μITRONとCE.NETを統合して動作させる環境が早くも登場 ――ET(Embedded Technology) 2003

組み込みネット編集部

tag: 組み込み

レポート 2003年11月17日

●CAN/LINバスでミニ自動車を制御

 ET 2003の展示会場では,自動車関連の展示も多数行われた.

 NECエレクトロニクスは,CAN/LIN制御回路内蔵のマイクロコントローラ「V850ES/FJ2」のデモンストレーションを行った(写真7).自動車の模型を使い,CANバスとLINバスを介してサイド・ミラーの開閉やステアリングなどを制御した.本マイクロコントローラについて,同社はUARTなどの汎用I/Oやタイマ数などの異なる品種を用意している.現在,サンプル出荷中.量産出荷は2004年に開始する予定.

 また,展示会場では見せなかったが,LIN用トランシーバ回路と12V出力の電圧レギュレータ回路を内蔵した8ビット・マイクロコントローラ「μPD78800X」シリーズのサンプル出荷も開始した.写真7(b)のLINノード・ボードでは8ビット・マイコンに外付けのトランシーバ回路とレギュレータ回路をつないでいるが,μPD78800Xシリーズを使用すると基板サイズをもっと小さくできるという.

p7a.jpg
[写真7(a)] CAN/LIN内蔵マイコンによるサイド・ミラーの制御
模型自動車に取り付けられているサイド・ミラー制御用のボタンを押すと,その情報がCANバスを介してCAN/LINゲートウェイに伝わる.

p7b.jpg
[写真7(b)] CAN/LINゲートウェイ基板とLINノード基板
サイド・ミラーの開閉はLINバスを介して行われる.

●TI,車載用の32ビットDSP「C2800」シリーズを展示

 日本テキサス・インスツルメンツは,車載機器やモータ制御機器などに利用できるDSP「C2800」シリーズを使ったデモンストレーションを行った(写真8).従来,同社は車載用に16ビットDSPを提供していたが,C2800では32ビット・アーキテクチャを採用している.処理性能は150MIPS.最大128kワードのフラッシュ・メモリを搭載している.車載用途としては,パワー・ステアリング制御や電源制御といった応用を想定している.C2800シリーズは2003年11月から量産出荷される.

p8.jpg
[写真8] C2800シリーズのデモンストレーション
3枚の基板のうち,両端の2枚にDSPを各1個,中央の1枚にCPUを1個搭載している.車載用途を意識していることから,ステッピング・モータや温度センサも基板に搭載されていた.

●Java VM上で動作するディジタル・テレビ向けUI開発ツールを展示

 カナダのEspial社は,ディジタル・テレビ向けのWebブラウザ兼ユーザ・インターフェース開発ツールである「Espial Escape」を使って開発したテレビ画面のデモンストレーションを行った(写真9).Espial EscapeはJava VM(Java仮想マシン)上で動作し,さまざまなターゲットCPUの上で稼働するという.また,同社はJava VMのない環境向けに,移植を容易にするためのミドルウェアも提供している.

p9.jpg
[写真9] テレビ向けに開発されたユーザ・インターフェース画面
この画面はHTMLを使って作成されている.背景を透過させ,テレビ映像を見せながらメニューも同時に表示している.リモコンの上下左右キーによりカーソル・キーのように移動できるようにくふうした.

●「PictBridge」関連製品が続々登場

 グレープシステムは,PictBridgeに準拠したプリンタ用ミドルウェア「GR-PictBG」のデモンストレーションを行った(写真10(a)).PictBridgeは,ディジタル・カメラやカメラ付き携帯電話などとプリンタの間で画像データをやり取りするためのインターフェース規格である.カメラ映像機器工業会(CIPA)規格「CIPA DC-001-2003 Digital Photo Solutions for Imaging Devices」として認定されている.

 PictBridgeでは物理層の規定はないが,現在のところUSBインターフェースをベースとした構成が主流である.同社は,プリンタ側をUSBホストとして機能させるためのミドルウェアを提供する.本ミドルウェアは,画像データのやり取りを定義したPTP(picture transfer protocol),プリンタとUSB機器(ディジタル・カメラなど)の間の接続認識や機能認識を行うDPSレイヤ,プリント・サーバやストレージ・クライアントなどからなるDPSアプリケーションから構成される.本ミドルウェアの下位層には,通常のUSBホスト・スタックを利用する.

 本ミドルウェアは,2003年12月末に出荷される予定.ディジタル・カメラなどのUSB機器向けのミドルウェアも2004年春から出荷を開始するという.なお,USB機器向けのミドルウェアのDPSアプリケーションは,プリント・クライアントとストレージ・サーバなどから構成される.

p10a.jpg
[写真10(a)] GR-PictBGのデモンストレーション
PictBridge対応のディジタル・カメラで撮影した画像をプリンタの代わりのパソコンのディスプレイに表示している.USBコントローラLSIはセイコーエプソンの「S1R72005」.なお,S1R72005はUSB On-The-Go対応のコントローラLSIである.

