Tech Village|編集部ブログ

10/6(土)-10/7(日)開催! 実習で学ぶ「モータ&インバータの原理と組み立ての実際」

お知らせ 2012年5月 1日

 

 2012年7月からCQ出版社 エレクトロニクス・セミナで「つくるEV技術シリーズ」が始まります.

 EVとは電気自動車のことですが,自動車メーカが販売するEVを取り上げるのではありません.ここでいうEVとは,マイクロEV,コンバージョンEV,EVエコラン,ソーラーカー,エコノムーブ等々,皆さんで「自作するEV」を中心に考えています.セミナでは,いわばプリミティブなEVを「つくる技術」に焦点を合わせます.

 補足説明:なぜ今,EV技術なのか?

 EV開発には,モータ(ブレシレス・モータなど)やバッテリ(鉛電池,リチウムイオン電池,電気二重層キャパシタなど),パワー・デバイス(MOSFET,IGBT,SiCなど)といった電子部品技術,制御系や通信系,パワー系の回路技術&ソフト技術など,多種多様な要素技術が必要です.それらの要素技術が相互に関連しながらEVが構成されています.本セミナでは,それらの個々の要素技術や要素技術間の接続技術を取り上げていきます.

 補足説明:EVで使われている技術

 これらの個々の要素技術の応用は,実はEVだけとは限りません.いろいろな分野で使われる技術です.個々のセミナの内容は,EVをつくろうとされている方だけでなく,より多くの分野の技術者の方々に参考になるかと思います.

 また,自作EVとして最低限必要な「車」としてのメカニズムの基礎も取り上げます.こうしたEVづくりが,エレクトロニクスの経験のない自動車好きの方にも,自動車のメカに詳しくないエレクトロニクス系のものづくりの方にも,それぞれに手の届くおもしろい技術であることを実感していただけると考えています.

 補足説明:エンジン車もEV化が進む??

 

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開催概要

実習・モータ&インバータの原理と組み立ての実際
~ブラシレス・モータを手巻き/インバータをはんだ付け/そして組み立てて動かす!~
[土曜&日曜2日コース,教材キット付き]

開催日時
第1回  2012年6月30日(土),7月1日(日)  <満席>
      10:00am-17:00pm (終了時間延長の可能性があります)

第2回  2012年8月30日(木),8月31日(金)  <満席>
      10:00am-17:00pm (終了時間延長の可能性があります)

第3回  2012年10月6日(土),10月7日(日)
      10:00am-17:00pm (終了時間延長の可能性があります)

講師

内山 英和 氏
【(株)ミツバ SCR+プロジェクト 主任研究員】

高橋 道夫 氏
【(株)ミツバ SCR+プロジェクト 研究員】

受講料:98,000円(2日間,教材キット代を含む)

定員:10名

会場:東京・巣鴨,CQ出版社セミナ・ルーム (地図
    東京都豊島区巣鴨1-14-2 炭七ビル1階

 

 EVのモータは,モータに電池を繋いで電圧可変させればおしまい,というほど単純ではありません.効率よく反応速度を上げて制御するには,それ相応の技術が必要です.その制御方法は,どの種類のモータを使うかにもよりますが多種多様です.

 本セミナでは,EVでもっとよく使われている「ブラシレス・モータ(永久磁石同期モータ)」とその制御用「インバータ回路」を受講者の方々に実際に組み立て製作していただき,モータの構造,インバータ制御(ここではPWM制御)の原理を体感的に理解していただこうという企画です.つくったモータとインバータは持ち帰っていただきます.

 

《1日目》 「インバータ回路の製作」...基板ではんだ付け!

 1日目で作ったブレシレス・モータを回すには,じつは直流電力から三相の交流電力に変換してモータに入力しなければなりません.この直流から交流への変換部をインバータと呼びます.モータの回転数の制御は,このインバータの制御で行います.そのインバータ回路基板に,パワーMOSデバイスやIC,抵抗,コンデンサなどを載せはんだ付けしていきます.なお,インバータ制御はドーターボードにあるマイコンV850が担います.その制御ソフトを準備して,実際に回転制御ができることを確認していただきます.

《2日目》 「ブラシレス・モータの製作」...コイルを巻こう!

 初日は,モータの種類・構造・動作原理などの基礎解説のあと,原理との対応がしやすい学習用モータ・キットでコイルを手巻きしながら組み立てていきます.普段,モータの中身を見ることはできないと思いますが,ここでは,ゼロから組み立てていただくことにより「永久磁石同期モータ」の構造がとてもよくわかります.コイルの巻き方によって,モータの性能は変わります.セミナ終了後に,いちど巻いたものを解(ほど)き,より緻密に(あるいは緩く)巻き直して,性能がどう変わるのか,あまり変わらないのかを確かめることもできます.

 

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「つくるEV技術シリーズ」この後の予定

永久磁石同期モータとその駆動方法:モータ/インバータ基礎編(仮)
開催日
:7月28日(土)
講師:近藤 圭一郎 氏(千葉大学大学院,准教授)

永久磁石同期モータとその駆動方法:ベクトル制御編(仮)
開催日:8月11日(土)
講師:近藤 圭一郎 氏(千葉大学大学院,准教授)

ボルトオン手法でコンバージョンEVを組み立て実習!(仮)
開催日:9月16日(日)
講師:古川 治 氏(オズ・コーポレーション代表取締役)

小型EV車体の設計&製作ノウハウ(仮)
開催日:10月14日(日)
講師:池上 敦哉 氏(ゼロtoダーウィン・プロジェクト)

 


 

ブレシレス・モータ&インバータ・キットを販売

 CQ出版では,本セミナの開催に合わせて,ここで使用する「学習用ブレシレス・モータ&インバータ・キット」をCQ出版WebShopで販売します.このキットには,

  • モータ本体キット(アウタ・ロータ型,φ115.6×102.7mm,2.4kg)
  • インバータ回路基板キット(MOSFET×6)
  • V850マイコン基板(完成品)
  • V850開発環境(デバッガ&ライタ)Minicube2 ルネサス・エレクトロニクス製

が含まれます.本製品は,(株)ミツバ SCR+プロジェクトの開発協力を得ております.

