トップ > レポート > 米国Crossbow Technology社のセンサ付きアクティブ型RFIDタグ「MOTE-2」


専用OSによって省電力を実現するアドホック型無線センサ・ネットワーク
――米国Crossbow Technology社のセンサ付きアクティブ型RFIDタグ「MOTE-2」

 

組み込みネット編集部

 2004年10月28日〜29日,米国Crossbow Technology社は,同社の無線センサ・ネットワーク・システム開発キット「MOTE」に関する技術セミナを開催した(写真1).大学やメーカの研究部門の技術者を対象に,開発者自身がMOTEの概念や無線センサ・ネットワーク用に開発されたOS「TinyOS」の解説やプログラミング実習などを行った.

 MOTEは,基地局用ボードやRFIDタグ(ノード),センサ基板,ゲートウェイなどで構成される(写真2).これらは無線端末のみで構成されるネットワーク(アドホック・ネットワーク)を構築する.アクセス・ポイントは必要としない.本RFIDタグは,各種センサから取得したデータを無線で伝送することを目的をしている.国によって法規制が異なるため,例えば米国では433MHz/916MHzの,欧州では868MHzの,日本では315MHzの周波数帯に対応したRFIDタグを提供している.また,2.4GHzの周波数帯を利用する無線通信「ZigBee(物理層はIEEE 802.15.4)」に対応した製品も用意している.


[写真1] セミナのようす
受講者は,パソコンとMOTEを持参して,プログラミング実習に取り組んだ.実習を伴った技術セミナが日本で開催されるのは今回が初めて.


[写真2] MOTE開発キット
左上の大きな基板がパソコンに接続する基地局ボード.その右および下にある小さい四角い基板は「MICA型」のRFIDタグ.右下の丸い基板は「DOT型」のRFIDタグ.DOT型は直径25mmと小さい.




 同社は3年ほど前にMOTEを発売した.すでに10万個近いのRFIDタグを出荷している.実証実験も始まっており,例えば米国ではぶどう畑に温度センサを搭載したRFIDタグを多数設置して適切な収穫時期を判断したり,ウミツバメの巣に設置して生態の研究などを行っているという.

 ここでは,本セミナに合わせて来日したCrossbow社のPresident&CEOであるMike Horton氏に,MOTE開発の経緯や要素技術,今後の展望などについて聞いた(写真3)


[写真3] Crossbow Technology社 President&CEOのMike Horton氏




――ワイヤレス・センサ・ネットワークに携わるようになったきっかけは?

Mike Horton氏:当社はもともと,MEMSセンサを用いたシステムを開発するところからスタートしました.MEMSセンサは半導体チップの製造プロセスを用いて作ります.そのため,センサ自体のコストは安くなっています.ところが,MEMSセンサどうしをつないでシステムを構築する際に,有線を用いると設計が難しく,かつコストが高くなります.

 この問題を解決するため,無線を用いてセンサ・ネットワークを構築することを考えました.私は米国University of California, Barkeley(UC Barkeley)出身で,当社の共同創設者が同大学工学部の学部長だったこともあり,両者が協力してワイヤレス・センサ・ネットワーク「SmartDust」の開発に取りかかりました.当社はハードウェア「MOTE」の構築を行い,UC BarkeleyはSmartDust向けのOS「TinyOS」を開発することになりました.


――「MOTE」の特徴の一つである低消費電力は,どうやって実現したのでしょうか.

Horton氏:低消費電力を実現できた大きな要因はOSにあります.もちろん,ハードウェアの設計についても低消費電力化に配慮しています.しかし,実際により多く低消費電力に貢献したのはソフトウェアです.

 ハードウェアでいくら低消費電力化を図ったとしても,適切な処理を行わなければ,低消費電力を効果的に実現できません(※注1).無線センサ・ネットワークでは,各ハードウェア(モジュール)間で同期をとったり,同時刻にスリープとウェイクアップを発生させたり,無線通信を高速にON/OFFしたり,センサへの電力供給を制御するなどの処理が要求されます.これらすべてを実現するためには,ソフトウェアでハードウェアをサポートする必要があります.

 また,マルチホップ方式(複数の無線接続でネットワークを構築する技術)のセンサ・ネットワークのような複雑なシステムを構築する場合,こうしたOSがないと実用的とは言えません.

※注1:TinyOSは,省電力を最重要視して設計されたOSである.要求されるタスクの処理に必要なコンポーネントのみをノードに搭載するしくみを持つ.また,パワー・マネージメントや時間同期の機能を備えている.本OSは,物理層からアプリケーション・ソフトウェアまでを制御する.



――マルチホップ方式はCrossbow社独自の技術ですか?

Horton氏:マルチホップ方式というのは一般的な技術であり,当社特有の技術ではありません.また,当社はハードウェアの情報も公開していますし,TinyOSもオープン・ソースです.

 ただし,TinyOS上で動作するアプリケーション・ソフトウェアの中には当社が開発したものがあり,それについては著作権を主張することができます.今のところ,こうしたソフトウェアについては,当社のMOTE(※注2を使用する場合であれば,無償で提供しています.また,別のハードウェアといっしょに使う場合でも,それが研究目的であればライセンス料は取りません.別のハードウェアで,かつ商用目的の場合は,ライセンス料の交渉を行っていくことを検討しています.

※注2:下記にも述べるように,他社製品でも「MOTE」という名称が使われているケースがある.



――Intel社の出資を受けていますが,技術面での協力は受けていますか?

Horton氏:UC BarkeleyはTinyOSを開発し,そして当社はTinyOS用のハードウェア「MOTE」を開発しました.約2年ほど前,Intel社はセンサ・ネットワークの分野に参入する方針を打ち立てました.同社はUC Barkeley内に研究室を設けて,TinyOSの開発に加わりました.また,当社のハードウェアである「MOTE」の開発にも関心を持ち,当社のエンジニア数人がIntel社の研究室に行って協力しました.新しいアプリケーション,モデリング,慣性センサの保守,Intel社のXScaleプロセッサを搭載したゲートウェイの開発など,多くの事がらについて協力し合っています.

 現在,当社は「MOTE-2」を,Intel社は「iMOTE」というハードウェアを開発しました.この二つは,少し異なる特徴を持っています.例えば,iMOTEはARMプロセッサを搭載しており,無線通信方式としてBluetoothを採用しています.

 一方,MOTE-2は微弱無線と小規模なプロセッサ(米国Atmel社製の「Atmega 128」)を採用しています.また,iMOTEは現段階では実験用途ですが,MOTE-2は商用のアプリケーションに用いられます.現在,私たちは次世代のハードウェアの開発を検討しています.その中には,MOTEアプリケーション向けのカスタム・チップの開発も含まれています.



――センサとCPU,RF回路は1チップ化されるのでしょうか?

Horton氏:それはもちろん行うつもりです.ただし,1チップ化を目指しているというよりも,高密度実装のマルチチップ・モジュールを開発するといったほうがよいかもしれません.例えば,温度センサは同じモジュール基板に実装されますが,使い勝手を考えるとそれ以外のセンサは外付けになるでしょう.次の製品を開発する段階で,いくつかのセンサ・オプションを作るつもりです.



過去の関連記事
●Crossbow,アドホック・ネットワーク用のセンサ付きアクティブ型RFIDタグを発売





トップ > レポート > 米国Crossbow Technology社のセンサ付きアクティブ型RFIDタグ「MOTE-2」

Copyright 2004 CQ Publishing Co.,Ltd.

Webmaster@kumikomi.net