eUMLはソフト/ハードを含む「システム」の記述を視野に ――2002年6月,eUMLの仕様策定が完了

組み込みネット編集部

tag: 組み込み 半導体

インタビュー 2002年7月 1日

 UML(Unified Modeling Language)は,システム仕様を視覚化するための表記法である.視覚化することにより,誤解のない共通見解を持つことができることから,ソフトウェア開発の分析・設計の手段として近年注目を集めている.

 ただし,UMLの規定は単なる表記法にすぎず,開発を効率的に進めるためにはさまざまな運用上のノウハウやくふうが必要となる.また,組み込みシステムの開発にUMLを利用しようとすると,タイミングや並行性などの表現の問題が出てくる.これらを解決するために,組み込みシステム開発にかかわる4氏が組み込み向けUMLのガイドライン「eUML(Embedded UML)」を策定した.その成果物は,2002年6月に書籍としてまとめられた(渡辺博之,渡辺政彦,堀松和人,渡守武(ともたけ)和記 共著『組み込みUML』,翔泳社刊).

 eUMLの意義と今後の展開について,著者の1人であるキャッツ 取締役副社長の渡辺政彦氏と,今後のeUMLの活動に積極的に加わることになった富士通 第二システムLSI事業部 設計技術部 プロジェクト課長の長谷川 隆氏に聞いた.

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[写真1] キャッツ 取締役副社長の渡辺政彦氏  

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[写真2] 富士通 第二システムLSI事業部 設計技術部 プロジェクト課長の長谷川隆氏

――ひとことで言うと,eUMLとは何なのでしょうか?

渡辺氏 eUMLは,組み込みシステムのソフトウェア分析・設計についてのベスト・プラクティス(成功した手法)をまとめたものです.UMLがあれば何でもできます,その一方で何をどうやればよいのかはよくわからないというケースが少なくありません.それを具体的に示したガイドラインがeUMLです.例えば,ドメインの切りかたやタスクの分けかたなどを具体化することにより,ソフトウェア開発の現場で使える手法を提供したいと考えています.

――eUMLについては,さっそくFA分野の適用事例(キャッツがESECでデモンストレーションを行った)が出てきましたね.

渡辺氏 昨年,eUMLの策定を発表したとき(インタビュー記事 >「組み込み分野向けUML『eUML』,年内にドラフト仕様策定へ」を参照),オムロンからFA分野にeUMLを適用できないかという話をいただき,以降,eUMLの規格策定と並行して適用を進めてきました.

 eUMLは有志によって策定されたものです.たまたまそのメンバの1人であるわたしがツール屋だったもので,自社の製品「Konesa RealTime」にもeUMLを適用できないかと考えました.そして,策定作業と並行してこのツールにeUMLの方法論を実装しました.

――「組み込み向けのUMLツール」をうたった製品は各社からそれぞれ出ていますが,eUMLはそれらに対抗していくのでしょうか? それとも,組み込み向けのUMLは一つにまとまっていくのでしょうか?

渡辺氏 今後,組み込み分野のUMLがどうなっていくのかはわかりませんが,eUMLは,参加したい人がだれでも参加できるオープンな活動にしていきたいと考えています.また,仕様を利用する際にも何も制限はありません.eUMLを広めていきたいし,参加したい人は皆,歓迎します.

――UMLというと,すぐソフトウェアの「オブジェクト指向開発」と結びつけて考えられがちですが,もっと広く,例えば組み込みシステム開発で言えばソフトウェアとハードウェアの切り分けをする以前の段階から使うこともできると思うのですが?

渡辺氏 まさにその通りです.UMLは文字通りUnified Modelingのための言語であり,どうシステムを設計するか,どうシステムを実現するかを記述する言語です.ソフトウェアとハードウェアを含むシステム全体を対象とするeUMLの策定は,今後の展開として考えています.

――その,今後の展開とは?

渡辺氏 eUMLの策定がいったんまとまったので,今度は,FAや自動車,システムLSI,フォーマル・メソッド(方法論)など,分野別にワーキング・グループを立ち上げようと思っています.それぞれの分野の知識を持ち寄って仕様を詰め,ベスト・プラクティスを出したいと思います.ワーキング・グループの活動は,それぞれオープンに展開し,最終的には成果をプロファイルとしてまとめて,OMG(Object Management Group)に提案したいと思っています.

長谷川氏 OMGに提案するということは,業界標準をめざすということです.標準化されれば,eUMLをどこへ持っていっても使えるようになる,ということです.

渡辺氏 ワーキング・グループについては,システムLSI分野では富士通に,FA分野ではオムロンに中心的な存在として参加していただきたいと思っています.

 また,UMLを補完する言語としては,SystemCを利用できないかと考えています.今よく使われているCやC++では並列性を記述できません.一方,組み込みのハードウェアのほうでは完全並列処理が行われています.また,ソフトウェアのほうでもタスクなどを利用して疑似並列処理を行っています.SystemCはこうした並列性のトレードオフ検証に用いることができる言語です.

――今後のスケジュールは?

長谷川氏 現在,UMLとSystemCを用いて新規のシステムLSIを開発中です.2002年内には完成する予定です.年明けには成果をお見せできるはずです.同時期に,OMGへの提案の方向性も示せると考えています.

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