ET2014の見どころを山田実行委員長に聞く
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2014年10月19日
-------クローズアップ-------ET2014出展社---------
今回はIoT元年と位置づける
部品屋を脱してシステムの提案で勝負していく
一般社団法人 組込みシステム技術協会(JASA)が主催する「Embedded Technology 2014(以下,ET2014)」が,11 月19日(水)〜21日(金)にパシフィコ横浜において開催される.今回のET2014 は,「IoTでビジネスが変わる!組込み技術が進化する!」をテーマに,昨年に提唱した「Be Connected(つながる)with ET」からさらに進めて,IoTでつなぎビッグデータなどを活用することによってEmbedded Technologyの応用分野をさらに拡大させることを目指す.
そこで,今回のET2014 の見どころについて,実行委員長の山田 敏行氏にお話をうかがった.
Be ConnectedからIoTへ「つながる」ことにより応用分野を広げる
Q:今回のテーマはIoTがメインになっているようですが,その趣旨を教えてください.
山田氏:昨年のET2013では,「Be Connected」と機器どうしをつなぐことを大きなテーマにしていました.そのため,IoT(Internet of Things)やM2M(Machine to Machine)は機器どうしをつなげるための話題として昨年も取り上げましたが,今年はもう一歩進めて,もうつながるのは当たり前のことになってきたので,それから先のイノベーションを深く掘り下げようということになりました.
Q:それがIoTとどのように結び付くのでしょうか.
山田氏:IoTが話題になってきたのは最近ですが,IoTの概念は2000年頃にはすでに提唱されていました.IoTは「モノのインターネット」と訳されていますが,モノ,すなわちあらゆる物をインターネットで接続し,物どうしが通信することによって従来は実現できなかったことを実現しようという考え方です.現在では,センサを内蔵した無線チップが,米粒のような大きさで実現できるようになってきたため,IoTが実現可能になったというわけです.IoTでは,人間を介さずに無数の機器と通信を行うことができるので,膨大なデータを集めることが可能になります.そうなれば,今話題のビッグデータの活用なども重要になってきます.これはすなわち,新たな成長分野が生まれるということです.
Q:IoTとEmbedded Technologyの関係はどのようになるのですか.
山田氏:これまでの組込み業界は,より優れた部品やモジュールをお客様に提供していればよかったのですが,これからはそういう時代ではなくなっていきます.単なる個々の部品ではなく,それらを組み合わせたシステムを実現する方法をお客様に提案できなければなりません.図1を見ていただければわかるように,これからの新たな成長分野として,インフラを整備して食糧問題の解決に取り組む「スマートアグリ」,国産航空機の実用化と宇宙開発が本格化してきた「航空・宇宙」,ITSなどのインフラとの協調が進む「交通システム」,介護サービスなどで実用化が見えてきた「ロボティクス」,自動運転が現実になってきた「オートモティブ」,震災対策としても必要なスマートシティやスマートハウスの実用化が求められている「スマートエネルギー」,工場内をすべてインターネットで制御する「スマート工場」,クラウドを使ったデータ管理や遠隔医療を実現する「デジタルヘルスケア」などが挙げられていますが,IoTはこれらの成長分野とETのコア技術をつなぐ重要なキーテクノロジーの一つになると考えられるからです.
顧客のニーズを知り新しい成長産業にシステムとしてソリューションを提案する
Q:具体的にはどのようなことを顧客に提案できるのでしょうか.
山田氏:組込み業界のベンダーは,これまではお客様に自分達の製品や技術がどれだけ優れているかを理解してもらい,コストに見合うかを判断していただくだけでよかったわけです.それは,お客様のほとんどがEmbedded Technologyについて十分な知識と技術を持っていたからです.ところが,これからの成長分野のお客様はEmbedded Technologyについて十分な知識をもっているとはかぎりません.例えば,農業や医療の分野では,目的は明確であるとしてもそれを実現する方法をお客様が自分で解決することは難しいかもしれません.そこで,組込み業界のベンダーは,お客様のニーズを聞いてその解決法を提案する必要があるわけです.そのためには,組込み業界のベンダーは,お客様のことをもっとよく知る必要があります.
Q:顧客のニーズを知るためにET2014ではどのような提案をされているのでしょうか.
山田氏:例えば,カンファレンスの中でもっとも注目度が高い基調講演では,従来は組込み業界からの情報発信が中心だったのですが,ET2014ではこれからの成長分野のお客様のシステムについてもっともよく理解されている方々にご講演をお願いしました.
