成功する社内コミュニティの作り方(1) ―― MATLABの技術交流会を主宰して...
●運営する際の三つのガイドライン
筆者は技術交流会の運営にあたって,先の失敗経験も参考にして,次の三つのことを心掛けています.
- 無理せずに行う
- 活動はオープンに
- 情報提供を働きかける
一つ目は,無理な活動は行わないということです.過去の失敗経験から,これは大事だと思います.技術交流会をもっと頻繁に行ったらどうか,という声もありましたが,現在のペース(半年に1回)が無理なく行うにはちょうど良さそうです.
二つ目は,活動を誰でも参加できるオープンなものにするということです.さまざまな人に参加してもらうことを心がけています.技術交流会を開催するときは,全社員宛てのメールを使ってアナウンスしています.これは,社内にコミュニティの存在をアピールすることにもつながっています.特に「細く長く」タイプのコミュニティの場合,周りの社員から忘れられない(笑)ためにも,活動を定期的に社内にアピールすることが必要だと思います.
三つ目は,技術交流会あるいはメーリング・リストで既存ユーザに情報を提供してもらうように働きかけることです.何のきっかけもなく,みずから情報提供してくれるような人はなかなかいません.しかし個別にお願いすれば,引き受けてくれることが多いのです.このときに気分よく引き受けてもらえるような気遣いが必要なのかもしれません.
筆者がイメージするコミュニティの姿は,新しくMATLABを使い始めるユーザが困ったときに,コミュニティ内の先行ユーザがサポートするというものです.当たり前のことだと思うのですが,部署をまたがると結構難しい場合もあります.それができるような環境はどうやって作ったらよいのか,実際に悩んでいるところです.
●コミュニティを主宰すると自身のスキルも向上する
主宰者にとってコミュニティ運営は悩みもありますが,やっていて良かったと感じることも多くあります.例えばコミュニティを通じて社員間の情報交換ができるようになったことです.まだまだ少ないですが,技術交流会でそれぞれの取り組みを紹介できるようになったのは一つの成果だと思いますし,主宰者としてうれしいものです.
また,自分自身のスキルが向上したことも,思わぬ(?)成果です.質問を受けることが多くなり,自分自身が進んでいろいろなことを調査するようになりました.スキル向上を考えている方は,自分でコミュニティを立ち上げてみるのも一つの手かもしれません.
今回紹介したMATLABコミュニティですが,最近は活動が低調になってきていて,主宰者としてはテコ入れをしたいと考えています.その際に参考にしたいと考えている別のコミュニティが社内にあり,筆者自身もメンバの一人として参加しています.次回はその事例について紹介し,成功するコミュニティの条件について考えてみたいと思います.
さいとう・むつみ
富士通九州ネットワークテクノロジーズ(株) 信号処理マイスター
◆筆者プロフィール◆
斎藤 睦巳.九州芸術工科大学 大学院修了.大学では音響心理学を専攻.入社後は音声,オーディオCODECの開発や,ノイズ・キャンセラ,音声強調などの研究開発に従事.その後,信号処理全般に関する設計手法の研究開発を担当.社内制度にて「マイスター」の認定を受け「信号処理マイスター」と名乗る.現在はMATLABとC言語ベース高位合成を組み合わせた設計手法の構築に取り組んでいる.