組み込み企業の81.5％がソフト開発を外部に委託　――組み込みソフトウェア開発力強化推進フォーラム

　2004年6月，経済産業省は，組み込みソフトウェア産業に関する統計調査の結果を「2004年版 組込みソフトウェア産業実態調査報告書」として発表した．社内のリソース不足により開発を外部委託している企業が多いことや，製品出荷前の手戻りの多さ，製品出荷後の設計品質問題の発生，品質に関する危機意識が高まっているなどの現状が調査データによって裏付けられた．

　本統計調査は，経済産業省が2004年2月から3月にかけて，アンケート形式で行った．経済産業省は2003年5月から「組み込みソフトウェア開発力強化推進委員会」を設けて，組み込みソフトウェア開発の改善に取り組んでいる．今回の調査は，改善すべき対象を明確にするために実施したもの．アンケートは47の業界団体（4637社）に対して行われ，740件（548社）の有効回答を得た．「組み込みソフトウェアを開発していると思われる5,000人以上の規模の企業の80％，1,000人以上の規模の企業の40％をカバーしており，信頼性は高いと思われる」（組み込みソフトウェア開発力強化推進委員会 副委員長の田丸 喜一郎氏）．また，海外との違いを把握するため，米国の組み込みソフトウェア開発企業58社と，欧州の組み込みソフトウェア開発企業57社にもインタビュー形式で調査を行った．

　本調査によると，組み込みソフトウェア開発の外部委託について，外部に委託しているという回答が81.5％あった（図1）．そのうち，グループ会社ではない受託開発企業に委託している割合は委託量が多いものだけで38.3％だった（図2）．また，外部リソースを使う第1の理由として，「社内ではリソースが不足しているため」との回答が45.0％，「自社に技術がないため」が13.4％，「開発スケジュールを縮めるため」が11.3％だった（図3）．

[図1] 組み込みソフトウェア開発の外部委託
出典：2004年版 組込みソフトウェア産業実態調査報告書（Q3-2とQ17の集計結果）．

[図2] 組み込みソフトウェア開発の外部委託先
出典：2004年版 組込みソフトウェア産業実態調査報告書（Q3-2の集計結果）．

[図3] 外部リソースを使っている第1の理由
出典：2004年版 組込みソフトウェア産業実態調査報告書（Q3-4とQ20の集計結果）．

　製品出荷前の工程間の手戻り頻度について，10％以上のソフトウェアについて手戻りが発生しているという回答が，国内回答では63.3％あった（図4）．これに対して，米国，欧州では30％前後だった．また，手戻りの原因の第1の理由として国内回答では「要求仕様の不備」が29.9％，「ソフトウェア設計上の不ぐあい」が18.6％，「仕様書の不備」が17.4％となっている（図5）．これに対して欧州では，「コーディング・ミス」という回答が60.4％を占めた．今回調査した欧州の企業の9割以上が，組み込みソフトウェアの品質管理方法としてコーディング規定を採用しており（図6），そのために製品出荷前にコーディング・ミスを多く検出できているようだ．

[図4] 製品出荷前の工程間の組み込みソフトウェア手戻り頻度
出典：2004年版 組込みソフトウェア産業実態調査報告書（Q4-1とQ22の集計結果）．

[図5] 組み込みソフトウェア手戻りの原因（理由1の割合）
出典：2004年版 組込みソフトウェア産業実態調査報告書（Q4-2とQ23の集計結果）．

[図6] 組み込みソフトウェアの品質管理方法として採用している方法
出典：2004年版 組込みソフトウェア産業実態調査報告書（Q4-8とQ29の集計結果）．

　調査結果は，2004年6月22日に開催された「組み込みソフトウェア開発力強化推進フォーラム」において発表された（図7）．また，経済産業省のWebサイトでも内容を公開している．

　発表した田丸氏によると，今後も定期的に同様の調査を行っていく予定だという．今後の調査では，開発プロジェクトや開発対象，技術者個人に着目した調査を行いたいと考えている．また，業務系ソフトウェアと連携したシステムや，ディジタル家電機器や携帯電話などのコンテンツ系ソフトウェア，さらには海外の企業などについても調査範囲を拡大することを検討している．

[図7] 調査結果を発表する田丸 喜一郎氏（組み込みソフトウェア開発力強化推進委員会 副委員長）
「組み込みソフトウェア開発力強化推進フォーラム」はラフォーレミュージアム六本木にて開催され，500人以上の受講者でにぎわった．

関連リンク
　「組込みソフトウェア産業実態調査」を掲載しているWebページ（経済産業省 情報政策ユニットの技術開発のページ）