小型知能ロボットが制御の正確さと速さを競う ――マイクロマウス2004(第25回全日本マイクロマウス大会)

組み込みネット編集部

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レポート 2004年12月10日

 2004年11月20日~21日,日本科学未来館(東京都江東区)にて,ニューテクノロジー振興財団が主催する小型自走式ロボットの競技会「マイクロマウス2004(第25回全日本マイクロマウス大会)」が開催された.国内の学生(高校生,専門学校生,大学生)や社会人のほか,韓国やシンガポールからの参加者も目立った.正確な制御でゴールに走り込むロボットに,感嘆の声が上がっていた.

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[写真1] マイクロマウス2004(第25回全日本マイクロマウス大会)
日本科学未来館(東京都江東区)にて開催された.

 マイクロマウスとは,マイコンや各種センサを内蔵した自走式ロボットである.マイクロマウス競技は,マイクロマウスが16区画×16区画の迷路を通り抜け,迷路の中央に設置されたゴールにたどり着くまでの時間を競うものである.迷路の形状を事前に知ることはできない.また,どのコースを進むのか,どの程度の速度で動くのかをマイクロマウス自身が算出する必要がある.外部からの電源の供給や通信制御は認められない.マイクロマウスは持ち時間である5分以内に,最大5回まで走行することができる.マイクロマウスは1回目の走行で迷路のようすを調べ,ゴールにたどりつくと出発点に戻ってくる.そして2回目以降の走行で全力疾走し,最短時間でゴールをめざす.

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[写真2] マイクロマウス競技のようす
縦横に並んだ区画を抜ける際,縦方向と横方向に走行する以外に,斜め方向に走行するという選択肢がある.今大会の決勝の迷路は,斜め方向に走行できるマイクロマウスに有利となるような箇所がいくつか見受けられた.

●速くて確実に走れるロボットが勝つ

 迷路を抜けるためのアルゴリズムにはいくつかの定石があるという.例えば,迷路の壁がないものと考えて中央に向かって進む方法(もちろん実際に壁があれば回避する),迷路の中央から外側の一つの壁に向けて架空の壁を設定し,その壁を回避しながら中央に進む方法などである(そのほか,直進コースを優先する,斜め走行を優先するなど,くふうのしどころはいろいろある).

 しかし,競技結果を見るかぎり,勝敗はアルゴリズムの差異よりも,おもに走行制御の正確さ(いかに確実に走れるか)やロボットの重量・重心(いかに速く走れるか)に左右されているようだった.

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[写真3] 優勝したマイクロマウス「Min4」
マイクロマウス競技(エキスパート・クラス)で優勝したNg Beng Kiat氏(Singapore, Ngee Ann Polytechnic)のマイクロマウス「Min4」.最短でも86区画の移動と49回の方向転換が必要な今回の迷路を,8.403秒で走り抜けた.同氏は昨年度の大会にも参加し,優勝している.昨年度のマイクロマウスに比べて,モータを小さくし,2枚使っていたプリント基板を1枚にして,重心を下げたという.ソフトウェアは昨年度とまったく同じものを使用している.

●ロボットの動きに会場がわく

 本大会では,迷路を抜ける「マイクロマウス競技」のほか,白線に沿って走行する「ロボトレース競技」,迷路の中に置かれた缶をできるだけ多く逆さに置く「マイクロクリッパー競技」が行われた(写真4).迷路の中を移動しながら作業するため,一度逆さに置いた缶が進行方向にあって,その缶をどけないと前進できないという状況が発生することがある.その際に,すでに逆さに置かれている缶をもう一度逆さにすると元の面に戻ってしまい,得点にならない.競技に出場したロボットの多くは,2度目に持ち上げたときには缶の向きを巧みに操って,逆さの面を上にしたまま降ろしており,会場から感嘆の声が上がっていた.

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[写真4] マイクロクリッパー競技のようす
缶の裏返しかたも,前方の缶を後方に置くロボット,脇の通路にある缶に手を伸ばして,その場に逆さに置き直すロボットなどさまざまなバリエーションがあり,観客を楽しませていた.

関連リンク
マイクロマウス初心者講座(森永 英一郎氏のWebサイト内) http://www8.big.or.jp/~morinaga/basicmouse/frame_basicmouse.htm
参考文献
1)金山 裕,油田信一(編著);MicroMouse マイコン知能ロボットへの招待,トランジスタ技術別冊,CQ出版,1982年9月.
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