μITRONとCE.NETを統合して動作させる環境が早くも登場 ――ET(Embedded Technology) 2003
●CAN/LINバスでミニ自動車を制御
ET 2003の展示会場では,自動車関連の展示も多数行われた.
NECエレクトロニクスは,CAN/LIN制御回路内蔵のマイクロコントローラ「V850ES/FJ2」のデモンストレーションを行った(写真7).自動車の模型を使い,CANバスとLINバスを介してサイド・ミラーの開閉やステアリングなどを制御した.本マイクロコントローラについて,同社はUARTなどの汎用I/Oやタイマ数などの異なる品種を用意している.現在,サンプル出荷中.量産出荷は2004年に開始する予定.
また,展示会場では見せなかったが,LIN用トランシーバ回路と12V出力の電圧レギュレータ回路を内蔵した8ビット・マイクロコントローラ「μPD78800X」シリーズのサンプル出荷も開始した.写真7(b)のLINノード・ボードでは8ビット・マイコンに外付けのトランシーバ回路とレギュレータ回路をつないでいるが,μPD78800Xシリーズを使用すると基板サイズをもっと小さくできるという.
●TI,車載用の32ビットDSP「C2800」シリーズを展示
日本テキサス・インスツルメンツは,車載機器やモータ制御機器などに利用できるDSP「C2800」シリーズを使ったデモンストレーションを行った(写真8).従来,同社は車載用に16ビットDSPを提供していたが,C2800では32ビット・アーキテクチャを採用している.処理性能は150MIPS.最大128kワードのフラッシュ・メモリを搭載している.車載用途としては,パワー・ステアリング制御や電源制御といった応用を想定している.C2800シリーズは2003年11月から量産出荷される.
●Java VM上で動作するディジタル・テレビ向けUI開発ツールを展示
カナダのEspial社は,ディジタル・テレビ向けのWebブラウザ兼ユーザ・インターフェース開発ツールである「Espial Escape」を使って開発したテレビ画面のデモンストレーションを行った(写真9).Espial EscapeはJava VM(Java仮想マシン)上で動作し,さまざまなターゲットCPUの上で稼働するという.また,同社はJava VMのない環境向けに,移植を容易にするためのミドルウェアも提供している.
●「PictBridge」関連製品が続々登場
グレープシステムは,PictBridgeに準拠したプリンタ用ミドルウェア「GR-PictBG」のデモンストレーションを行った(写真10(a)).PictBridgeは,ディジタル・カメラやカメラ付き携帯電話などとプリンタの間で画像データをやり取りするためのインターフェース規格である.カメラ映像機器工業会(CIPA)規格「CIPA DC-001-2003 Digital Photo Solutions for Imaging Devices」として認定されている.
PictBridgeでは物理層の規定はないが,現在のところUSBインターフェースをベースとした構成が主流である.同社は,プリンタ側をUSBホストとして機能させるためのミドルウェアを提供する.本ミドルウェアは,画像データのやり取りを定義したPTP(picture transfer protocol),プリンタとUSB機器(ディジタル・カメラなど)の間の接続認識や機能認識を行うDPSレイヤ,プリント・サーバやストレージ・クライアントなどからなるDPSアプリケーションから構成される.本ミドルウェアの下位層には,通常のUSBホスト・スタックを利用する.
本ミドルウェアは,2003年12月末に出荷される予定.ディジタル・カメラなどのUSB機器向けのミドルウェアも2004年春から出荷を開始するという.なお,USB機器向けのミドルウェアのDPSアプリケーションは,プリント・クライアントとストレージ・サーバなどから構成される.
また,イーソルもPictBridgeに対応したミドルウェア「PictDirect」のデモンストレーションを行った(写真10(b)).本ミドルウェアはディジタル・カメラ向けに提供されている(ただし,PTPはオプション).米国Texas Instruments社のDSP「MS320DM270」が搭載された評価ボードで動作を確認した.ターゲットCPUはARM7に,リアルタイムOSは同社のPrKERNEL v4/v4+に対応する.顧客からの要求があれば,別のリアルタイムOSへの移植も行うという.
●アクセル,LSI化に適した画像圧縮伸張技術「Dual-RAPIC」をデモ
アクセルは,2004年に出荷予定の画像処理LSI「AX51902」に搭載する予定の画像圧縮伸張技術「Dual-RAPIC」のデモンストレーションを行った(写真11).同技術は,筑波大学 助教授の徳永隆治氏が提案した高能率符号化手法「再帰的交流成分予測符号化」に基づいて,同社が開発したものである.Dual-RAPICはLSI化を前提として開発された.LSIのゲート規模を抑え,高速に動作させるため,乗算器や除算器を使わず,加算と減算,ビット・シフトだけで圧縮伸張を実現している.写真などの自然画を圧縮伸張するのに適しているという.
●DSP8個とCPU6個を1チップに集積した画像処理プロセッサを展示
米国Cradle Technologies社は,8個のDSPと6個のCPUを1チップに集積した画像処理プロセッサ「CT3400」を展示した(写真12(a)).医療機器や放送機器の画像処理,監視カメラ,テレビ会議システムなどに利用できる.ET 2003の展示会場では,2台のカメラで撮影した映像をH.264でエンコードして送信し合い,受信した映像をそれぞれデコードして表示するデモンストレーションを行っていた(写真12(b)).
8個のDSPと4個のCPUはデータ処理に,2個のCPUはI/O制御に用いている.MAC演算を1秒間で最大280億回実行できる.H.264やMPEG-2,MPEG-4などのCODECのリファレンス・ソフトウェアを提供する.
●SESSAME,学習教材「電動ししおどし」を展示
東京大学 飯塚研究室のブースでは,組み込みソフトウェア開発を担う人材を育成するボランティア団体「組込み技術者・管理者育成研究会(SESSAME)」が開発した学習教材を基に作成した「電動ししおどし」を展示した(写真13(a)).また,キャッツのブースにも,状態遷移表ベースのCASEツール「ZIPC」でコードを自動生成し動作させたレゴ製のししおどしが展示されていた(写真13(b)).同じししおどし教材を基に作成した.
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