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今回のお茶受け:来たれ,ツェッペリンNT号
【茨城県土浦市】
<<コンナトコロニ組み込み技術:第33回>>

組み込めないネット編集部

 とある晴れた日,わたしは知人から,こんなニュースを聞きました.「こんどの土曜日に,飛行船のツェッペリンNT号が土浦にやってくるんだって」.飛行船って,キドカラーの宣伝とか,MDDロボット・チャレンジで飛ばしていた,あの飛行船? そう言えば少し前に,愛・地球博(愛知万博)の宣伝用に購入した飛行船が神戸港に入港したとかニュースで言ってたっけ….とりあえず,行かないわけにはまいりません.

 おまけに土浦市では,飛行船の歓迎式典とともに,「土浦カレーフェスティバル」なるものも開催するようです.土浦=「カレーの街」?! その謎も,ぜひ解き明かしてこようではありませんか.


●飛行船の街にしてカレーの街,土浦

 そもそもの謎の発端は「ツェッペリンNT号って何?」というところから始まるでしょう.ツェッペリン(Zeppelin)とはドイツの伯爵の名まえであり,また彼が1908年に創設した飛行船製造会社の名まえでもあります.この会社が製造した飛行船にはLZ(Luftschiff Zeppelin;飛行船ツェッペリン)という建造番号がつけられていたので,「ツェッペリン」が飛行船の代名詞であると言っても過言ではないでしょう.

 1920〜1930年代は飛行船が空の主役であり,「空飛ぶ客船」としてもてはやされていました.しかし,飛行機の技術発展や,1937年の大型飛行船「ヒンデンブルク号(LZ-129号)」の炎上事故,第2次世界大戦の影響などにより,飛行船の建造は1940年に中止されてしまいました.

 そして1993年.飛行船をよみがえらせようと,ドイツZeppelin Luftschifftechnik社が創設され,新技術を取り込んだ飛行船が建造されました.これが,ツェッペリンNT号です(NTはnew technologyの略...Windows NTの「NT」と同じだ...).これまでに3機製造されています.そのうちの1機を,日本郵船の子会社である日本飛行船が2004年に購入し,日本国内で愛知万博の広告宣伝飛行に使うことになりました(図1).購入価格は,本体・付属品・訓練費用などを含め,およそ13億円だったそうです.


[図1] ツェッペリンNT号(日本飛行船のWebサイトより)
全長75m,搭載荷重1,900kg,最高飛行速度125km/時.乗員・乗客数は14名(うち2名が乗員).航続可能距離900km.上昇限度2,600m.最大航続時間は24時間.


 ツェッペリンNT号は,2004年6月の引き渡し後,1ヵ月間ヨーロッパ各地を巡航し,その後,ドイツから日本に海上輸送されました.日本(神戸港)には2005年1月上旬に到着し,いったん愛知万博の会場上空などを飛んだ後,埼玉県の桶川(日本飛行船の運行基地がある)に移動しました.今回の土浦訪問(2005年2月5〜6日)は,日本で初めての一般公開の場となるもようです.

 でも,なぜ土浦なのでしょう? それは,76年前に世界一周旅行を行った「ツェッペリン伯(Graf Zepperin)号(LZ-127号)」が立ち寄った場所だからのようです(写真1,写真2).ツェッペリン伯号は1929(昭和4)年8月に米国レイクハーストを出発し,ドイツのフリードリヒスハーフェン,日本の土浦(詳しくは霞ヶ浦海軍航空隊飛行場,現在の陸上自衛隊霞ヶ浦駐屯地),米国のロサンゼルスの3ヵ所を経由して,約1ヵ月後に出発地に到着し,世界一周を成し遂げました.


[写真1] ツェッペリン伯号が土浦を訪問した際の記録写真
土浦が寄港地に選ばれた理由は,第1次世界大戦で日本が戦利品としてドイツから持ってきた巨大な飛行船格納庫があったこと,湖畔で風などの気象条件が良いこと,首都である東京に近いことなどによるものだそうだ.



[写真2] ツェッペリン伯号のゴンドラ部分の模型
ツェッペリン伯号の全長は236.6m(ツェッペリンNT号の3倍以上!).例えばドイツのフリードリッヒスハーフェンから土浦までの11,000kmを,99時間40分かけて無寄港で飛行している.このときの乗員は65名だった.


 ではなぜ,「土浦=カレーの街」なのでしょう? それは,ツェッペリン伯号が土浦を訪問した際に,飛行船の乗組員たちに地元の右籾産のジャガイモを入れたカレーをふるまったからだそうです.

 そして現在,土浦市は「飛行船の街」をうたい文句に町おこしを行っているようです.三菱総合研究所は,愛知万博の宣伝活動を終了した後のツェッペリンNT号を土浦に誘致し,都内への観光遊覧事業や飛行船製造産業を育成する「エアシップタウン土浦構想」を提案しており,土浦市は前向きに検討しているのだそうです.


●論より証拠,土浦で待て!

 うんちくはともかく,現場で実物を見なければ話は始まりません.土浦市役所に確認したところ,飛行船は当日の朝に桶川を出発し,つくば市などを経由しながら,お昼までには土浦に到着する予定,とのことです.飛来する瞬間を見たいので,午前のうちに,会場である水郷公園にやってきました(写真3)


[写真3] 2月5日に開催される歓迎イベントの会場(水郷公園)
なんだか,「土浦カレーフェスティバル」のほうが「ツェッペリンNT」より目立っているような気が…?


 公園内にはステージのほか,茨城県のPRコーナ,愛知万博の宣伝コーナ,高校のモザイク作品展示コーナなどがありました(写真4)


[写真4] こどもたちとふれあうモリゾーとキッコロの着ぐるみ
モリゾーの着ぐるみはちょっぴり不気味…? キッコロがこども,モリゾーはなんでも知っているおじいさん,というキャラクタ設定だそうだ.


 中央にしつらえたステージでは,落語家のかたが司会を務め,今回の飛行船にゆかりのある人があれこれ出てきては話をしています(写真5).肝心の飛行船はと言えば,上空が強風のため,まだ桶川から飛び立っていないとのこと.まあ,まっすぐ飛んでくれば1時間ほどで到着するそうなので,まだ時間には余裕があります.


[写真5] ステージ
羽織袴(はおりはかま)の落語家が司会を務めるわけは,76年前の昭和4年をイメージしてのこと…?



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