スイッチ!to" Windows Embedded"キャンペーン

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キャッチアップ 2012年3月19日

   

東京エレクトロン デバイスの現役エンジニアが語る
Windows Embeddedの魅力


 東京エレクトロン デバイス株式会社では,パソコン用のWindowsを組み込み機器に使われているお客様を対象に,組み込み専用のWindows Embedded OSへの切り替えキャンペーンを5月31日まで実施している.そこでWindows Embeddedの魅力やメリットについて,CN事業統括本部 エンベデッド・ソリューション部エンジニアの茂出木 裕也(もでき ゆうや)氏にインタビューした. 

        
 



●Windows Embeddedについて

─まず,Windows Embeddedとは何でしょうか?
茂出木:一言で言えば,Windowsを組み込み機器のOSとして使っていただくためのライセンス形態です.Windows Embeddedには複数のファミリが用意されており,PC用Windowsと同様に組み込み機器に直接インストールするタイプ(インストール型)と,Windowsの豊富な機能の中から使いたい機能を選んでOSを構築するタイプ(開発型)に分けられます(表1).



表1 Windows Embedded ラインナップ


 

 どちらも,15年間の長期供給が可能なこと,特定の機能を実現する組み込み機器としての利用に限定されること,代理店を通じて購入していただくことなどが,PC用とは違います.供給期間が長いためPC用に販売が終了したWindowsでもライセンスの購入が可能なので,長期安定供給・安定稼働が求められる組み込み機器に最適です.
 

─インストール型にはどのようなファミリがありますか?
茂出木:代表的なものに,クライアントOSのWindows Embedded Enterpriseと,サーバOSのWindows Embedded Serverがあります.「Windows 7 Ultimate for Embedded Systems」というように,対応するPC用の製品名の後に「for Embedded Systems」を付けて区別しており,これらを総称して「FES」と呼んでいます.PC用とはバイナリ・レベルで同じ内容なので,PC用のアプリケーションもそのまま動きます.また,コンピュータのプロパティ画面に保守サポート先の情報を表示させたり,システムの立ち上げ時に特定のアプリケーションを自動的に起動させたりといったカスタマイズが容易にできます.

─開発型にはどのようなファミリがありますか?
茂出木:開発ツールを利用してOSをカスタマイズするタイプのものでWindows Embedded Standardがあります.こちらはPC用Windowsの機能をコンポーネント化して提供するもので,略して「WES」と呼んでいます.PC用Windowsには無い組み込み機器向けの拡張機能を利用できるといった特長もあります.
 

─Windows CEとは違うのですか?
茂出木:Windows CEとその後継製品は,Windows Embedded Compact(WEC)ファミリと呼ばれています.PC用Windowsとはカーネルレベルから異なるOSで, 唯一のリアルタイムOS であり, x86, ARM,MIPSなど複数のCPUに対応していることが特徴です.ハンドヘルド端末や計測器などのフットプ・リントが小さい組み込み機器で使われています.
 


●WESの拡張機能について

─WESの拡張機能とはどのようなものでしょうか?
茂出木:CF/SDカードやUSBからブートしたい,起動を高速にしたい,シャットダウン操作を不要にしたい,OSのサイズを小型化したい,などといった組み込み機器特有の要望を実現するための機能が用意されています.
 

─具体的にはどのようなしくみがありますか?
茂出木:ディスクへの書き込みを禁止するEWF(Enhanced Write Filter:図1)や,FBWF(File Base Write Filter)というしくみがあります.

 


図1 EWF 機能



 PC用WindowsではHDDのデータの書き換えが頻繁に行われますが,組み込み機器ではフラッシュ・メモリのように書き換え回数に制限のあるメディアを使う場合も多くあります.このような場合にEWFを利用することで,メディアの寿命を延命することが可能です.さらに,このEWFと一緒に利用する機能として,高速起動を実現するHORM(Hibernate Once/Resume Many)なども利用できます. 

─単なる書き込み禁止とは違うのですか?
茂出木:EWFやFBWFでは,ディスクへの書き込み操作をメモリ上に確保した専用の領域に,リダイレクトするしくみを持っています.ディスク上の内容は書き換えられないので,装置の電源を入れるたびに毎回同じ状態(初期状態)で起動させるようなOSや,電源を切る際にシャットダウン操作が不要になるOSの構築が可能です.

─起動画面やOSのメッセージをユーザに見せない機能があるそうですが?

茂出木:WindowsではExplorerシェルが標準ですが,WESではATM,POS端末など用途に合わせてユーザ・インターフェースをカスタマイズしたカスタムシェルを利用することができるほか, 独自のスタートアップ画面の追加やログオン時のデスクトップ画面の変更も可能です.そのほかにも,Windowsによるエラー,警告,情報などのメッセージ・ボックスの表示を抑止するような機能もあります.EWF/FBWF,HORMやこれらのカスタマイズ機能を総称して,EEF(Embedded Enabling Feature)と呼んでいます(表2).

 

表2 WESの拡張機能(Embedded Enabling Feature)一例

EEF USB Boot 2.0
HORM (Hibernate Once/Resume Many)
Enhanced Write Filer (EWF)
File Base Write Filer (FBWF)
System Message Intercept




●WESでのOSの構築

 

─WESでのOSの構築手順について教えてください.
茂出木:最新のWindows Embedded Standard 7(WES7)では,Windowsの機能を約150個のパッケージに分割してあり,その中から必要な機能を選択してOSを構築します.   例えば,この機器ではInternet ExplorerとMedia Playerを使いたい,というようにパッケージを選択しますが,これをICE(Image Configuration Editor)というOSカスタマイズ用のツールを利用して構築します(図2).必要なパッケージだけを選択することで,OSのサイズを小さくできます.


