フリースケールがシャープNetWalkerや3.9G LTE基地局へのCPU採用をアピール ―― FTF(Freescale Technology Forum)Japan 2009レポート

北村 俊之

 フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンは,「安全・環境・健康ビジネスの拡大」,「更なる"つながること"への要求」をテーマに,2009年9月9日,目黒雅叙園(東京都目黒区)にて技術フォーラム「FTF Japan 2009」を開催した(写真1).本技術フォーラムは20以上の技術セッション,製品展示,テクノロジ・ラボ,ワークショップなどから構成されている.

 FTF(Freescale Technology Forum)は,Freescale Semiconductor社が米国,日本,アジア,欧州で展開するイベントで,今年が5回目の開催になる.2005年以来ののべ参加者数は約20,000人.


写真1 会場受付の様子

 

●経営陣がビジネス・モデルの軌道修正について説明

 基調講演では,Freescale Semiconductor社 CEO(Chief Executive Officer)のRich Beyer氏(写真2)によるオープニング・スピーチ,そしてフリースケール・セミコンダクタ・ジャパン 代表取締役社長の高橋 恒雄氏(写真3)と各事業部門長らによるデモンストレーションを交えたスピーチが行われた.デモンストレーションでは,健康機器メーカであるタニタ 代表取締役社長の谷田 千里氏,OSベンダであるマイクロソフト コマーシャルWindows本部 本部長の中川 哲氏がそれぞれスピーチを行った.このほか,NTTドコモ 取締役常務執行役員 研究開発センター所長の小森 光修氏によるゲスト・スピーチが行われた.


写真2 Freescale Semiconductor社 CEOのRich Beyer氏

 



写真3 フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン 代表取締役社長の高橋恒雄氏

 


 2008年後半から2009年にかけての世界経済の急激な落ち込みは,半導体業界に大きな衝撃を与えた.こうした破壊的変化に対して,同社でも対応を余儀なくされたという.具体的な対策として,同社は「ビジネス・モデルの軌道修正」と「焦点を絞ったマーケット・セグメントへの注力」の2点を挙げた.

 前者の「ビジネス・モデルの軌道修正」については,携帯電話事業からの撤退,仙台開発デザイン・センタの統合,8インチ・ファブへの移行の説明を行った.後者の「焦点を絞ったマーケット・セグメントへの注力」については,車載および通信分野でのリーディング・ポジションの維持,拡張・拡大する市場における製品の採用(Design Win)などを課題として挙げた.

 このほか,自動車,ネットワーキング,民生用および産業用機器の市場で今後求められる要素として,昨年に続いて「環境」,「健康と安全」,「ネットワークの進化」といったキーワードに着目し,それぞれの切り口から製品や技術,事例,パートナ企業との連携の取り組みなどが紹介された.

●シャープ製携帯型ネット端末「NetWalker」への採用実績をアピール

 今回の技術フォーラムの開催に合わせて,同社は三つの発表を行った.第1に,NECが3.9G LTE(Long Term Evolution)携帯電話基地局システムにFreescale Semiconductor社のPower QUICCプロセッサを採用したことを発表した.第2に,シャープが2009年9月中に出荷を開始する携帯型インターネット端末「NetWalker」にi.MXプロセッサを採用したことを発表した(写真4).第3に,デンソー,TRW Automotive社とともに「DSIコンソーシアム」を設立したことを発表した.

 NetWalkerは,電源を入れてから約3秒で起動し,バッテリ駆動時間が約10時間の携帯型インターネット端末として話題となっている.512Mバイトのメイン・メモリと4Gバイトのストレージ用フラッシュROMを搭載する.外形寸法は24.8mm×161.4mm×108.7mmと,電子辞書よりひと回り大きい.重量は約409g.OSにはLinux/Ubuntu 9.04を採用している.通信機能として,IEEE 802.11b/g準拠の無線LANを内蔵している.また,OpenOffice.orgのワープロ・ソフトウェア「Word Processor」と表計算ソフトウェア「Spreadsheet」,Webブラウザ「FireFox」,メーラ「Thunderbird」などがプリインストールされている.さらに今後,電子辞書や電子書籍などのコンテンツも用意される予定.



写真4 起動の速さや動画再生などの機能が紹介されたシャープの携帯型インターネット端末「NetWalker」

 


 DSIコンソーシアムは,自動車のエアバッグ向け通信バス規格であるDSI(Distributed Systems Interface)の普及推進団体である.今回の設立に合わせて,最新版のDSI 2.5の仕様を公開している.現在はエアバッグ向けの規格にとどまるが,将来的には自動車のアクティブ・セーフティ機能と連携して使用できるものを考えているという.

●LEGOブロックのように機能を取り替えられるマイコン開発環境

 展示エリアでは,フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンがモジュール式のマイクロコントローラ開発環境「Freescale Tower System」を紹介していた(写真5).本開発環境は,マイクロコントローラ・モジュール,ペリフェラル・モジュール,およびエレベータ・モジュールから構成されている.同社の8ビット,16ビット,および32ビットのマイクロコントローラに対応しており,マイクロコントローラ部分のモジュールを自由に取り替えることができる.ペリフェラル・モジュールとしては,シリアル・インターフェース,メモリ,グラフィカルLCD(Liquid Crystal Display),IEEE 802.11b(Wi-Fi)などが用意されている.また,ランタイム・ソフトウェアなども付属する.

 本開発ツールでは,オープン・ソース・ハードウェアと標準インターフェース仕様を採用している.サード・パーティによる新規モジュールの開発を促進していくという.


写真5 Freescale Tower Systemの外観

 

●車載電装ユニット用のCANフラッシュ・プログラマを展示

 横河ディジタルコンピュータは,車載電装機器用のCANフラッシュ・プログラマ「C"arNETIMPRESS」を展示した(写真6).本フラッシュ・プログラマは,プログラム・インターフェースとして,シリアル・インターフェースとCANインターフェースを搭載している.車載電装ユニットの生産,保守,評価などに利用できる.

 CANプロトコルには,同社独自のUCOP(Universal CAN Open Protocol for Flash Programming)を採用している.プログラミング環境は,同社のフラッシュ・マイコン用プログラマ「NET IMPRESSシリーズ」専用のCompactFlashカード内に保持される.スタンドアロン動作モードとPCリモート・コントロール動作モードの両方をサポートする.スタンドアロン動作モードではCompactFlashカード内のモジュールを切り替えることでプログラミング環境を変更でき,迅速にさまざまなプログラミング・パターンをテストできるという.


写真6 C"arNETIMPRESSの外観

●ARMプロセッサ上で動作するFlash再生ソフトのデモを紹介

 図研エルミックは,カナダBlueStreak社のFlash再生ソフトウェア「Mach Blue」のデモンストレーションを行った(写真7).アットマークテクノ製のi.MX31評価ボード「Armadillo-500 FX」上で動作させた.本ソフトウェアは,米国Adobe社が提供するFlash再生ソフトウェア(Adobe Flash Player)と互換性がある.携帯端末やセットトップ・ボックス(STB),携帯型メディア・プレーヤ,ATM端末,発券機などの画像再生やGUIに利用できる.例えばx86プロセッサ向けに作成したFlashコンテンツをそのまま流用できるので,コンテンツの作成コストを低減できるという.


写真7 Armadillo-500 FX上で動作するMach Blue

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