VII. 打ち上げ当日

 午前6時にロビー集合…という当初の予定から若干遅れて,メンバが集まった.徒歩5分ほどの浜辺に向かう.ほとんど徹夜状態のはずなのに,皆,緊張感からかずいぶんとしゃきっとしている.

 打ち上げ準備は順調に進んだ.発射時刻の1分前までは….

 発射10分前.打ち上げシーケンスに従って,カウントダウンが始まる.発射2分前.松下氏がデータ・ロガーのGPS記録スタート・ボタンを押した.発射60秒前.岩橋氏が管制制御装置のカウントダウン・ボタンを押した.30秒前.10秒前.ここで,ストップがかかった.「管制制御局の表示装置部分(Windowsパソコン)がハングアップしています」森氏が緊迫した表情で告げた.

 Windowsパソコンの再起動を試みるが,パソコンは起動しなくなってしまった.砂浜が暖まったゆえの熱暴走だろうか.「しかたない.こういうときのために人間系がいるわけで,みんなでカウントダウンしましょう」と二上氏が見学者に呼びかける.10,9,8,7,…3,2,1,0! 二上氏が点火ボタンを押すと,ロケットは白煙を上げながら上空高く(90〜100m程度)飛び上がった.そして,パラシュートを開き,ゆっくりと湖上に降りてくる.


[写真8] 打ち上げ

 湖上で待機していたカヌーの回収隊がパラシュートの落下地点を見計らってこぎ寄り,着水して間もないロケットを回収した.見学者から拍手が湧き起こった.


[写真9] 打ち上げ成功

 ロケット内部のデータ・ロガー収納ケースは浸水しておらず,無事のようだ.トラブル続きだったプロジェクトだが,何とか「打ち上げ成功」のパネルを掲げることができた.メンバの顔に,一様に安堵の笑顔が浮かんでいる.失敗も多かったが,成功も,得るものも多い開発だった.何より,わくわくした開発プロジェクトだった.短くも長かった苦労の日々が報われた朝だった.

前のページ | 次のページ | TOP