両面基板を張り合わせて作る全層IVH基板や液晶ポリマを採用したリジット・フレキに注目集まる ――インターネプコンワールド2003

組み込みネット編集部

tag: 実装

レポート 2003年2月 3日

 2003年1月22日~24日,東京ビッグサイト(東京都江東区)にて,「インターネプコンワールド JAPAN 2003」が開催された.同展示会では,「プリント配線板EXPO」,「半導体パッケージング技術展」,「ファイバーオプティクスEXPO」など,六つの技術分野に関する展示が行われた.富士通インターコネクトテクノロジーと松下電子部品による12層の全層IVH(interstitial via hole)配線板の共同展示や,液晶ポリマを利用したリジット・フレキシブル基板の展示などに,来場者の注目が集まっていた.

●基板どうしを張り合わせて16層のIVH基板を実現

 富士通インターコネクトテクノロジーと松下電子部品は,両面プリント基板や多層プリント基板を張り合わせて,高多層プリント基板を形成する技術を開発した.例えば,全層IVH基板どうしを張り合わせれば,層数が非常に多い全層IVH基板を形成できる.張り合わせたプリント基板の接続には,ALIVH基板(松下電器産業のビルドアップ配線板)で実績のある導電性ペースト充てん技術が利用されている.そのため,プリント基板の板厚に影響されず,ビアの穴径を小さくできるという.

 今回の展示会で,両社は,基板の厚さが約1mmと3mmの12層プリント基板を展示した(写真1).最大16層のプリント基板を実現できるという.また,薄型の携帯機器向けプリント配線板の製造にも応用できる(写真2).まずは基地局やサーバ,ルータ向けに,2003年4月からサンプル出荷を開始する.

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〔写真1〕厚さが1mmのプリント配線板
IVH構造などのプリント配線板を張り合わせることができる.両社は,基地局やサーバ向けに本プリント配線板を供給する.

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〔写真2〕携帯電話向けのプリント配線板
携帯電話の小型機器にも応用できる.

●液晶ポリマを使ったリジット・フレキシブル基板が登場

 山一電機は,液晶ポリマを利用したリジット・フレキシブル基板を展示した(写真3).厚さはリジット基板部が450μm,フレキシブル基板部が100μm.層数はリジット基板部が6層,フレキシブル基板部が2層である.

 液晶ポリマは熱可塑性であるため,銅はくと接続する際に接着剤を使う必要がない.また,吸湿性が低いため,寸法安定性が良い.また,誘電正接も低いという.

 基板の工法には,ディー・ティー・サーキットテクノロジーのB2itの技術を採用している.本製品の出荷開始時期は2003年秋頃の予定.このほか,日本メクトロンも液晶ポリマを利用したリジット・フレキシブル基板を展示していた.

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〔写真3〕液晶ポリマを採用したリジット・フレキシブル基板
液晶ポリマは吸湿性や誘電正接に優れている.従来はポリミド材料などが用いられていた.

●チップや抵抗などを内蔵する熱可塑性樹脂基板を展示

 デンソーは,ベアチップやチップ抵抗,チップ・コンデンサを内層に埋め込んだした熱可塑性樹脂の多層プリント配線板を展示した(写真4).同社は以前から,熱可塑性樹脂によるプリント配線板「PALAP」を発売しているが,内層にチップや部品を埋め込んだものを展示したのは今回が初めて.

 展示されていた基板には,9mm×9mm×0.6mmのベアチップが1個,1.6mm×0.8mm×0.4mmのチップ抵抗が16個,1.6mm×0.8mm×0.8mmのチップ・コンデンサが16個埋め込まれていた.本基板の層数は29層,厚さは約2mm.現在,内蔵する部品の接続信頼性と,内蔵する部品が発生する熱に対する信頼性の評価などを行っているという.

 PALAPは熱可塑樹脂と,樹脂を利用しない金属ペーストを用いて一括プレスによって形成するプリント配線板である.周波数が1MHz~10GHzにおける非誘電率は3.0,1MHz~75GHzの誘電正接は0.003.フレキシブル基板部とリジット基板部を同一機材で一括プレスできる.製造できる最大層数は50層.

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〔写真4〕部品を内蔵したAPLAP基板
写真の上が構造図,下が外観.アチップやチップ抵抗,チップ・コンデンサなどが内蔵されている.基板の層数は29,厚さは2mm.

●ビルドアップ基板を使って指紋認証モジュールを開発

 ディー・ティー・サーキットテクノロジーは,30mm×40mm×5mmの指紋認証モジュールを展示した(写真5).プリント配線板には,8層のB2itプリント配線板を採用している.B2itは,絶縁材料を選ばないという特徴を持つビルドアップ配線板技術である.

 本指紋認証モジュールのソフトウェアには,ディー・ディー・エスが開発した周波数解析アルゴリズムを利用している.指紋センサの読み取り部には米国Atmel社の「Finger Chip」を採用している.登録可能な指の数は100.照合にかかる時間は約1秒以下.また,照合の精度は,他人受け入れ率が0.01%以下,本人拒否率が0.1%以下である.

 外部インターフェースとして,USB1.1やRS-232-C,RS-422などを備えている.サンプル出荷の開始時期は2003年春頃の予定.

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〔写真5〕30mm×40mm×5mmの指紋認証モジュール
8層のB2itプリント配線板が採用されている.指紋センサは本モジュールとは別になる.

●2GHz帯の信号を発振・出力できる10mm角のVCSOを展示

 セイコーエプソンは,2GHz~3GHzを直接発振し,出力するVCSO(電圧制御型SAW発振器)を展示した(写真6).外形寸法は10.0mm×10.0mm×3.8mm.電源電圧は3.0V.出力電力は7dBm(Sin波,50Ω負荷,2.488GHz).

 本VCSOの製造では,シリコン・ウェハ上にダイヤモンドの薄膜を作り,その上に電極を形成する.これにより,発振子を5mm角サイズのセラミックス・パッケージに封止できた.また,クロック周波数におけるジッタも抑制できたという.量産出荷の開始時期は2003年9月.

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〔写真6〕2GHz~3GHzを発振・出力するVCSO
2GHz~3GHzを発振・出力するVCSO.外形寸法は10.0mm×10.0mm×3.8mm.

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