Real-Time Hypervisor事業で組み込み市場に参入

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2010年10月15日

 



リアルタイム制御の知識と産業用検査装置の顧客層を背景に(株)リンクスが新規事業をスタート
Real-Time Hypervisor事業で組み込み市場に参入

(株)リンクスといえば,画像処理ライブラリHALCON というイメージが定着しています.しかし2010 年9 月1 日から,マルチOS を実現する仮想化ソフトウェアであるReal-Time Hypervisorの日本総代理店として新規事業をスタートさせ,ET2010 にも初出展します.新規事業の経緯と戦略を(株)リンクス 代表取締役 村上 慶氏にお話しを伺いました.

 



(株)リンクス
代表取締役 村上 慶 氏 



──Real-Time Hypervisorの特徴を簡単に説明してください.
村上氏:Real-Time Hypervisorは,x86プロセッサの各コアに異なるOSを実装することで,従来の制御用PCにRTOSを搭載し,ユーザ・インターフェース用PCにWindowsなどの標準OSを搭載した二つのシステムを,単一のPCで実現させる仮想化ソフトウェアです.システムのコスト削減はもちろんのこと,装置の小型化,消費電力の低減と,多くのメリットを広い産業分野にもたらします(図1)


 
図1.複数PC を1 台に集約
ユーザ・インターフェースとリアルタイムの処理をWindowsとRTOS に完全分離

──(株)リンクスの歴史を教えてください.
村上氏:株)リンクスは1990年に創立し,高速リアルタイム演算を必要とする制御エンジニア向けの開発支援ツールを提供するdSPACE 社(ドイツ)の国内総代理店として成長しました.
 MATLAB/Simulinkで構築した制御アルゴリズムを,リアルタイム・カーネルやI/O プログラムも含めて自動コード生成し,dSPACE社製リアルタイム・ハードウエアに自動実装します.これにより,エンジン制御や車両安
定制御の開発期間を大幅に短縮することに成功しました.今では自動車産業を中心として制御開発者にはデファクト・スタンダードなツールとして認められています.
 制御でのビジネスが軌道に乗った後,1995年に画像処理(マシンビジョン)の市場に参入しました.そして1997年に画像処理ライブラリHALCON(ドイツ)の国内総代理店となります.
 そのころは,専用ボードで画像を処理するのが標準の時代でした.いっぽう汎用のPC 上で動作するHALCONは,PC の著しい性能向上とHALCON 自身の処理能力向上が相まって,半導体,電子部品,FA,医療といった広い分野であっという間にシェアを拡大しました.
 HALCON は現在も革新を続けています.例えば2次元画像から3次元情報を取得する特殊な処理機能を提供することで,ロボットのビン・ピッキングやプリント基板でのハンダ高さ計測など新たな付加価値を提供しています.
 このたび,弊社は第三のビジネスの柱として組み込み分野への参入を決定しました.制御ビジネスで培ったリアル・タイム・プログラミングの知識と,画像ビジネスを通して獲得した産業用装置の顧客層をベースに,x86系プロセッサ搭載PC の組み込み分野での発展に貢献します.
 

マルチコア・プロセッサ技術を具体化する事業
──Real-Time Hypervisorの日本総代理店になった経緯と動機は
村上氏:プロセッサの性能向上により,古くから学術的に議論されてきた様々な画像処理技術を現実のアプリケーションへ適応させることに一役を担ってきました.
 この先10年間のプロセッサ技術の発展は並列化であることは自明です.そのマルチコア・プロセッサ技術を組み込み産業用途で実現させることを,弊社の次の事業と考えました.Real-Time Systems社が開発するReal-TimeHypervisorは,この弊社のビジョンと一致しています.
 また,Real-Time HypervisorはWindows,Linux,Android,VxWorks,QNX,Windows CE,ユーザ独自OSといった各種OSをサポートしており,ハードウエアはx86プロセッサを搭載したPCであれば種類を選びません.このため,Real-Time Systems社は,OSやハードウエアのベンダに依存しない独立した代理店を探しており,その点でも弊社と方向性が一致しました.

