経済産業省などがコーディング規約やスキル標準を整備する組織を2004年10月に発足 ――組込みソフトウェア開発力強化推進フォーラム
2004年6月22日,経済産業省と情報処理推進機構は「組込みソフトウェア開発力強化推進フォーラム」を開催した.2004年10月に発足する「ソフトウェア・エンジニアリング・センター(SEC)」の準備組織として結成された「組込みソフトウェア開発力強化推進委員会準備会」がこれまでの討議内容を報告し,コーディング規約や開発管理手法の整備,スキル標準の策定などを進めていくことを明らかにした.
組込みソフトウェア開発力強化推進委員会 委員長の門田 浩氏によると「そもそものきっかけは,組み込みソフトウェアの品質問題だった」という(写真1).携帯電話の回収騒動や銀行のATM(現金自動預払機)のサービス停止などに危機感を感じ,2003年5月に有識者による「SEC検討タスク・フォース」を結成し,組み込みソフトウェアの品質向上のために行うべき活動を提案した.それを受けて「組込みソフトウェア開発力強化推進委員会準備会」が発足し,開発手法と人材育成という二つの観点から,SECが発足後に取り扱うテーマを検討してきたという.
●まずはコーディング規約の整備から
開発手法に関する報告は,組込みソフトウェア開発力強化推進委員会準備会 組込みソフトウェアエンジニアリング部会 部会長の平山雅之氏が行った.組込みソフトウェアエンジニアリング部会で検討を重ね,テーマの実施優先度(重要度)や研究期間を考慮した結果(図1),SEC自身が主体的に取り組むテーマとして「品質向上」,「プロジェクト管理」,「開発プロセス」を掲げ,それぞれについてSEC内にワーキング・グループを発足することにした(写真2).品質向上のワーキング・グループは,平成16年度をめどにコーディング規約の整備などを行う.プロジェクト管理のワーキング・グループは,平成17年度をめどに開発管理手法を整備する.開発プロセスのワーキング・グループは,平成18年度をめどに,組み込みシステムの開発プロセスの最適化に取り組む.
ただし,SECの成果をどのように普及させるかは今後の大きな課題である.また,ハードウェアに依存する領域の扱い(例えば,システムLSI技術などとの連携をどうとるか),ビジネス系(IT系)ソフトウェアとの共通項の整理など,検討するべきことは多い.
●評価基準を明確にして人材育成をねらう
人材育成に関する報告は,組込みソフトウェア開発力強化推進委員会準備会 組込みソフトウェアスキル標準部会 部会長の大原茂之氏が行った.SECは,「スキル標準」,「キャリア開発」,「試行・教育」の三つのワーキング・グループを発足する.人材育成については,組み込みソフトウェア技術者の評価のものさしとなる「スキル標準」の策定が中心になるもよう.
情報処理推進機構 参与の鶴保征城氏によると,「従来の国のプロジェクトは産業界に活力を与えなかった」という.「これまでは,予算を企業に持ち帰り,成果は企業から出さない,という姿勢が産業界にあった.しかし,業界を縮小させないために,ノウハウを共有して一肌脱ぐという姿勢が必要ではないか」(鶴保氏).
関連リンク
・ニュース:経済産業省,人材評価や企業の技術力評価のものさしとなる組み込みソフトウェアの「スキル標準」を策定へ
http://www.kumikomi.net/article/news/2004/06/25_01.html
・レポート:組み込み企業の81.5%がソフト開発を外部に委託
http://www.kumikomi.net/article/report/2004/15ipa/01.html
・組込みソフトウェア開発力強化推進委員会準備会の報告書を掲載しているWebページ(経済産業省 情報政策ユニットの技術開発のページ)
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/technology/technology.htm