活気あふれる燃料電池の研究開発,日立が携帯電話向けなどを展示 ――第1回 国際燃料電池展(FC EXPO 2005)
燃料電池の研究開発が熱い.2005年1月19日~21日に東京ビッグサイトで開催された燃料電池技術の展示会「第1回 国際燃料電池展(FC EXPO 2005)」には,目標来場者数の10,000名をはるかに超える,20,037名が来場した(写真1).出展社数は240社である.出展スペースは早々に完売し,キャンセル待ちが40社に達したという.
●燃料電池で携帯電話機を動かす
来場者の注目をもっとも集めたのは,日立製作所の携帯機器用燃料電池である(写真2).携帯電話機用電源,携帯型情報端末(PDA)用電源,ノート・パソコン用電源を展示した.いずれも同社が従来から開発している,直接メタノール型燃料電池(DMFC: direct methanol fuel cell)を採用した.
今回展示した携帯電話機用電源は,携帯電話機のリチウム・イオン2次電池を燃料電池によって充電する構成である(写真3).携帯電話機を実際に動作させて見せていた.燃料カートリッジの容量は5cc.このカートリッジによって,携帯電話機を2時間動かせるという.
円筒状燃料カートリッジ内部の一方には燃料のメタノールが,ピストンをはさんで反対側には高圧ガスが充てんされている.高圧ガスがピストンを押し,メタノールを燃料電池に自動的に送り出す.
燃料電池の裏面には,かなり大きめの通気孔を設けていた.発電の化学反応過程で発生する水蒸気や二酸化炭素を排出するためである.通気孔をふさぐと,燃料電池の出力が低下してしまう.したがって現在の構成では,通気孔を下にして机やテーブルなどに置くような使いかたは問題となる可能性がある.
携帯型情報端末(PDA)用電源は,PDA本体と燃料電池の一体型である(写真4,写真5).5ccの燃料カートリッジを搭載する.展示ブースでは,PDAを実際に動かして見せた.動作時間は1時間~2時間だという.このPDAは,2005年3月25日から始まる「2005年日本国際博覧会(愛・地球博)」において,日立グループ館で使用される.PDAの名称は「Nature Viewer」である.
ノート・パソコン用電源の展示では,液晶パネルの背面に燃料電池を取り付けたノート・パソコンを出品し(写真6),ノート・パソコンを実際に動かして見せていた.動作時間は3時間だという.
このほか,燃料電池で動かす自転車をジャパンゴアテックスが,燃料電池駆動のスクータを栗本鐵工所がそれぞれ出品し,来場者の目を引いていた.
●携帯機器向けの電気二重層キャパシタが登場
燃料電池ではないが,電気二重層キャパシタの展示も来場者の関心を集めていた.パワーシステムが開発した電気二重層キャパシタ「ECaSS(イーキャス)」である.携帯機器用電源に向けたキャパシタを参考出品していた(写真7).キャパシタなので,2次電池に比べると充電時間がはるかに短い.説明員によると,エネルギー密度はリチウム・イオン2次電池と同等だという.
自然放電による電圧低下は1ヵ月で5%程度と少ない.ただし電源として使用する場合は2次電池と違い,放電とともに電圧が急速に低下していく.キャパシタの後段に昇圧型DC-DCコンバータを付加する必要がある.
ふくだ・あきら
テクニカルライター/アナリスト
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