まず19日(水)には,NTTデータの代表取締役社長 岩本敏男氏に,ITが創造するこれからの価値をテーマに,ユーザから見て組込みに何を期待しているかをお話いただきます.20日(木)には,トヨタIT開発センターの代表取締役社長 橋本雅人氏に,車とITの融合をテーマに,自動車とITを組み合わせることでどのような社会インフラを実現できるかについてお話いただきます.さらに,21日(金)には,宇宙航空研究開発機構(JAXA)の川口淳一郎氏に,はやぶさとスマートエネルギーをテーマに,はやぶさに使用した制御システムが他の組込み制御にどのように応用できるかをお話いただきます.これらの講演は,ユーザ側からの視線で組込みをどう活用するかというお話になるでしょう.
カンファレンスプログラムにはIoTトラックを新設
Q:IoTに関する講演にはどのようなものが用意されていますか.
山田氏:IoTに関しては,招待講演としてマイクロソフト社の今後のIoTへの取組み,特別講演として東京大学 先端科学技術研究センターの森川博之教授によるIoTとビッグデータをテーマにしています.また,カンファレンスプログラムにはIoTトラックを新設し,野村総合研究所の武居輝好氏によるIoTで生まれる新たなビジネス,慶応義塾大学 環境情報学部の徳田英幸教授によるIoTとスマートシティ,東京大学 先端科学技術研究センターの稲田修一教授によるIoTの活用とビジネスイノベーション,アームの代表取締役社長 内海弦氏によるIoTにより変わる世界,ソニーデジタルネットワークアプリケーションズ Chief Security Technology Officerの松並勝氏によるAndroidセキュリティ技術などを予定しています.
それらの講演では,マイクロソフトやアームがIoTにどのように対応しようとしているか,興味深いお話が聞けると思います.また,Wi-SUNは次世代の電力量計「スマートメータ」に採用されることになった無線通信方式で,日本発の国際規格としても注目されています.なお,カンファレンス会場は,昨年同様にアネックスホールだけでなく展示ホール内にも配置されているのですが,人の流れの邪魔にならないようにワークショップと共に会場の奥に移動しています(図2).
Q:ET2014での新たな取組みとしてはどのようなものがありますか.
山田氏:今年はIoTに関連した基調講演と,展示会場にIoTゾーンを設けたこと,カンファレンスにIoTトラックを設けたことが最大の注目ポイントといえます.それ以外としては,21日(金)の基調講演でパナソニックの梶本一夫氏に,IoTがつなぐ家電・住宅・自動車・B2Bをテーマに,同社が直面する事業転換の内情についてお話いただきます.韓国や中国の新興企業に苦しめられている日本の企業が,今後どのように業態を変えていくのか興味深いお話になると思います.さらに,昨年導入して大変好評だったETビジネスマッチングプログラムをリニューアルし,出展社と来場者が事前にアポイントを取ってお互いを知ることで,より商談を円滑に進められるようにしました.出展社と来場者がマッチングメンバとしてプロフィールを登録しておくと,メンバ同士がインタラクティブ検索やリコメンドなどの機能を使って互いに役立ちそうな相手を見つけることができます.商談には,半個室ブースなどの専用の施設を利用することができるので,是非ともご活用いただきたいと思います.
そのほか,海外からも多くの来場者に来ていただきたいので,ドイツの「embedded world」の主催者や台湾の「COMPUTEX」の主催者との協力関係も進めています.また,今年で第4回を迎えるETアワードもリニューアルしました.ETアワードは,組込み業界で生まれた優れた技術や製品を探し出して表彰しようと企画しているものです.昨年までは特定の分野のアプリケーションに限定していたのでなかなか応募しにくかったのですが,今年からその制限をなくし,技術イノベーションを中心に,従来の製品や技術と違うところを示すことができれば応募できるようにしました.
今年もカンファレンスは全て無料
Q:新規の来場者に伝えたいことはありますか.
山田氏:技術の進歩のおかげで,エレクトロニクス技術のほとんどがワンチップに収まる時代になりました.しかし,ワンチップになった部品では独自の付加価値がないと他社と差別化することが難しくなり,組込み業界のベンダーは部品を売るだけでは生き残っていくことができなくなっています.生き残っていくためには,お客様のニーズをよく理解して,付加価値をつけたアプリケーションに特化したサービスを提供していくことが重要です.これまで述べてきたように,今後は我々のお客様が従来と大きく変わってくる可能性があります.出展社側もそれを理解しなければなりませんが,成長分野のお客様にはET2014の中に問題の解決法があることを理解していただきたいと思います.これからの成長分野を支える技術がEmbedded Technologyの中にあります.ETの大きな特色は,豊富で充実したカンファレンスを無料で受講できることです.今年もカンファレンスをすべて無料で受講できます.是非とも,ET2014にご来場いただいて,自分達の夢の実現方法を見つけていただければ幸いです.
Q:今日はどうもありがとうございました.
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