──総代理店としての取り組みは
村上氏:弊社はReal-Time Systems社の国内総代理店となりました.弊社は「総代理店」であるからこそなし得る品質の高いサービスと投資力を強みとしています.制御,画像,そして組み込みへ,急速に変化する市場ニーズを敏感に捉え,着実に進歩を遂げてきました.決して取り扱い製品を増やすことで成長するのではなく,世の中の一歩先を行く製品を厳選し全力で取り扱うことで成長し,お客様の求めるモノを求める以上のカタチで提供することをモットーにしています.

◆産業用装置や医療装置を中心に検査装置がターゲット
──お客様像をおしえてください
村上氏:いまおもに取り組んでいる分野は,産業用装置や医療装置です.RTOSを活用して対象物を制御し,ヒューマン・インターフェースにはWindowsやLinuxを搭載するすべての装置を指します.その中でも,種類を問わず産業用の「検査装置」においては高いレベルの画面表示や操作性が求められるため,より高い付加価値を提供できます.
 また,世界的には様々な取り組みが行われていて,自動車のナビゲーション・システムや,テレビと電話の融合など,マルチOSが付加価値を生む市場は広がっています.

――日本における市場をどう見ていますか
村上氏:半導体,電子部品,産業用ロボット,医療装置,自動車,どの分野においても日本は世界をリードする存在です.日本は世界でトップを争う市場規模であると理解しています.よって,開発元のReal-Time Systems社も日本市場を最重要視しており,開発元と弊社が密接に連携することで国内のお客様の要望を的確に製品に組み込んでいくことをお約束します.

◆今後はプロダクト・パートナとインテグレーション・パートナとの連携構築を強化
──今後の営業戦略や予定されていることは
村上氏:我々はハードウエアなど周辺分野に参入することなく,Real-Time Hypervisorに特化したビジネス展開を行います.よってさまざまなOS やハードウエア・ベンダとの連携を強化していきます.
 また,我々は特定顧客向けのインテグレーション開発を請け負うことなく,ディストリビューションに特化するため,エンジニアリング企業との連携も進めます.よって,プロダクト・パートナとインテグレーション・パートナの大きく二つのパートナーシップを構築したいと思います.
 Real-Time Hypervisorを装置に実装するには,ある程度の開発が必要となり,エンドユーザ様がそのための人材を確保できない場合は,委託開発が求められます.その際には,Real-Time Hypervisor を熟知したインテグレーション・パートナを紹介できる環境を構築します.会社規模に関係なく,高い技術力を持つ企業との連携を図ります.

──海外における具体的な採用例を教えてください
村上氏:いくつかの公開されている事例の中で,木工産業分野において世界をリードする装置メーカHOMAGGroup AG社(ドイツ)の例があります.HOMAG 社は家具などに利用される木材部品を製造するための切断,加工といった一連の装置(図2)を提供しています.同社の次世代コントローラ「powerControl V2.0」は,従来PC と複数の専用ハードウエアで構成されたシステムを,単一ハードウエア(PC)で標準化することに成功しました.画面表示系にWindowsを,リアルタイム制御にReal-Time Linuxを採用しています.
 多くの方々にとって仮想化技術とリアルタイム装置制御は相反すると見られがちです.Real-Time Systems社のGerd Lammers代表取締役社長は,「ほとんどの仮想技術はITやサーバ・ドメインに向けて設計されているが, Real-Time Hypervisorはリアルタイム性を考慮した産業向け組み込み用途に特化している」とコメントしています.

 



図2.powerControl V2.0 搭載の木材加工装置


(株)リンクス http://www.linx.jp/
〒225-0014 神奈川県横浜市青葉区荏田西1-13-11

連絡先
info@linx.jp
TEL :045-979-0731(代)

 

 

 

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