ヘッド・ハンターの視点(7) ――プロジェクト・マネージャ職

米焼酎

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コラム 2005年3月16日

  筆者は,人材紹介(いわゆるヘッド・ハンティング)のしごとに従事しています.昨年(2004年)秋から景気が踊り場にさしかかり,上昇か下降か景気の読みが難しい時期です.外資系企業の方々は,今年の販売計画・組織作りで頭の痛い時期だと思います.4ヵ月前は「好調な会社と一服の会社があり,まだら模様」と書きましたが,今はオセロ・ゲームにたとえると,黒色のコマ(一服の会社)が優勢で70%を占めています.好転の兆しが少し見え始めてきたので,まだら模様に戻るのは春ごろでしょうか.

 企業の採用案件は昨年10月から12月まで低調でした.昨年春に積極的に採用活動を行っていた会社の下期の採用計画は,退職者の補充と必要最小限の人員確保でした.将来への設備投資は続いていますから,昨年末は一時的な景気の調整局面で,今から採用案件が増えると期待しています(優秀な人材は景気と関係なくいつも求められているので,ご心配なく).

 今回は,プロジェクト・マネージャについて考えてみました.これはハードウェア・エンジニア,ソフトウェア・エンジニアといった技術職ではなく,製品開発を進めるプロジェクトを統括するしごとです.製品の生産拠点が中国へシフトしていくなか,日本の会社が強みを発揮できる分野は製品開発です.米国メーカがパソコン事業を中国の会社に売却するなど,機器メーカの事業モデルがハードウェア中心からサービス中心へシフトしつつあり,日本の産業も変化していく過渡期にあります.そのような状況の中では,プロジェクト・マネージャはやりがいのあるおもしろい職種だと思います.

●プロジェクト・マネージャの募集が増えている

 最近の案件の中で目立っているのがプロジェクト・マネージャの採用です.外資系の会社から2件,日本の会社から2件,昨年11月に採用案件がありました.今年の事業拡大に伴う人員拡充が目的で,どれも急ぎの案件でした.スペックを見ると,5年以上のディジタル機器のハードウェアまたはソフトウェアの開発経験,2年以上のチーム・リーダの経験,ハードウェア/ソフトウェア・アプリケーションの知識を持っていること,開発を進めるチーム・メンバとコミュニケーションを図る能力,そしてスケジュール管理の能力が求められます.とにかく技術力とリーダシップが必要です.また,開発メンバは社内・社外の壁を越えて海外にまで広がっており,英語力が必要です.

 スペックをすべて満たす候補者は簡単には見つかりませんが,可能性を持った方はいるように見受けられます.米国には通信用途などすばらしいミドルウェアがたくさんあり,応用ソフトウェアを開発する有能なエンジニアはインドや中国に大勢います.これらの技術を組み合わせて,最適で信頼性の高い商品を開発するのは日本のエンジニアの得意とするところでしょう.もちろん,コスト管理やスケジュール管理のことも忘れてはいけません.

●リーダシップを身に付ければプロジェクト・マネージャ候補

 37才のAさんは,大学卒業後ディジタル機器開発を11年,その後,携帯電話に特化したソフトウェア開発会社でリーダ職を4年経験されています.プロジェクト・マネージャにどうかと思い,知人の紹介でAさんにお会いしました.アプリケーション・ソフトウェア,ミドルウェア,デバイス・ドライバと,どれでもこなせる優秀なエンジニアです.転職についてお話ししていると,一つの悩みを抱えられていることがわかりました.

 エンジニアの年数が長いためか,リーダ職に就いてからもエンジニアとしてのこだわりが出て,つい自分で作業することが多くなり,リーダシップが足りないと感じられているようです.また,社内・社外を問わず,しごとを依頼してスケジュール管理を行うことに煩わしさを感じています.これまでは自分を中心に数人との協調を保っていればよかったのですが,20~30人の規模になると全体をとらえられなくなり,自分で手を動かしてしまうのだそうです.

 筆者からは,「一人前のプロジェクト・マネージャになるための関門なので,周りの人との協調に気を配り,リーダシップを発揮する経験を積み重ねてみては?」とアドバイスしています.英語の読み書き能力も十分で,話す機会さえ増えれば上達されることでしょう.専門職へ進まれる道もありますが,分野の選択など,もっと難しい関門が待っています.今の関門を乗り越えることができれば,プロジェクト・マネージャの有力な候補者として,数年後に上述のような会社に紹介しようと筆者は思っています.

 筆者の考えでは,20才代では専門技術を磨き,30才になれば社内外の人とのしごと上の付き合いを通して調整能力を磨き,35才からプロジェクト・マネージャに挑戦するのがよいと思います.英語は焦らず勉強です.リーダシップを伸ばすために,社内の人たちや協力関係にある会社の人たちとの交渉に積極的に参加しましょう.また,趣味やクラブ,地域活動など,いろいろな社会生活の中で積極的にリーダシップを発揮する経験を積んでください.

 プロジェクト・マネージャ職は,物作りにこだわるエンジニアのキャリア・パスの選択肢としてお勧めします.

(本コラムはDESIGN WAVE MAGAZINE 2005年3月号に掲載されました)


◆筆者プロフィール◆
米焼酎(ペンネーム).30年前,F- 8,8080,Z-80マイコンと出会い,半導体業界にあこがれて二つの外資系半導体メーカを経験.今は,人材コンサルタントの修行中.話をするのが好きで,焼酎があるとお尻に根が張って何時までも飲む癖がある.

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