 本モータ・キットは,あくまで学習用に特化したモータといえます.

発売価格:未定
発売予定日:2012年7月初旬

 


 

補足説明 

●なぜ今,EV技術なのか?

 EV(Electric Vehicle)技術を注目する理由,それはEV技術がエレクトロニクス/マイコン技術/メカニズムを使う「総合技術」だからです.

 いまや,エレクトロニクス/マイコン技術は,あらゆる産業界のインフラ技術といえるようになりました.その象徴としてEVがあると思います.

 いまや乗用車(ガソリン・エンジン車)にも50個から100個超のマイコンが搭載されています.もちろん,それぞれのマイコンにはソフトが搭載されているわけです.

 そしてEVになると,エンジンが駆動モータに,ガソリン・タンクがバッテリに置き換わります.もちろん,駆動モータ用のコントローラが用意されます.それは弱電(5V以下)の世界ではなく,数百V/数十A(アンペア)の電気を扱うパワー・エレクトロニクスの世界です.しかも,このパワー・エレクトロニクスのモータ制御を厳密にかつ高効率にするためには,高速演算処理が必要となりマイコン技術も不可欠です.

 自動車が今後EVに進化すると,その開発にますますエレクトロニクス/マイコン技術が必要になってくるでしょう.自動車会社1社で開発するのではなく,多くのエレクトロニクス/マイコン/制御のエキスパート技術者との連携が必要となってくるでしょう.また,この分野での技術革新が,他のいろいろな分野の技術革新の先導役になるのではないかと考えます.

 

●EVで使われている技術

 EVは,物品の配達・営業車や個人の買い物などの街乗り用に普及するという予測があります.日本では不足している電力を使いますが,熱エネルギ損失の多いエンジン車よりEVはエコであると考えられているからです.(何より石油を直接使わない)

 EVの特徴は本当にエコなのでしょうか? エンジンをモータに,ガソリンを電気に置き換えただけでエコになるものなのでしょうか? エンジンとモータは,性質が大きく異なります.エンジンでは回転数に比例してトルクは増えますが,モータではおおよそ電流に比例します.一般にEVでは,低速時でも大きなトルクを得ることができるので,立ち上がりの加速性能がいいという特徴があります.トルク応答速度も,エンジンよりモータが2桁程度速いので,多様なアクティブ制御が可能となります.細かな制御を行うことで,現在よりさらにエネルギー効率のよいモータ制御する車が開発されるでしょう.

 ただし,モータの種類はたくさんあり,それぞれ構造・動作原理が異なります.ACモータ/DCモータ,ブラシ付き/ブラシなし,同期モータ/非同期モータ...,当然のことながらそれぞれ制御方法は異なります.

 また,こうした高効率で高速な制御をするためには,モータのコントローラが重要な役割をもちます.この制御方法はいろいろあります.ターボ制御,インバータ制御(PWM制御,VVVF制御...),ベクトル制御...いろいろな制御手法がマイコンの高機能化で実現できるようになりました.

 しかも,モータは,発電機としても機能するので,EVではブレーキを掛けるときに発電機となります.ブレーキをかけるときに,発電・充電することができるのです.

 電池も重要な要素技術です.現在のEVが効果なのは搭載する電池のコストがとても大きいからです.鉛電池からニッケル水素電池,そしてリチウム・イオン電池に主流が移ってきています.電池二重層キャパシタを用いる車も出てきています.これからも新しい電池に移る可能性は少なくありません.

 

●エンジン車もEV化が進む??

 じつはガソリンで動くエンジン車もEV化が進行しています.「なぜEV技術なのか?」の項で,エンジン車にもマイコンがたくさん搭載されていると述べました.じつは,モータも同様にたくさん搭載されています.どれくらいの数があるかご存知でしょうか.中型以上の乗用車1台に50個から100個超のモータが搭載されているのです.その数は増加傾向にあり,2015年には乗用車1台当たり200個を超える車種も出てくるという予測もあります.

 どこに使われているか...ドア・ウィンドウ,バックミラー,エアコン,ワイパー...だけではありません.たとえば,エンジン周辺で多くのバルブがモータ・ポンプに置き換えられているほか,燃料供給,ウォータ供給,オイル供給の各ポンプ,ステアリング,ラジエター,シート調整,ドアロック,ABS,VSC,EPS,AFS....当然のことながら,個々のモータ制御にマイコンを使うことが多いので,マイコンの数も増えているわけです.こうして自動車は排気ガスや燃費を大幅に改善できたのです.いつのまにか,車はEV化/ロボット化していたのですね.

 EVの要素技術は,世界の自動車市場の激烈なEV開発のなかで進化し,こんどはそれらの要素技術が逆にEV(自動車)以外の分野でいろいろと応用されていくことは論を俟たないことです.たとえばロボットは,要素技術から見るとEVと近いです.

 「つくるEV技術シリーズ」が,手作りEVに挑戦しようという方,パワー・エレクトロニクスやロボット開発に挑戦しようという方,ものづくりを楽しみたい方,のためにも役立つセミナとなるよう,今後ラインアップを準備しようとしています.

  

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