm程度までトレンチ幅を微細化した.同社によると,今後はこうした微細パターンが量産レベルの品質(歩留まり)であるかどうかを確認する試験が重要になってくるという.

●ナノインプリント技術が実用に

 日立製作所は,ナノインプリント技術を用いて凹凸パターンを形成したSiウェハや樹脂シートなどを展示した(写真4).ナノインプリント技術とは,微細な凹凸のある金型を樹脂などに押し当ててパターン形成などを行う加工技術である.本技術を用いると,数十nmの凹凸パターンの形成が可能になるという.同社は,加熱加圧方式のナノインプリント装置を開発している.例えば,凸パターンでは高さが1μm,凸部の直径が180nm,凸間のピッチが360nmのパターンを形成できる.また,このナノインプリント装置は,最大300mm(12インチ)のウェハに対応する.

 同社は,この技術を応用した「ナノピラーシート」を発売する.ナノピラーシートは,シリコンやガラスなどの基板の上にアクリル(PMMA)やポリスチレン(PS)などの樹脂を載せ,この樹脂をナノインプリント技術を使って柱状(ピラー)に加工する.柱の高さは200nm~1μm,柱の直径は250nm~1μm.まず,産業技術総合研究所や北海道大学と共同で開発した「ナノピラー細胞培養シート」のサンプル出荷を2005年5月から開始する.

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[写真4] ナノインプリント・シート
ナノインプリント技術については,バイオ・チップやストレージ・メディア,LSIなどへの応用が考えられている.

●カーボン・ナノチューブを利用した燃料電池

 NECは,カーボン・ナノチューブの1種であるカーボン・ナノホーンを利用したノート・パソコン向け燃料電池を展示した(写真5).カーボン・ナノホーンを電極として使用している.本燃料電池はメタノールを燃料として発電を行う,いわゆるダイレクト・メタノール方式を用いている.メタノールが白金触媒で水素イオンと電子に分解され,カーボン・ナノホーンを介して電子がマイナス電極に流れ,電気が発生する.カーボン・ナノホーンは形状が複雑であるため表面積が広く,効率良く電気を発生できるという.

 燃料カートリッジの容量は250ccで,30%のメタノール水溶液が入っている.最大出力密度は70mW/cm^2.カートリッジ1本当たりの動作時間は約10時間.実用化は2007年の消防法や毒物劇物取扱法などの規制緩和以降の予定.それまでに,動作時間を約20時間に引き上げたいという.

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[写真5] カーボン・ナノホーンを用いた燃料電池搭載のノート・パソコン
パソコンの後ろの部分が燃料カートリッジ.下の部分が電池.

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