VoIPゲートウェイのソフトウェア開発の手間を軽減する ――米国Brecis Communicationsのネットワーク機器向けプロセッサ
現在,日本ではまだVoIP(voice over internet protocol)は普及しているとは言いにくい.しかし,調査会社によると,VoIPの市場は2004年以降,急速に成長するという.こうした状況のもと,VoIPゲートウェイ向けのシステムLSIやミドルウェアを提供している米国Brecis Communications社は2003年6月に日本事務所を設立し,日本市場の開拓に乗り出した.ここでは,同社のVice President of SalesであるBill Casby氏,Director of MarketingのBen Runyan氏,そして日本事務所のDirector of Salesである名倉義幸氏に同社の製品の特徴やその優位性などについて聞いた.
――Brecis社はどのような企業ですか.
Bill Casby氏 当社は,ブロードバンド・ルータ,セキュリティ機器,そしてVoIPゲートウェイなどの開発のためのシステムLSIやソフトウェアなどを提供しています.ルータやアクセス・ポイント,VPN(virtual private network)などのメーカやサービス・プロバイダが主な顧客です.
――日本事務所を開設しましたね.
Bill Casby氏 わたしたちはVoIP市場に注力しています.この市場は,現在のところ,まだそれほど普及していませんが,調査会社IDC(International Data Corporation)によると,2004年からは米国,日本ともに急速に成長します.米国ではまず企業が新規投資の際にVoIPを導入するのに対して,日本は家庭から広がると予測されています.こうしたことから,日本はわたしたちにとってとても重要なマーケットとなると考えています.
名倉義幸氏 日本では,今はまだ会社登記をしていないため,当分の間は米国本社の一部門として,国内販売代理店のPALTEKと協力してサポートを行っていきます.しかし,数ヵ月後には日本法人としてオフィスを構える予定です.
――2003年7月に発売を開始した「MSP2020/MSP2015」について教えてください.
Ben Ruyan氏 これは既存のVoIPゲートウェイ用チップ「MSP4000/5000」の低価格版です.MSP4000/5000に搭載されている音声処理用のDSP(digital signal processor)コアやセキュリティ用回路を取り除き,音声ポートの数も1~2としました(MSP4000は最大8ポート).
また当社は,チップだけでなく評価キット(評価ボード,MACや802.11ドライバなどのソフトウェア)も提供しています.評価ボードについては,回路図や部品リストが含まれています.もし顧客がある特定の部品を使いたいというときは,そのようにカスタマイズできます.また,コストの見積もりにも役に立ちます.
VoIPゲートウェイなどを開発する際,例えば1人のハードウェア技術者に対して,6人のソフトウェア技術者が必要になると言われています.当社のソフトウェアは,当社のすべてのチップに対して互換性がとれるため,開発期間とコストを削減できます.
――各社からネットワーク機器向けのプロセッサが発売されていますが,Brecis社の優位な点はどこですか?
Bill Casby氏 プロセッサのブロック図だけで話をすれば,セキュリティ回路や外部インターフェース,CPUコアなど,確かにどのメーカのプロセッサも同じように見えます.しかし,MSPシリーズでは,わたしたちの特許である「Multi-Service Bus」というバス・アーキテクチャを採用しています.これは,簡単に言えば,分散型のDMA(direct memory access)であり,各機能ブロックの処理はCPUを介することなく行われるので,処理性能が高くなります.実効的な性能はわたしたちが他社の3年先をいっていると考えています.