●そこにコミュニケーションが生まれる
さて,今回のわたしのイチオシをご紹介しましょう.
それは,//////////fur////の作品「HIS MASTER'S VOICE」(優秀賞)です(写真12).囲炉裏のような四角い囲いの中に,基板やLEDを内蔵した透明な球がいくつも入っています.囲いの側面には「球に向かって歌いかけてください」とのメッセージが.周りの人を気にしながら,小さな声で「大きな古時計」などを歌ってみるのですが,何も反応がありません.ん…と思っていると気さくな男性がやってきました.
「これ,なんだろう? 歌うって? アー,アー」
[写真12] 気さくな男性がきっかけを作り,人の輪が広がっていく.
すると,球がコロコロ…と男性のほうに転がっていくではないですか.近くにいた人も,いったい何だろう,と集まってきます.
「オーイ,オーイ.ぜんぜん動かないですよ」
「これ,ある特定の周波数に反応するんだろうね.アー」
「アー,アー,あ,来た!」
「ねぇ,声を出しても,球によって動きが違うね.すぐ寄ってくるのと来ないのとあるよ.設定を変えてあるのかな」
[写真13] 次々と,人々が集う.
さすがに,朗々と歌いだすのは皆恥ずかしいので「アー」や「オー」なのですが,それでも皆が頭を寄せ合って,声を出しては会話を始めます.人がいなければただの球の集合にすぎず,人が存在することにより,そこに「場」を生み出すこの作品,いやはや,すごいものだと感心しました.
●見えてくる自分の姿
さて最後に,インパクトはこれがいちばん,という作品を紹介します.それは,エアブレーキの作品「妖怪ヤミワラシ」(奨励賞)です(写真14).
[写真14] このデザインは,一度見たら忘れられない….
この妖怪,人の背中に取りつき,その人に目隠しをします.取りつかれた人が走って逃げると少しずつ視界が開け,スピードを落とすと再び視界が遮られる…というしくみです.これはひとつ,体験してみるしかありません.