ARM，消費電力やノイズの問題を解消できる非同期プロセッサ・コアのライセンス供与を開始

　英国ARM社は，非同期プロセッサ・コア「ARM996HS」のライセンス供与を開始した．同社のARM9コアを，クロックレスの非同期回路によって実装した．車載機器や医療用機器，組み込み制御機器などへの応用を想定している．

　非同期プロセッサとは，ハンドシェーキング・プロトコルなどに基づいてデータを受け渡す非同期回路（セルフタイムド回路）によって構成したプロセッサである．現在のディジタル回路設計の主流である完全同期回路は使用しない．同期回路を制御するクロックが存在しないため，ダイナミック消費電力を抑えられる．また，クロック・スキューの増大や同時スイッチング，電磁放射ノイズなどに起因する不ぐあいを回避できる．さらに電流ピーク値が低いので，アナログ回路との統合が容易になる．

　本プロセッサ・コアは，同期バス，非同期バスのどちらにも接続できる．ソフトウェアの開発には，ARM社の「RealView Development Suite」などをそのまま利用できる．

　今回のプロセッサは，Royal Philips Electronics社の一事業部であるHandshake Solutions社とARM社が共同開発した．Handshake社の技術を利用して，オランダPhilips Semiconductor社がすでにスマート・カード用LSIやページャ用LSI，車載ネットワーク向けのトランシーバLSI，携帯電話用LSIなどを開発しているという．Handshake社は非同期回路の設計ツールや設計サービス，IPコアを提供している．Handshake社からツールを入手して，今回のプロセッサ・コアに独自の非同期の周辺回路を付加することもできるという．