そこは知っておきたい「USB 3.0 の高速性を実現するしくみをプロトコル・アナライザで覗いてみる」

USB 3.0（SuperSpeed USB）は，従来の USB 2.0 とフレームワーク・レベルにおいて互換性を保つ一方で，転送速度を 10 倍にした通信規格です．ここでは USB 3.0 がどのようなしくみによって高速性を実現しているのかを，プロトコル・アナライザVoyager（ヴォイジャー）を使って概観します．

 
USB  3.0 は 2008 年 11月にその仕様が一般公開されましたが，公開後の月日がまだ浅いため，開発キット，ホスト・コントローラ，デバイス・コントローラなどは市場に投入されておらず，USB  3.0対応機器を入手するにはまだ時間がかかりそうです．

USB 3.0 と USB 2.0 は別々の構造を持ちながら互換性を保つ

　USB  3.0 のシステム構造を見ると，USB  3.0（図１の実線）と USB 2.0（図１の点線）はまったく独立に存在していることが分かります．また，ホスト側やデバイス側のコネクタは USB 2.0 と下位互換を維持するように設計されているため，レガシィ USB 2.0 の A コネクタや B コネクタを物理的に接続でき，電気的に導通することが可能です．USB  2.0 デバイスが動作することは保証されています．USB 2.0 よりも 10 倍高速なデータ転送速度を実現する USB 3.0 の特徴は以下のようになります．
●データ転送速度： 5Gbps!独立した送受信チャネル（Dual Simplex）
●フレームワーク・レベルにおいて 100 ％下位互換
●USB 2.0 と同じ USB デバイス・モデル
― PIPE モデル
― USB フレームワーク
―転送タイプ
●積極的なパワー・マネージメント・メカニズム
●拡張性

図 1 USB 3.0 のシステム構造

USB 3.0 仕様のコネクタは四つある

　ここでは 2.0 との互換性を中心に USB3.0 仕様のコネクタを下記に概観します（図２）．
1）Standard-A コネクタ［図2（a）］
　USB 2.0 Standard-A コネクタと同じ形状であり，完全互換性を確保しています．
2）Standard-B コネクタ［図2（b）］
　USB 2.0 Standard-B コネクタより若干大きめの外観デザインであり，互換性を確保しています．
3）Powered-B コネクタ［図2（c）］
　Standard-B コネクタと同じ形状だが，電力供給を行えるよう，電源とグラウンド・ピンが追加されています．据え置き型デバイスからの電源供給を目的としています．
4）Micro コネクタ
　小型デバイス向けに考案されたコネクタです．USB 2.0マイクロ・コネクタと下位互換性を確保しています． 

図 2 USB 3.0 仕様のコネクタ