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中国の組み込みソフト業界はまだ幼年期,でも成長は速い
――Open SESSAME Workshop 2003レポート(1)

 

組み込みネット編集部



  2003年1月10日,組込みソフトウェア管理者・技術者育成研究会(Society of Embedded Software Skill Acquisition for Managers and Engineers;通称SESSAME)は,東京都港区の日本規格協会において,組み込み技術に関する研究会「Open SESSAME Workshop 2003」を開催した.基調講演として,上海のソフトウェア・プロセス改善ネットワーク(Software Process Improvement Network:SPIN)のリーダである居 徳華(Dehua Ju)氏が,「中国の組込みソフトウェア産業の競争優位要因」と題した講演を行った.「中国のソフトウェア産業はまだ幼年期.日本からいろいろ学びたい」と話す一方で,「生まれたばかりだが,成長のスピードは速い」と自信ものぞかせた.


[写真1] 基調講演を行う居 徳華氏
居 徳華(Dehua Ju)氏は,上海のソフトウェア・プロセス改善ネットワーク(Software Process Improvement Network:SPIN)の中心的存在である.


●中国政府に支えられたソフトウェア産業育成

 居氏によると,中国のソフトウェア産業にはいくつものけん引材料があるという.すなわち,巨大な市場を抱える一方で2けたの経済成長が続いていること,政府が率先してインフラストラクチャなどのIT化事業を進めていること,ソフトウェア産業に従事する技術者が多いこと,そして外国からの投資が集まりやすくなっていることなどである.例えば,フィンランドのNokia社や米国Motorola社,米国Microsoft社をはじめとするIT関連各社が,続々と中国に現地法人を設立したり,投資を行ったりしている.

 一方,問題点としては,違法なソフトウェア複製が横行していること,中小企業への投資が少ないことが挙げられる.さらに,従業員50人未満,創業5年未満という規模の小さい企業が全体の65%以上を占めている.また,生産力や品質も現時点では十分なものとは言いがたいという.

 それでも,ソフトウェア開発企業の協業が盛んに行われてきている.例えば,上海で設立されたSOBUS(the Software Offshore Business Union of Shanghai)には,47社のソフトウェア関連企業が参加している.また,ISO9000やCMM(Capability Maturity Model;能力成熟度モデル)への関心も高い.政府も,CMMを取得した企業への資金援助などを行っている.

 日本との関係については,協力し合える点があるのではないかと述べた.例えば,アジア地域(日本,中国,韓国,台湾,香港,シンガポールなど)に包括的な組み込みシステム開発の市場を形成することを提案した.

 居氏は,中国・上海の華東理工大学の教授としてソフトウェア工学の教鞭を取る一方で,ASTI Shanghai米国Application Solutions & Technologies社の上海拠点)のCEO(Chief Exective Officer)を務めている.この日の講演も,学術的な話より,ビジネスの話が中心だった.


[写真2] 会場のようす
定員100名の会場は満席だった.


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