鉛フリーはんだ技術や短納期フレキ基板に注目が集まる ――インターネプコン ワールド 2005

福田 昭

tag: 組み込み

レポート 2005年1月23日

 実装技術関連の展示会「インターネプコン ワールド JAPAN 2005」が2005年1月19日~21日に東京ビッグサイトで開催された.これは,電子機器製造用装置・部品・材料の展示会「インターネプコン・ジャパン」(写真1),検査用装置・部品の展示会「エレクトロテスト・ジャパン」,半導体パッケージ用装置・材料・部品の展示会「半導体パッケージング技術展」,プリント基板の展示会「プリント配線板EXPO」,電子部品の展示会「国際 電子部品商談展」,光通信用装置・材料の展示会「ファイバーオプティクスEXPO」で構成される合同展示会である.

 出展社数は過去最多の1,000社に達する.鉛フリーはんだ付け技術や短納期フレキシブル・プリント基板などの展示が来場者の注目を集めた.

p1.jpg
[写真1] インターネプコン ワールド JAPAN 2005の会場
2005年1月19日~21日に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された.

●鉛フリーはんだ付け技術が普及期に

 ボードの実装技術でもっとも大きな課題は,鉛フリーはんだ付け(鉛を省いたはんだ合金を使ったはんだ付け)である.これは,2006年7月から欧州で実施される有害物質使用規制(WEEE/RoHS規制)に鉛が含まれているからだ.1990年代後半から今日に至るまで,実装技術分野で最大の課題は,はんだの鉛フリー化であり続けた.その理由は,はんだ付けシステムを根本から見直す必要がある一大変革だったからだ.

 それでも最近では開発が進み,鉛フリーはんだを採用した機器が急速に増えている.過去に普及していた鉛入りはんだ(すず鉛(Sn-Pb)共晶はんだ)を置き換えつつある.日本のエレクトロニクス・メーカが販売している民生機器では,鉛フリーはんだで組み立てた製品を見かけることは珍しくない.例えば,はんだメーカの日本アルミットは,同社の鉛フリーはんだが使われた機器を数多く展示してみせた(写真2)

p2.jpg
[写真2] 鉛フリーはんだを採用した機器が勢ぞろい
日系の電子機器メーカが民生用機器の製造に鉛フリーはんだを使うことは,もはや珍しくなくなっている.日本アルミットはDVDドライブ,電子手帳,ヘッドホン,スピーカ,光ピックアップ,ラベル・プリンタ,耳式体温計,ビデオ・カメラ,携帯電話機,携帯型CDプレーヤなどの例を展示してみせた.

●トヨタ自動車が鉛フリーはんだを使って試験生産

 かつてはインターネプコン・ジャパンの会場から,鉛フリー化を「早くなんとかしなければいけない」という焦燥感が感じられた.今年の会場には,問題を抱えながらも鉛フリー化が着実に進んでいるという,落ち着いた雰囲気が漂っていた.さらには民生用機器だけでなく,高い信頼性を要求する産業用機器に鉛フリーはんだが普及し始めたことがうかがえた.

 例えばトヨタ自動車は,車載機器のボードに鉛フリーはんだを採用し,試験的に生産を始めた(写真3写真4写真5).出展したはんだメーカ(大豊工業荒川化学工業ソルダーコートの共同出展)によると,2006年には本格的な採用を考えているという.

p3.jpg
[写真3] 車載機器に鉛フリーはんだを採用
トヨタ自動車が採用したことをアピールしていた.大豊工業,荒川化学工業,ソルダーコートの共同展示.

p4.jpg
[写真4] トヨタ自動車が車載機器のボードに採用した鉛フリーはんだの仕様
すず銀銅(Sn-3.0Ag-0.5Cu)系はんだペーストである.このため溶融温度は217~221℃と,すず鉛共晶はんだの183℃に比べて高い.大豊工業,荒川化学工業,ソルダーコートの共同展示.

p5.jpg
[写真5] 鉛フリーはんだで組み立てた車載機器用ボードの例
EFI(electronic fuel injection)制御用基板である.このほか,エア・サスペンション用基板やモータ・ドライバ用基板,エア・バック制御用基板などの実物を展示していた.いずれもリフロはんだ付け.大豊工業,荒川化学工業,ソルダーコートの共同展示.

