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TOPPERS,OSのバリエーションの乱立を緩和する統合仕様書の作成などを検討

 オープン・ソースのμITRON仕様OS「TOPPERS/JSP」を始めとする各種組み込み向けソフトウェアを開発・公開しているNPO法人TOPPERSプロジェクトは,「TOPPERSカンファレンス2007」を6月15日に大田区産業プラザPIOにて開催した.同カンファレンスは毎年1回開催されている.

 第4回を迎える今回は,「5年目のTOPPERS ~HiQOSへのあゆみ~」というテーマで高品質なオープン・ソース(High Quality Open Source)ソフトウェアについての講演が行なわれた.

 TOPPERSプロジェクト副会長で,エーアイコーポレーション 代表取締役の加藤博之氏とTOPPERSプロジェクト理事で,合資会社もなみソフトウェアの邑中雅樹氏による「TOPPERSプロジェクトの活動報告」という講演では,会員数が順調に増加している現状と,最近ではOSなどの開発者だけでなく,TOPPERSを使うユーザ企業の参加が増えてきたことが報告された.

 同プロジェクトは,発足時から「現世代の決定版を作ることで乱立するμITRON仕様OSを整理する」と主張している.これについては,TOPPERS OSの機種非依存部分については品質が高まっているが,機種依存部分については品質にばらつきがあり,依存部のテスト手順の確立が「決定版」とするための課題となっていることを認めた.また,現状のμITRON系TOPPERSカーネルは,JSPやASP,FDMP,SMPなど,多数のバリエーションが存在しており,TOPPERS内でも乱立が進んでいるという現状を述べた.この状況を改善するための一つの案として,TOPPERS統合仕様書を作成することが提案された.

 電気通信大学電気通信学部 システム工学科 講師の西康晴氏による特別講演「日本のソフトは品質で勝てるのか?」では,日本のソフトウェア産業が生き残るうえで,高品質であることが重要だと訴えた.同氏によると,日本のソフトウェアについて,本当はコスト競争力があるのに,日本の物価や賃金の高さから,見かけ上,コスト競争力がないように見えているという.しかし,出荷1年後までに報告されたバグの数を調査した結果,米国,欧州,インドと比較して日本製ソフトウェアのバグの数は約1/10だったという.これについては,つねに品質の高いものを次の工程へ引き渡すことの積み重ねにより,過剰品質の製品が作られていると考えられる.「最終製品の品質のみが問題なのであって,過剰な品質は過剰な投資である」という批判もあるが,過剰品質の製品を作り続けることにより,日本の競争力を高められるのではないか,と同氏は語った.

 名古屋大学大学院情報研究科 付属組込み研究センター 助教授の本田晋也氏による「TOPPERS次世代カーネル(TOPPERS/ASPカーネル)」という講演では,TOPPERSの次世代カーネルであるTOPPERS/ASPカーネルと従来のJSPカーネルの違いについて解説した.TOPPERS/ASPは,μITRON4.0仕様スタンダード・プロファイルをベースとして,これを拡張・改良した組み込みOS.具体的には,「標準割り込みモデル」を導入し,SHやARMなど,CPUごとに異なる割り込み処理を統一的に扱えるモデルを導入した.また,カーネル・ソース中のデータ型を見直し,C99のstdint.hで定義されるint32_tなどを導入している.従来のμITRONでは,データ型としてBやINTなどを独自に定義していたが,これらを使ったソースを使用するための互換ヘッダ・ファイルも用意されている.また,スタンダード・プロファイルには含まれないが使用頻度の高いアラーム・ハンドラなどもサポートしており,機能的にはスタンダード・プロファイルとフルセットの中間程度の機能を持っている.JSPからASPへ移行する際には,データ型名やマクロ名の変更,変数名や関数名の変更,標準割り込みモデルへの準拠などが必要になる.

 TOPPERSプロジェクト会長で,名古屋大学大学院情報科学研究科 教授の高田広章氏による「TOPPERSの目指す組込みシステム開発の将来」という講演では,TOPPERSプロジェクトが順調に推移していることが報告された.また,同氏は引き続いて「日本のもの造り産業の特性と組込みシステム開発が目指すべき方向」と題した講演も行なった.海外のもの造り産業は,個別に完結したモジュールの組み合わせによる「組み合わせ型」開発を得意としている.一方,日本が得意とする機器は機能要素と構造要素(部品)が多対多に対応し,一つの機能が多数の部品により構成されている.そのため,機能向上に際しては仕様の擦り合わせが必要な「擦り合わせ型」開発が主流であると述べた.そして,日本の開発においては自分の担当部品だけでなく,その周囲の部品や工程にも気を配る必要があり,これが高品質につながっているのではないかと結論付けていた.


[写真1] 電気通信大学電気通信学部 システム工学科 講師の西康晴氏


[写真2] 名古屋大学大学院情報研究科 付属組込み研究センター 助教授の本田 晋也氏

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