図2 Image Configuration Editor画面


またICEには,あるパッケージを利用するために別のパッケージが必要になるという,パッケージ間の依存関係を自動的に解決する機能もあります(図3).
 



図3 アプリケーションで必要なパッケージを自動検索



 

─どれぐらい小型化できるのですか?
茂出木:PC用のWindows 7は,インストール時に最小でも8Gバイト以上のHDD容量が必要ですが,WES7の場合は最小で1Gバイト程度のサイズでOSを構築できます(表3).なお,前バージョンのWES2009(XP SP3ベース)では,Windowsの機能が1万個以上のコンポーネントに細分化されており,最小500Mバイトにまでカスタマイズが可能です.
 

表3 WES7とWindows7の比較

特徴WES 7Windows 7
nstallationCustom Image Build Tools/IBW,ICECD/DVD Installation
Multimedia
Disk Space(Min〜Typical)1GB〜(推奨4GB)8GB〜
Memory512MB〜(推奨1GB〜)1GB〜
CPU SupportX86, x64X86, x64
API SupportFull Windows 7 API
Device DriversWindows 7 100%互換
Security, Language Packs
Muiti-Touch support
Windows XP mode
Game, Sample
Remote Boot
Dolby Digital Plus Codecs(license required)
Virtual Desktop Infrastructure/(VDI) Enhancements

 

─逆に,WESのすべてのパッケージを選択すれば,PC用Windowsと同じものができるのですか?
茂出木:WESはPC用Windowsをベースに作られていますので,PC用Windowsに限りなく近い構成のOSを作ることはできます.ですが,WESでは削除されている機能もありますし,組み込み機器向けの拡張機能(EEF)が追加されていますので,全く同じものができるわけではありません.PC用Windowsで動作するアプリケーションは, WES上でも同じように動作させることができますが,そのためには, 「このアプリケーションを実行するために必要なパッケージが何か」を特定して,あらかじめWESの構成に組み込んでおくことが必要です .
 

●FESの特長

─次に,FESの特長について教えて下さい.
茂出木:FESは対応するPC用Windowsと機能的に同一です.PC上で開発したアプリケーションがそのまま動作するのが最大の特長です.OSの構築やアプリケーションの動作検証の手間を最小限に抑えるにはFESが有効です.FESはFA用PCやPOS,放送機器,検査装置などでも幅広く使われています.    PC用Windowsをそのまま組み込み機器に使っているお客様はかなり多いと思いますが,FESならそのまま移行していただけます.その場合,PC用に比べてFESは長期供給やコスト面で大きなメリットがあります.   これまでWindows Embeddedを知らなかったお客様や,敷居が高いと思って敬遠されていたお客様に,FESを知っていただきたく,スイッチ! to "Windows Embedded"キャンペーンを展開中です.通常よりさらに低価格でFESを利用いただけるチャンスですので,ぜひご活用ください.
 

●入手方法とサポート

─Windows Embeddedを入手する方法は?
茂出木:東京エレクトロンデバイスなどの代理店を通じて入手します.Microsoft社と組み込み専用のライセンス契約を結んでいただく必要があります.手続きなどはご案内いたしますので,難しいことはありません.
 FESの場合はライセンス契約後にOSインストール用メディアが供給されます.WESはツールキットの形で供給され,開発ができたらライセンス契約を結ぶことによって,ビルドされたOSの利用が可能になります.
 

─サポート体制はどのようになっていますか?
茂出木:当社内でもサポート体制を整えており,ノウハウも蓄積しています.OS自体に起因する問題は,当社からMicrosoft社に問い合わせや報告を行っています.
またお客様が直接Microsoft社と有償サポート契約を結ぶこともできます.当社ではデバイス,BIOS,OS,ミドルウェア,セキュリティと組み込み開発をトータルに扱っておりますので,開発者の方々に対して幅広いサポートがご提供できます

─15年の長期供給というのは,どういうシステムですか?
茂出木:FES,WESともに,リリースから5年間のメインストリームサポート期間,その後5年間の延長サポート期間,さらに5年間の出荷可能期間が設定されています(図4).メインストリームサポート期間には,機能追加など各種のアップデートが行われます.セキュリティ・パッチは延長サポート期間にも引き続き行われます.最後の5年間はセキュリティ・パッチのサポートはなくなりますが,OSを組み込んだ機器の出荷が可能な期間として,15年間の長期供給を実現しています.


図4 ライフサイクル


 


●Kinectについて


─話は変わりますが,XBox360で登場した新しいモーション・コントローラ「Kinect」が,組み込み開発でも大きな話題になっていますね
(図5).
茂出木:Windows EmbeddedではWindows Aero,Windowsタッチなどの新しいユーザ・インターフェースをサポートしています.Kinectについても,誰でも直感的に使える新しいイン ターフェースとして,PCから組み込み機器までさまざまに利用されていくと考えています.当社でも,Kinectセミナーを主催して,いろいろな使い方や 応用例をご提案しています.


図5 2012年2月1日にWindows用Kinectが発売開始


 

─本日はどうもありがとうございました.


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東京エレクトロン デバイス株式会社
エンベデッド・ソリューション部
〒163-1034東京都新宿区西新宿3-7-1 新宿パークタワーS34階
Tel:03-5908-1994

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は2012年2月1日から5月31日の納入分まで実施中です
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