 また,はんだメーカである日本スペリアは,同社の鉛フリーはんだを採用した船舶用GPS基板の実物を展示していた(写真6).1,000サイクルの温度サイクルを与えた後でも,さまざまな信頼性試験に耐えたことをアピールした.

p6.jpg
[写真6] 鉛フリーはんだで組み立てた船舶用GPS基板
-4℃と+120℃の温度サイクルを1,000サイクル実施した後に,引っ張り試験や大気暴露試験,塩水噴霧試験に耐えたことをアピールしていた.フローはんだ付けで組み立てた.はんだはすず銅ニッケル系.日本スペリアの展示.

●溶融温度を下げた鉛フリーはんだへの期待が高まる

 現在普及している鉛フリーはんだの主要組成は,リフロはんだ付け用がすず銀銅系合金,フローはんだ付け用がすず銀銅系合金,あるいはすず銅系合金である.しかし,これらのはんだには,溶融温度がすず鉛共晶はんだよりも高いという欠点がある.すず鉛共晶はんだの溶融温度が+183℃であるのに対し,すず銀銅(Sn-3.0Ag-0.5Cu)はんだでは溶融温度がおよそ+218℃,すず銅(Sn-0.7Cu)はんだではおよそ+227℃に上がってしまう.このため,耐熱性の低い部品をプリント基板に搭載する場合,後で個別にはんだ付けしなければならない.

 そこで,溶融温度をさらに下げた鉛フリーはんだが開発されつつある.材料はすず亜鉛系合金である.製品への採用例はまだ少ないものの,次世代の鉛フリーはんだとして期待する向きは少なくない.

 例えば,はんだメーカであるニホンゲンマは,すず亜鉛系はんだの採用実績でトップを誇るものの,採用実績は4~5社とまだそれほど多くはない.同社によると,いずれもすず亜鉛ビスマス(Sn-8.0Zn-3.0Bi)系はんだペーストが使われている.同ペーストの溶融温度は+187~+196℃である.

●高密度実装でフレキ基板の採用例が増加

 プリント基板に関連した展示では,フレキシブル・プリント基板の短納期試作サービスが来場者の目を引いていた.ディジタル・スチル・カメラや携帯電話機などの高密度実装機器でフレキシブル基板を使う機会が増えているからだ.

 例えば太洋工業は,フレキシブル・プリント基板を専門とする短納期試作サービスの概要を展示していた(写真7).片面基板の場合に最短で中1日,両面基板の場合に最短で中2日と納期が短い.配線ピッチ0.2mm,スルー・ホール径0.3mm,ランド径0.6mmの基板試作に対応できるとする.山下マテリアルも同様のサービスを手がけている.納期は片面基板の場合に最短で中2日,両面基板の場合に最短で中3日であるとする.

p7.jpg

[写真7] フレキシブル・プリント基板を短納期で試作

片面基板の場合に最短で中1日,両面基板の場合に最短で中2日の納期を実現した.太洋工業の展示.

 また伸和プリント工業は,リジッド・フレックス基板の短納期試作サービスについての展示を行った(写真8).2枚のリジッド基板を結線するときにコネクタを使わずに済ませるといった需要に応えたもの.納期は標準で3週間,最短で2週間.3層~10層の基板に対応する.配線幅/間隔は最小100μm/100μmである.6層~8層の受注が多いという.

p8.jpg
[写真8] リジッド・フレックス基板を短納期で試作
6層基板の例.板厚は0.8mm(リジッド部).伸和プリント工業の展示.


ふくだ・あきら
テクニカルライター/アナリスト
http://d.hatena.ne.jp/affiliate_with/

組み込みキャッチアップ

お知らせ 一覧を見る

電子書籍の最新刊! FPGAマガジン No.12『ARMコアFPGA×Linux初体験』好評発売中

FPGAマガジン No.11『性能UP! アルゴリズム×手仕上げHDL』好評発売中! PDF版もあります

PICK UP用語

EV(電気自動車)

関連記事

EnOcean

関連記事

Android

関連記事

ニュース 一覧を見る
Tech Villageブログ

渡辺のぼるのロボコン・プロモータ日記

2年ぶりのブログ更新w

2016年10月 9日

Hamana Project

Hamana-8最終打ち上げ報告(その2)

2012年6月26日