180名超の技術者が"やる気"や"技術者育成"などについて活発に議論 ―― 第9回 組込みシステム技術に関するサマーワークショップ(SWEST9)

組み込みネット編集部

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レポート 2007年9月12日

 2007年8月30日~31日,遠鉄ホテルエンパイア(静岡県浜松市)にて,「第9回 組込みシステム技術に関するサマーワークショップ(SWEST9)」が開催された(写真1).本ワークショップは,組み込みシステム関連の研究を行っている大学の研究者や学生,企業の技術者などが集い,組み込みシステム技術の発展について考えるための議論や技術交流を行う場である.今年は運営体制を刷新し,若手の研究者や技術者が活発に議論しやすいようプログラム構成や配布物に工夫を凝らしたという.今年の参加者は182名(うち105名が初参加)と,これまでで最も多かった.

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[写真1] 180余名が集ったSWEST9
夕食を兼ねた懇親会場は人で埋まっていた.

●エンジニア人生,楽しんでいますか?

 基調講演として,チェンジビジョンの平鍋 健児氏が「現場力を高める見える化手法 プロジェクトファシリテーション ~モチベーションアップのツールと場づくり~」と題した講演を行った(写真2).組み込みシステム開発は,不明確かつ不安定な要求に合わせながらシステムを作り上げていくことが多い.そのようなプロジェクトを成功させるためには,システムの構造や作業項目,進捗状況,異常発生などを「見える化」し,できるだけ最新の情報を開発プロジェクトのメンバや顧客などと共有することが有益だという.また,「見える化」の実践例として,「タスクかんばん」や「バーンダウン・チャート」,「朝会」,「あんどん」,「色つきUML」などの例を示した.そして,パソコン上のデータとして共有するより,物理的な"物"があると行動喚起力が格段に違うこと,いつもと違うことをすると現場に活気が出てくることなどを説明した.

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[写真2] 講演を行うチェンジビジョンの平鍋 健児氏

 プロジェクトを成功させることと,エンジニアがより良い人生の時間を過ごすことの両方を実現するために平鍋氏が提唱しているのが,「プロジェクト・ファシリテーション」である.チーム・メンバのコミュニケーションを促進してプロジェクトを円滑に進め,チーム・メンバがやりがいや笑顔,信頼関係を持ち続けられることを狙いとする.同氏は,「にこにこカレンダーなど,ばかばかしい,と思うでしょう.でも,皆さん,人生をもっと楽しむために工夫することを忘れていませんか?」と聴講者に問いかけた.

 導入にあたっては,簡単なものから楽しんでやってみること,現場の若手エンジニアを巻き込んで一緒にやること,自分たちに合わせて工夫することなどを勧めていた.

●モチベーションが「下がる」行動とは?

 基調講演の内容を受け,技術者のモチベーションを向上させる方法についてのパネル・ディスカッションが行われた(写真3).名古屋大学の高田 広章氏,富士通の吉田 裕司氏,ヴィッツの服部 博行氏が登壇し,実際に行っているモチベーション向上策を披露した.また,モチベーションを無くさせる方法については,「情報を遮断する」,「結果だけを伝え,決定の理由を言わない」,「目的を教えずに作業させる」,「相手を評価しない」,「何も発言させない」,「頭ごなしに否定する」,「発言に対して陰で笑う」などの行動が挙がり,参加意識を持てないとモチベーションが下がるということで意見が一致した.

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[写真3] パネル・ディスカッションの様子
左から,司会の山崎 進氏(北九州産業学術推進機構 カー・エレクトロニクスセンター),パネリストの服部 博行氏(ヴィッツ),パネリストの吉田 裕司氏(富士通).

●まじめな議論で交流を深める

 夕食を兼ねた懇親会の後,20:30~22:30に三つの分科会が開催された.参加者が上司自慢をしながら"素敵な上司"の法則を見つける「素敵な上司の素敵なリーダーシップ」,ブラックボックス・テストのミニチュア版を実施しながらチーム力の影響を体験する「ワークショップによる開発プロセスの振り返り」,「なぜ」を繰り返しながら不具合の真因を見つける「実践! なぜなぜ分析」である(写真4).気軽な雰囲気の中で参加者たちは自由に意見を交わしていた.また,その後は朝まで使用可能な宴会場が用意され,有志が自由に集っていた.

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[写真4] 参加者が「なぜなぜ分析」を行っているところ
飲み物も供給されて気軽な雰囲気なのだが,議論の内容はまじめなものである.

●検証やテスト,工学部離れに関するセッションを実施

 そのほか,ソフトウェアやハードウェアの検証についてのチュートリアル&分科会,組み込み機器の仕様書を基にマインドマップなどの描画方法を用いてテストの戦略を立てるチュートリアル&分科会,少子化と工学部離れの対策を考えるブレーン・ストーミングなど,さまざまなセッションが行われた(写真5)

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[写真5] チュートリアル「テストの戦略を立ててみるテスト」の様子
左から,池田 暁氏(日立情報通信エンジニアリング),森 孝夫氏(三栄ハイテックス),西 康晴氏(電気通信大学).

 また,ポスタ・デモ発表では,大学や企業の研究者などが研究成果を展示した(写真6).モデル検査やソフトウェア・プロダクト・ライン,組み込みシステム開発の外部環境分析,組み込みソフトウェア開発の課題の分析,模型ロケット開発プロジェクト「Hamana-4」に関連するレポートなど,さまざまな発表が並んでいた.

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[写真6] ポスタ発表の会場

●Hamana-4を題材とした分科会が複数開催される

 Hamana-4プロジェクトのデモンストレーション(模型ロケットの打ち上げ)は2日目の早朝に予定されていたが,雨天のために中止となった.同プロジェクトの活動についてはヴィッツの大西 秀一氏らが2日目の分科会「組込みシステム開発をプロジェクトベースで教育する:Hamana-4の取り組み」で発表した(写真7).参加メンバの教育成果として,特にスケジュール管理などに関するスキルがめざましく伸びていたことをアピールした.また,Hamana-4プロジェクトに参加した新人技術者主体のチームのソース・コードを解析し,構造について議論する分科会「分解 Theハマナ4」も行われた(写真8)

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[写真7] 分科会「組込みシステム開発をプロジェクトベースで教育する:Hamana-4の取り組み」の様子
Hamana-4実行委員長である大西 秀一氏(ヴィッツ)がプロジェクトの全体像を解説した.その後,参加チームがそれぞれの成果を発表した.

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[写真8] 分科会「分解 Theハマナ4」の様子
写真左が酒井 郁子氏(ビースラッシュ),写真右が二上 貴夫氏(東陽テクニカ).ソース・コード解析の後,そのチームが悩んでいる不具合の原因について参加者ぐるみで話し合った.

関連リンク
・組み込みネット レポート:輪ゴムで的を射る"やぶさめ"ライン・トレーサを製作(SSEST3)
・組み込みネット 写真館:Hamana-4 最終打ち上げ
・組み込めないネット 写真館:Hamana-4 試射(第3回公式試射)

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