安全規格を理解して,自然に優しい機器設計を心がけよう ―― 『新版 UL規格の基礎知識』

高木 清

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書評 2004年3月20日

安全規格を理解して,自然に優しい機器設計を心がけよう

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ユーエル エーペックス 編
日本規格協会 刊
ISBN:4-542-40331-9
A5判
168ページ
1,800円(税別)
2003年12月(新版第1版)



 1894年に設立されたUnderwriters Electrical Bureauは,火災保険業者の電気局として安全に関する証明書を発行する機関だった.その後,1901年にUL (Underwriters Laboratories Inc.)と改称し,さらに火災保険業者会議(The National Board of Fire Underwriters)から支援を受けることになった.このような経過で,ULは多くの機器についての安全に関する規格を制定し,また,その認証業務を行う機関として発展していった.UL規格の対象は,電子・電気機器にかぎらず,非常に広範な製品を包含している.

 そのULの日本法人である(株)ユーエル エーペックスは,2003年12月に「新版UL規格の基礎知識」を日本規格協会より発行した.UL認証は,米国を対象に始められたものである.しかし,安全規格というものは,国や地域によって異なるため,現在ではそれぞれの事情に合わせた認証業務を行っている.本書はそのサービス内容全般を紹介している.例えば,ULの申請業務やフォローアップ・サービスなどについて解説している.UL規格は,安全については先行した規定を策定しており,これらのいくつかはIEC( International Electrotechnical Commission)規格や,米国,日本をはじめとする多くの国が国家規格として採用している.

 本書の付録のUL規格一覧を見ると,その数は多く,認証する対象機器は非常に広範で複雑なものとなっている.申請を行うにあたり,どのような規格を適用するかについて迷うことが多いが,これを補完するためにQ&Aの項を設け,詳細に解説している.用語解説が付いているが,これは申請する際の手続きなどの業務を容易にしてくれる.また,規格の解説書としては珍しく,内容についての理解を深めるために,随所にコラムを挿入しており,さらに写真やイラストを用いて視覚的に理解しやすいように配慮されている.

 安全規格の内容は国や地域によって異なる.機器メーカは出荷する地域を十分に吟味し,すべての項目についてUL規格が必要と指定することは避け,実情に合わせて認証を受けるべきである.また,安全のレベルも必要なもののみとすることが肝要である.いたずらに厳しく規定することは製造の負担を多くし,しかも環境に優しくない製品を作ることになる.

 このようなことを十分に認識しながらUL規格を運用することで,安全な機器を作ることができる.本書はそれを実現するうえで,非常に参考となるものである.


高木 清
高木技術士事務所

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