「実は知りたかった」という好奇心と隠れた願望――雑学は楽し ――『プログラムはなぜ動くのか』
「実は知りたかった」という好奇心と隠れた願望 ――雑学は楽し
矢沢久雄著
日経BP出版センター 刊
ISBN:4822281019
21×15cm
304ページ
2,400円(税別)
2001年9月
失礼な話だが,たとえ職業プログラマであっても,会社から与えられた目の前にある開発ツールの使い方にだけ長け,あくまでもブラックボックスとしてパソコンに接している人は,案外と多いのかもしれない.
しかし逆に,誰にだって好奇心はある.たとえパソコンを使っているだけのユーザだとしても,「どんなふうにコンピュータは動いているんだろう?」と疑問に思う人は(決して多くはないにしろ)少なからずいるはずだ.
また,誰にだって一つや二つのコンプレックスはある.外見や学歴,能力など,いろいろと考えられるが,知識に対するコンプレックスを持っている人も多いことだろう.
ところで,話は変わるが,ソフトウェア業界に身を置き,プログラムを開発している人のすべてが,情報工学や電子工学,数学などを専門として修めてきているわけではない.専門外から業界に飛び込み,叩き上げでプログラムをガンガン書いている人も多いはずだ.そんな人たちの中には,動くプログラムを書きながらも,実は心の中でこんなことを考え,コンプレックスになってしまっている人もいるに違いない――「プログラムが動く原理をきちんと知りたい」.
本書で解説されている知識は,基本的なことばかりだが,基本がわかったからといって,すぐに応用へと結びつくわけではない.OSがいかなるものであるのかがわかることと,プログラムの作り方がわかることは,まったく別の話題だ.したがって,本書によって,「なぜプログラムが動くのか」はわかるが,本書を読んだからといってプログラマになれるというわけではない.本書に書かれているのは,ちょっとした好奇心,そしてちょっとしたコンプレックスを満たしてくれる「雑学」なのである.
したがって,本書は技術書としてではなく,雑学を仕入れて楽しむための教養本として読まれるのが正しいと思う.
何でも,本書はかなり売れているらしい.きっと,人々の「ちょっと知ってみたい」という興味とコンプレックスのツボにはまっているからだろう.
大野典宏
組み込みネット編集部