ヘッド・ハンターの視点(6) ――面接の回数と人数

米焼酎

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コラム 2004年11月15日

  筆者は,人材紹介(いわゆるヘッド・ハンティング)のしごとに従事しています.昨年(2003年)から順調に回復した半導体業界の景気は夏直前からひと段落したようで,一時の勢いはなくなってきたように感じます.とくにデバイス関連は,今年初めのディジタル景気がウソのようです.業界全体としてはまだ景気が良い状態ですが,会社ごとに見ていくと,好調な会社と一服の会社があり,まだら模様となっています.

 企業の求人案件は景気の動向を反映しています.下期の計画が明確になるまで採用を見送る会社が出てきており,慎重になってきたと感じています.半導体製造装置業界はどの会社も元気で,来年春まで今の好景気が続くと聞いています.設備投資が活発なことから,デバイスの不景気は一時的な調整で終わると信じています.下期が始まると,求人案件が増えることでしょう.

 今回は,面接の回数と人数について考えてみました.筆者個人の経験では,1回目が部門長+人事担当者,2回目が社長の合計2回,3名でした.最近は,多くの人の評価を含めて判断する例が多くなっています.何回も出向いての面接ですが,候補者からは好評です.

●5人の総合評価で採用が決まる会社

 A社は外資系半導体メーカで,日本法人の人員は15名.技術部門で1名の増強計画を持っていました.専門分野で高度な技術を持ったシニア・エンジニアの求人です.この会社では,2名以上の候補者を書類選考し,社長を含んだ5名が各候補者と面接し,各人の評価を持ち寄って候補者を絞り込むことがルールとなっています.最初は社長と事業内容や社風などを中心に1時間半,部門長と職務内容を中心に1時間半,そして,職務上関係のある部門から3名,それぞれ30分ずつの面接がありました.つまり,面接の合計は5回,5名です.

 面接に半日以上かかりますが,候補者からは歓迎されています.いっしょに働く人たちと直接話し合えるし,同じ質問の答えを複数の人から聞けるので安心できると言います.会社の雰囲気が肌で感じられるとも....2名以上の候補者からひとりを選ぶ場合,候補者全員に会ってから評価シートをもとに5名の面接者による選考会議が開かれます.評価結果をもとに話し合い,候補がひとりに絞られます.協調性や専門性などの各項目が10点満点の7点以上であることも採用の条件です.

 チームワークを重要視する会社の雰囲気がよくわかります.会社の人たちが「いっしょにがんばってみませんか?」と,積極的に会社の状況を説明されるので,「がんばってみよう」と思わせる雰囲気があります.こうして,選ばれた人に条件が提示され,入社の意思の確認となります.今回の件では,提示された条件に若干の調整をお願いして,採用に至りました.

●社長と幹部は魅力的だが,現場の社員が...

 B社は技術サポートの事業を行っている20名の日本の会社です.社長は40才前半で状況判断力に優れ,人を引き付ける魅力を持った方です.1回目の面接は社長と技術担当役員が行い,候補者の職務経歴を中心に話をしました.候補者は良い印象を持ち,B社の社長も「ぜひ!」と前向きでした.2回目は,できるだけ多くの社員と会ってほしいとの社長の意向で,営業役員と2名の担当エンジニアが面接しました.しかし,面接が終わって候補者からすぐに,「辞退したい」との知らせが来ました.エンジニアは経験,知識ともに十分だが,現場のチームワークが感じられない,という印象を持ったそうです.社長の意思が現場に十分理解されていないという感じでした.筆者は社長に率直に感想を申し上げ,改善をお願いしました.筆者としては,結果はともあれ,多くの方に会ってもらって良かったと思っています.入社したあとで後悔されたら困りますから.

 ところで,今回の候補者について社長から「良い人材だった」というコメントをいただきました.面接の場での候補者の話しぶりは,背伸びしているわけではなく,面接慣れしているわけでもありませんでした.まずは,先方の質問を正しく理解して,ぼやけた質問にはぼやけた答えを返し,具体的な質問であれば,自分の知識と想像で回答していました.決して大げさには言わないし,他社の話は公開されている内容にとどめ,他社や他人の悪口は言いません.こういう姿勢が面接では重要なのだと思います.

 ここで書いた二つの例の面接の回数は5回と2回,人数はどちらも5人でした.反対に,社長との1対1の面接でくどき落とされ,いざ入社したら社歴の浅い社員が多くて後悔した,というケースもあります.会社を選ぶ段階では,できるだけ多くの方とお話しされることをお勧めします.

(本コラムはDESIGN WAVE MAGAZINE 2004年11月号に掲載されました)


◆筆者プロフィール◆
米焼酎(ペンネーム).30年前,F- 8,8080,Z-80マイコンと出会い,半導体業界にあこがれて二つの外資系半導体メーカを経験.今は,人材コンサルタントの修行中.話をするのが好きで,焼酎があるとお尻に根が張って何時までも飲む癖がある.

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