 また,イーソルもPictBridgeに対応したミドルウェア「PictDirect」のデモンストレーションを行った(写真10(b)).本ミドルウェアはディジタル・カメラ向けに提供されている(ただし,PTPはオプション).米国Texas Instruments社のDSP「MS320DM270」が搭載された評価ボードで動作を確認した.ターゲットCPUはARM7に,リアルタイムOSは同社のPrKERNEL v4/v4+に対応する.顧客からの要求があれば,別のリアルタイムOSへの移植も行うという.

p10b.jpg
[写真10(b)] PictDirectのデモンストレーション
Texas Instruments社のDSP「MS320DM270」の評価ボード(写真右下)にPictDirectを実装した.この評価ボードをディジタル・カメラとして,PictBridge対応のプリンタ(写真左下)に画像を送る.パソコン(写真上中央)はGUIとして使用.

●アクセル,LSI化に適した画像圧縮伸張技術「Dual-RAPIC」をデモ

 アクセルは,2004年に出荷予定の画像処理LSI「AX51902」に搭載する予定の画像圧縮伸張技術「Dual-RAPIC」のデモンストレーションを行った(写真11).同技術は,筑波大学 助教授の徳永隆治氏が提案した高能率符号化手法「再帰的交流成分予測符号化」に基づいて,同社が開発したものである.Dual-RAPICはLSI化を前提として開発された.LSIのゲート規模を抑え,高速に動作させるため,乗算器や除算器を使わず,加算と減算,ビット・シフトだけで圧縮伸張を実現している.写真などの自然画を圧縮伸張するのに適しているという.

p11.jpg
[写真11] 画像圧縮伸張技術「Dual-RAPIC」のデモンストレーション
デモンストレーションでは,現在発売中の画像処理LSI「AX51901」を使い,Dual-RAPICによるエンコードやデコードはソフトウェアで処理していた.AX51902の出荷は2004年の春~夏ごろを予定している.

●DSP8個とCPU6個を1チップに集積した画像処理プロセッサを展示

 米国Cradle Technologies社は,8個のDSPと6個のCPUを1チップに集積した画像処理プロセッサ「CT3400」を展示した(写真12(a)).医療機器や放送機器の画像処理,監視カメラ,テレビ会議システムなどに利用できる.ET 2003の展示会場では,2台のカメラで撮影した映像をH.264でエンコードして送信し合い,受信した映像をそれぞれデコードして表示するデモンストレーションを行っていた(写真12(b)).

 8個のDSPと4個のCPUはデータ処理に,2個のCPUはI/O制御に用いている.MAC演算を1秒間で最大280億回実行できる.H.264やMPEG-2,MPEG-4などのCODECのリファレンス・ソフトウェアを提供する.

p12a.jpg
[写真12(a)] CT3400を搭載した評価用ボード
中央に載っている大きめのチップがCT3400.なお,CT3400とはプロセッサのシリーズ名であり,製品としては「ECE3400」と「MPE3400」の2種類がある.ECE3400が映像通信用,MPE3400が画像処理用のプロセッサである.

p12b.jpg
[写真12(b)] デモンストレーションのようす
左右のカメラでそれぞれの映像を撮影し,それを表示している.また,同時にH.264でエンコードしたものを相互に送信し,それぞれ受信した映像をデコードして,30フレーム/s,CIF(352ピクセルx288ピクセル)サイズで表示している.これらの映像(画像と音声)の処理はECE3400で行っている.

●SESSAME,学習教材「電動ししおどし」を展示

 東京大学 飯塚研究室のブースでは,組み込みソフトウェア開発を担う人材を育成するボランティア団体「組込み技術者・管理者育成研究会(SESSAME)」が開発した学習教材を基に作成した「電動ししおどし」を展示した(写真13(a)).また,キャッツのブースにも,状態遷移表ベースのCASEツール「ZIPC」でコードを自動生成し動作させたレゴ製のししおどしが展示されていた(写真13(b)).同じししおどし教材を基に作成した.

p13a.jpg
[写真13(a)] 電動ししおどし
ししおどしに水がたまって竹筒が動くと,軸の部分につけてあるスイッチがOFFになり,それにつれて水をくみ上げているモータを止めて水はねを防ぐ.竹筒が元の位置に戻ると再びスイッチがONになって水が供給されるしくみ.なお,SESSAMEで作成したのは,OSを利用せずに割り込み処理で制御するししおどしモデルであったが,その後,NPO法人であるTOPPERSプロジェクトと共同で,TOPPERSのOS上で動作するモデルも作成した.この竹製のししおどしには,TOPPERSプロジェクトと共同開発したほうを搭載してある.

p13b.jpg
[写真13(b)] キャッツのブースに展示された「電子ししおどし」
SESSAMEが作成したししおどしモデルの仕様書を基に,ZIPCモデルを作成してコードを自動生成し,富士通製のボードとレゴで組み上げたハードウェアによって動作させていた.

«  1  2
組み込みキャッチアップ

お知らせ 一覧を見る

電子書籍の最新刊! FPGAマガジン No.12『ARMコアFPGA×Linux初体験』好評発売中

FPGAマガジン No.11『性能UP! アルゴリズム×手仕上げHDL』好評発売中! PDF版もあります

PICK UP用語

EV(電気自動車)

関連記事

EnOcean

関連記事

Android

関連記事

ニュース 一覧を見る
Tech Villageブログ

渡辺のぼるのロボコン・プロモータ日記

2年ぶりのブログ更新w

2016年10月 9日

Hamana Project

Hamana-8最終打ち上げ報告(その2)

2012年6月26日