ウェアラブル端末の開発で注目! Bluetooth 解析システム

宮崎技術研究所 宮崎仁

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2014年12月 9日

 現在ウェアラブル端末への期待が高まっています.スマホとウェアラブル端末の通信を担うのがBLE(Bluetooth Low Energy)通信です.
 スイスに本社を置くEllisys社は,USB,WirelessUSB,Bluetoothのプロトコルツール,ソフトウェアを得意としており,中でもBluetooth Explorer 400は世界初,世界で唯一のBluetooth全チャネル同時記録システムとして高い評価を受けています.Ellisys社の日本総代理店であるガイロジック株式会社の北田さん,後藤さんにお話をうかがいました.


ガイロジック株式会社  後藤 卓氏(左),北田 愼治氏(右)

 

Bluetooth Explorer 400で何ができる?

質問:まず,Bluetooth Explorer 400プロトコル解析システムはどのような機能をもつ装置なのか教えてください.

北田Bluetooth機器は,あらかじめペアリングした機器が電波の届く範囲にあれば,自動的に接続して通信を行います.ところが,実際には接続がうまくいかない,通信がうまくいかないというトラブルが発生します.Bluetooth Explorer 400(写真1)は,目に見えない電波のデータを詳細に記録して,通信状態を評価したり,トラブルの発生状況や原因を解析するアナライザです.従来のBluetooth対応のもの,BLE対応のもの,その両方に対応するデュアルタイプがあります.


 

写真1 Bluetooth® Explorer 400プロトコル解析システム

 

質問:Bluetooth開発用のツールというわけではないのですね.

北田コアの仕様を決めて回路を起こして,というような開発の初期段階で使用するツールではありません.実機ができたあとのテストや,出荷後のトラブルシューティング,運用状態の評価などに使用します.特に,実際の通信でトラブルが発生している場合,デバイスのメーカが異なっていたり,複数のデバイスが同時に接続されていると,誰が悪いのか,何が原因なのかを探るのはとても難しいです.Bluetooth Explorer 400を使えば,それが簡単かつ明快に分かります.

 

質問:世界初,世界唯一のBluetooth全チャネル同時記録システムということですが,どんな点がすごいのですか.

後藤Bluetoothというのは,通信のセキュリティが高いのは大きな利点ですが,その分,通信を追跡して状況を記録するのはきわめて難しくなっています.たとえば,Bluetoothでは2.4GHz帯の中で1MHz間隔の79チャネル,BLEの場合は2MHz間隔の40チャネルを使用して,次々にチャネルを切り替えながら通信を続けていく周波数ホッピングを行っています.また,通信は暗号化されており,ホッピング情報も暗号化されるので,リアルタイムで復号化しながら追いかけていかないと,通信を追跡することもできません.

 

質問:それで,Bluetoothはセキュリティが高いと言われているのですね.

後藤ところが,Ellisys社では独自の技術で,79チャネル全てを同時に受信し,受信データを記録できる製品を開発しました.全チャネルのデータが完全に記録されているので,復号化や解析は後から行うことができます.そして,外部からの妨害や機器の応答遅延などによって通信がうまくできなかった場合にも,その状況を逐一解析することができます.Bluetooth Explorer 400が発売されたのは20104月ですが,それ以前のBluetoothアナライザ製品にはそんな機能をもつものはありませんでしたし,現在でも類似の製品は登場していません.

 

Ellisys社の技術のすごいところ

質問:なるほど,すごいですね.他のアナライザメーカはどうして真似できないのですか.

後藤実は,Bluetoothというのは独自の複雑なプロトコルをもっていて,参入するメーカもそれほど多くなかったため,プロトコルアナライザの市場はあまり大きくありません.それで,アナライザのために専用チップを開発しようというメーカがなくて,Bluetoothデバイス用の汎用通信チップを利用してアナライザを作ってきたために,機能が制約されていたのです.

 

質問:どんな制約なのでしょうか.

後藤他社のアナライザは,基本的に11の通信を追跡するだけしかできません.まず対象とするデバイスを指定して動作を監視します.そのデバイスが他のデバイスと接続したのを検出したら,その後の通信を追跡し,記録します.復号化のためのリンクキーは追跡に必要なので,あらかじめアナライザに与えておかなければなりません.正常に接続されてから切断されるまでの状況は解析できますが,接続に失敗したとか,通信中に何らかの異常が発生したような場合には,記録や解析ができません.異常が発生した場合,同じ状況を再現しようとしても,新たにリンクキーを与えて再接続しなければならないので,異常を再現できません.外部からの妨害や,複数デバイスの通信による干渉も解析できません.さらに,通信の間に時間が経過したり,マスタとスレーブが入れ替わったりすると,従来のアナライザは同期を失って受信が続けられなくなることがあります.Ellisys社の製品なら,それらの問題は全くありません.

