「分かりやすさ」を追求した開発環境が続々登場 ―― 第10回 組込みシステム開発技術展(ESEC)

組み込みネット編集部

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レポート 2007年6月 5日

 2007年5月16日~18日,東京ビッグサイト(東京都江東区)にて,組み込みシステムに関する展示会「第10回 組込みシステム開発技術展(ESEC)」が開催された(写真1).UMLのステート・マシン図を入力に使えるディジタルI/O制御ユニットや,直感的に分かりやすいボタンを備えた組み込みシステムのテスト履歴を記録する装置などが展示された.

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[写真1] 展示会の受け付けの様子
東京ビッグサイトの東4~6ホールを使って開催された.

●UMLのステート・マシン図で制御できるディジタルI/O制御ユニットを展示

 久米電気は,UML 2.0で制御を記述できるディジタルI/O制御ユニット「GIONODE」を展示した.制御プログラムは,設定用パソコンの専用ブラウザからUML 2.0のステート・マシン図(状態遷移図)として書き込むことにより実行できる.

 本機は直流5V~48Vに自動追従する絶縁入力を16点,定格48V,1Aを出力できる絶縁出力を16点持つ.これらは4点ごとにコモン線が共通であり,グループ単位で極性の混在が可能である.さらに,最大5Vまでの非絶縁アナログ入力を4点,およびWave音声出力用オーディオ・ライン出力などを持つ.外形寸法は160mm×100mm×40mm.DINレールまたは直付けに対応する.

 Ethernet(100BaseTX)や5チャネルのシリアルI/Oを備えている.TCP/IP接続と独自の二重化ループ・ネットワーク構成により,複数のコントロール・ユニットを接続してユニット同士を連携動作させることが可能.

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[写真2] ディジタルI/O制御ユニット「GIONODE」
UML 2.0のステート・マシン図(状態遷移図)の形式で制御プログラムを入力できる.

●開発ボード上でソフトウェア・テスト履歴を記録

 横河ディジタルコンピュータは,開発評価ボード上でソフトウェアをテストしたときの情報(関数の戻り値など)をμs単位で測定・記録できる装置「TRQer」を展示した(写真3).2007年第2四半期に出荷を開始する予定.

 単純な操作で必要なデータを取得できるように工夫されている.具体的には,関数の実行履歴や引き数,戻り値,キー操作情報,通信プロトコル・データ,デバッグ用のPrint関数などの項目から必要なものを選んで取得できる.装置の筐体には「●(記録)」ボタンや「■(停止)」ボタンが付いており,ユーザが直接操作できるようになっている.

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[写真3] テストの実行履歴の測定・記録装置「TRQer」
インサーキット・エミュレータ(ICE)を「難しい」と感じる技術者でも,手軽に操作できることをねらって開発したという.

●ぼやけやちらつきを数値として分析できるソフトウェア

 ニコンシステムは,映像の画質を「ブロックのゆがみ」,「ノイズ」,「ぼやけ」,「ちらつき」などの観点から分析するソフトウェアを展示した(写真4).複数の映像を同期再生しながら,基となる映像と比較した差分(画像の劣化具合)を視覚的に表示する.また,ブロックのゆがみ,エッジのノイズ,ぼやけ,ちらつきなどを数値として示す.2007年内に開発が完了する予定.

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[写真4] 映像の画質を分析するソフトウェア(参考出品)
画質の劣化具合を,感覚(視覚)と数値の両面で比較する.

●AUTOSAR対応のコンフィグレーション・ツール

 フィンランドElektrobit社は,AUTOSAR(Automotive Open System Architecture) 2.0に対応したコンフィグレーション・ツール「tresos ECU」を展示した(写真5).本ツールを使って開発対象に応じたパラメータ(例えば,ある命令処理を割り込みとポーリングのいずれで処理するのか,など)を設定すれば,AUTOSAR 2.0に準拠したOSやミドルウェアのソース・コードを生成できる.本ツールは,AUTOSARで定義されているすべてのモジュールを含んでいる.2007年7月に発売予定.

 なお,本ツールの前身にあたるコンフィグレーション・ツールで生成したAUTOSAR仕様準拠のOSやプロトコル・スタックは,2006年5月に量産車(Volkswagen製)の開発において採用された実績があるという.

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[写真5] AUTOSAR 2.0に対応したコンフィグレーション・ツール「tresos ECU」の設定画面
コンフィグレーション・ツール上で各種パラメータを設定する.

●iPodと接続して音楽を再生するカー・オーディオ用LSI

 NECエレクトロニクスは,カー・オーディオ用LSI「μPD63901」のデモンストレーションを行った(写真6).USB経由でiPodと接続すれば,iPodに記録した音楽を再生できる.本LSIはUSBホスト・コントローラを内蔵している.また,MP3やWindows Media Audio(WMA)のデコード・ソフトウェアもあらかじめ搭載されている.すでにサンプル出荷を開始している.量産開始は2007年8月からの予定.

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[写真6] カー・オーディオ用LSI「μPD63901」のデモンストレーション
USB経由でiPodの音楽データを再生できるLSIは業界で初めてだという.

●塩尻市が組み込みソフトウェア産業集積をアピール

 塩尻インキュベーションプラザのブースでは,同施設に入居する組み込みシステム関連企業などが展示を行った(写真7).同施設は,組み込みソフトウェア技術者の人材育成,および起業支援と産業の集積を目的として2007年から運営されている.エプソンアヴァシスと信州大学,長野県塩尻市の産学官が連携して支援している.入居企業間の交流や施設内で行われる講義を通して,技術力向上と製品開発を推進しているという.

 入居しているのは,アールネットコミュニケーション,インターブリッジ,コンピュータ・ハイテック,シーデックス,システムクリエイト,信越ソフトウェアエンジニアリング,ティー・アール・エフ・エンジニアリング,日本マイクロリンク,プランナーズランド,マイクロテクノ,リニア・サーキットの11社と2名の個人.

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[写真7] 塩尻インキュベーションプラザのブース
同施設は,新しい事業展開や技術開発を目指す中小企業や起業家を対象に,格安で施設を提供する.なお,2007年6月の時点では,入居施設は満室となっている.


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