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カーボン・ナノ・チューブを用いた携帯機器向け燃料電池,開発される
ニュース 2001年8月31日
NEC,科学技術振興事業団,財団法人産業創造研究所は,携帯機器向けの燃料電池を開発した(写真1).触媒担持電極(白金を触媒とし,燃料および酸素をイオン化する部分)にカーボン・ナノ・ホーン(写真2)を用いた.これは世界初の技術で,自動車や家電などの分野にも応用できるという.今後,2003年まで開発が進められ,2005年ごろに製品化される見込み.
一般に燃料電池は,水素などの燃料(本電池ではエタノールを使用している)と酸素を反応させたときのエネルギーを電気的なエネルギーに変換する.この技術が完成すれば,リチウム電池の10倍の容量になると言われている.
ナノ・ホーンは,単層のカーボン・ナノ・チューブの構造の一つである.ナノ・チューブは,グラファイト構造を持った炭素分子のシートが円筒状(チューブ状)になったものである.直径は1~2nm.ナノ・ホーンは,その先端が円錐状に閉じており,ホーン(牛などの角)のような形状になっている.複数のナノ・ホーンが集まり,100nm規模の二次粒子(凝集体)を形成するという特徴がある.1g当たりの表面積が1,000㎡と広い.そのため,触媒に用いる白金の粒子を微細化し,表面積を増やすことができる.白金はナノ・ホーン中に分布している.白金は微細化し,一様に分布したものほど電池特性が向上すると言われている.本ナノ・ホーンは,炭素にレーザ(3~5kW)を照射し,アルゴン・ガス中で蒸発させる方法によって製造されている.その際,白金といっしょに蒸発させると,ナノ・ホーン中に微細な白金の粒子が付着する.従来の活性炭(アセチレン・ブラック)を電極に用いたときに比べて,白金の粒子の大きさが半分になった.
本電池は,固体高分子型(電極に挟まれた陽イオン交換膜に,固体高分子電解質の材料を用いたもの)で,燃料にエタノールを使用している.また,固体高分子電解質の材料にはフッ素系のポリマーを用いている.現状では,リチウム電池に比べて電池特性が2割向上しているという.また,電極の開発だけでなく,エタノールおよびフッ素系ポリマーに代わる材料を開発することが製品化に向けての課題の一つだという.なお,本開発プロジェクトには,カーボン・ナノ・チューブを発見した飯島澄男氏(写真3)も参加している.
[写真1] カーボン・ナノ・ホーンを用いた燃料電池
[写真2] カーボン・ナノ・ホーン
[写真3] 飯島澄夫氏(記者発表会にて)
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