今月のお茶受け:もっとラクをしよう
【国際文具・紙製品展】
<<コンナトコロニ組み込み技術:第14回>>
ある夏のことです.連日の組み込み関連の取材に疲れたわたしは,なるべく組み込み製品が見あたらなさそうな展示会に足を運ぶことにしました.今回のターゲットは国際文具・紙製品展です.
ちらりとガイドブックをのぞいた感触から言っても,筆記具やカード類などが多く,組み込み関連の製品はほとんどなさそうです.ふふふ.壁が高ければ高いほど乗り越えたときの喜びは大きいのです…(というか,ほとんど自虐的 ;;).
●環境に優しい「CD用シュレッダ」
…などと言いつつも,さっそく良いものを見つけました(写真1).東京ニーズが出展した,不要CD処理機「ディスクスクラップ」です.CD形状の記録ディスク(DVDを含む)にスクラッチ加工を施し,データを判読不可能にします.
[写真1] ディスクスクラップ
左側に貼り付けてあるCDが使用前,右側に貼り付けてあるCDが使用後です.なんだかきれいでしょ?
ふだんCDを廃棄するときは表面に傷をつけたり手で割ったりしますが,手で割るとケガをしそうだし,この手で表面に傷をつけるのに何となくためらいがあったり(キーッという音がしそう)して,迷ったあげくそっと隠して捨ててしまったりしています.その点この機械なら,上部の投入口から入れるだけで,あっという間に処理してくれます.おまけに,スクラッチ加工した表面もきれいに見えます.
ディスクを投入すればセンサで感知し,自動的に稼動するとのこと.さらに同社は,処理済みディスクの回収・リサイクルも手がけています(CDに含まれるポリカーボネート樹脂や金属は再生使用できるという).同社はマウスやテンキーについても,使用後に回収して素材を再利用するしくみを構築しています.
●特徴は「特許に触れていない」こと?!
次に目についたのは,「パテント・フリー」と大きく書かれた張り紙でした.中国マカオ特別行政区のUnion Technology International社が行ったインクジェット・プリンタの連続印刷のデモンストレーションです(写真2).通常のインク・カートリッジより数倍大きいサイズのカートリッジを,プリンタに外付けして印刷しています.
[写真2] インクジェット・プリンタによる連続印刷のデモンストレーション
「午前10:00より印刷中」のキャッチ・コピーが印象的でした.わたしがここにたどり着いたのは午後3時くらいでしたから….実際には,印刷は「常時」ではなく「随時」行っているようでした.
それにしても,「パテント・フリー」を大きく掲げるとはどういうことなのでしょう? 説明員のかたに聞くと,「これを使う人は特許を気にせずに使えます」という答えが返ってきます.それはそうなのでしょうが….
同社の汎用インクジェット・カートリッジ「86T」についてのパンフレットを読むと,紙面のほとんどを割いて,同社のインクジェット・カートリッジが日本のプリンタ・メーカ(セイコーエプソンやキヤノン)が持つ特許権を侵害していない(可能性が高いと思われる)ことを説明しています.
インクジェット・プリンタのカートリッジは一般的にインクの流量をスポンジ材で制御しますが,この製品は一方通行の弁によってインク流量を制御します.そのため,インクをむだなく使用できます.また,日本のプリンタ・メーカが起こした特許侵害の訴訟のうちのいくつかはスポンジ材に関するものなのですが,同社の製品はスポンジ材を使用していないので,これらについては提訴される恐れがありません.…というようなことが,同社の「パテント・フリー」宣言の根拠となっています.また,同社は本製品の技術について特許を申請中だとのことです.
…むー.特許って,むずかしいですね.
|