 

質問: Ellisys社の製品では,どうしてそれが可能になったのですか

後藤Ellisys社は,全チャネルを同時に受信,記録できるRainbow Technologyを独自に開発して,専用の無線チップも全て自社開発したんですよ.そのため,価格は高くなってしまったのですが,「これが欲しかった」というお客様には絶大な支持をいただいています.また,Ellisys社は私どもから見ても非常に洗練された使いやすいソフトウェアを作る技術ももっています.あらかじめ何も設定する必要はなくて,ただボタンを押せば,Bluetoothの全チャネルの記録が始まり,後からさまざまな解析ができます.暗号化された通信は,暗号化されたそのままの状態でデータとして記録されます.後から復号化キーを与えれば,記録された暗号化データは全て復号化できます.とても簡単に使えるので,開発部門だけでなく,テスト部門,品質保証部門やユーザ側の運用担当者,さらにセキュリティ担当者などにも評判がいいようです.

北田記録している間には,複数のデバイスの通信を同時に記録できますし,デバイスがどんな状態でも記録できます.あるお客様では,通信中のデバイスの電源瞬断テストに活用しているそうです.Bluetoothは車載機器でも多く使われていますが,電波環境や電圧変動,走行状態,温度,振動などによるトラブルは,実際に自動車を走らせながら計測しなければ分からないので,欧州の自動車メーカではEllisys社の製品を強く支持しているそうです.これは聞いた話なのですが,Ellisys社が初めてBluetooth Explorer 400のプロトタイプを作ったとき,欧州の自動車メーカに評価を依頼したところ,「こんな便利なBluetoothアナライザがあるなら,プロトタイプでいいからすぐ欲しい」と言われてあちこちで引っ張りだこになったそうです.

 

■ソフトウェアの基本機能とオプション機能

後藤解析の部分は全てソフトウェアですから,規格のバージョンアップなどに対しても対応は速いですね.ドラフト段階でもすぐに対応できますし,正式な規格が決まればそれに合わせてすぐにフィックスしています.「価格は高くなってしまった」と言いましたが,Ellisys社ではソフトウェアの年間保守料金は無償ですし,PCへのインストールもハードウェアのロックはありません.基本的なソフトウェアも使いやすくて高機能です.

 

質問:どんな機能をもっているのでしょうか.

後藤たとえば,アナライザソフトウェアの基本画面では,Bluetoothトラフィックを自動的に解析,グループ化してツリー表示するプロトコルオーバービュー,検出したデバイスの接続状況,電波強度,転送速度などをグラフィカルに表示するインスタントピコネット,自動的に認識・記録したBluetoothのパケットをチャネル別に時系列で表示するインスタントタイミング(写真2)などがあります.

写真2 アナライザの基本画面

 

さらに,オプションでは,デバイスのホストコントローラインタフェース(HCI)を同時にプロービングして解析し,リンクキーを自動的に抽出するHCIアナライザがあります.また,2.4GHz帯で観測された全てのスペクトラムを解析,表示するワイヤレススペクトラムアナライザ(写真3)も,外部からの妨害や,電波の混雑状況を把握するのにとても便利です.

写真3 2.4GHz帯で観測された全てのスペクトラムを記録

 

さらに,無線,HCII2Sのオーディオストリームを表示しながら再生するオーディオストリーム機能は,耳で聞いて検出した音切れやノイズなどの発生をBluetoothのトラフィックと簡単に関連付けられる便利な機能です.

写真2 実際耳で聞いた音とトラフィックをその場で再生して関連付けられる

 

質問: Bluetoothというと,カーナビやスマートホンを中心に車載機器,携帯機器で広く使われていますが,Bluetooth Explorer 400のお客様もそのへんが中心ですか.

北田そうですね.世界市場で見ても,まず自動車メーカで火が付いて,それから携帯情報機器メーカなどに広く使っていただいています.これからは,さらに小型のウェアラブル機器,ヘルスケア機器などにBluetoothが採用される動きが急速に広がっているので,それらのお客様にもぜひBluetooth Explorer 400の良さを知っていただきたいですね.その一環として,11416日に開催されるウェアラブルEXPOでは,初日の14日に先着30名様の無料セミナーを開催したいと準備を進めています.

 

質問: 本日はどうもありがとうございました.

 

 

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