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日本企業からグローバル企業へ,アドバネット社のこれから
――欧州企業からのM&A に応じた三つの理由

 

組み込みネット企画室


 CompactPCI Expressなどの先端的な組み込みボード技術を背景に日本国内で強固な顧客基盤を有するアドバネット社は,イタリア,ユーロテック社のグループに参加することになりました.そこで,ユーロテック社CEO(Chief Executive Officer)Roberto Siagri(ロベルト・シアグリ)氏と株式会社アドバネット取締役社長兼COO(Chief Operating Officer)栗原和也氏にM&Aの経緯や,今後の具体的な活動に関しお話しを伺いました.



Q1.ユーロテック社はなぜ,アドバネット社をグループに選ばれたのですか?

ロベルト・シアグリ氏(以下,シアグリ氏) アドバネット社の製品を初めて見たのは,2006年にドイツのニュルンベルクで開催されたEmbedded World 2006です.私たちユーロテック社はアジアへの進出を考えており,また,CompactPCIや,CompactPCI Express の技術を得意とする会社を探していました.同時期にアドバネット社も,海外進出を進めていました.これは海外展開において双方のメリットが一致するwin-win の関係でした.しかし,この時点でアドバネット社の会社規模は大きく,すぐにM&Aを提案できませんでした.ようやく2007年になりユーロテック・グループの業績も伸び,アドバネット社側にグループ企業参加の提案を行うことができました.アドバネット社のような製品ラインナップや,会社規模,またユーロテック・グループにない技術力を持っている企業はそうはありません.そこで私たちは相互に補い合う関係を提案しました.


Q2.アドバネット社はなぜ,ユーロテック社の M&Aに応じたのですか?

栗原和也氏(以下,栗原氏): ユーロテック社からのM&A に応じた理由は三つです.まず第1に製品がまったく競 合しないという事.第2に売り上げから見れば会社規模にそんなに大差がなかった事.第3に自社による2 年間の海外戦略計画で次の一手を思案中だった事です. 製品がまったく競合しないという理由は,非常に大きいと思います.M&A後に2社の補完関係を保ち,お互いに無い製品を補完しあい販売するには,同じ製品群では相乗効果がうすい.もし,同じボードコンピュータメー カであればM&Aには応じる事はなかったと思います.さらに会社規模にそれほど差がないという事も2社の関係を保つ上で重要となります.ユーロテック社の会社規 模がアドバネット社より上回る場合,M&A後にはユーロテック社の一部門になってしまいます.また,アドバ ネット社は2005年より2年間の海外戦略の一つとして,ドイツの展示会Embedded World とアメリカの展示会 Embedded System Conferenceに出展していました.そこで,ヨーロッパでの販路は見えてきましたが,アメリカでの展開に今ひとつ決め手を欠いていました.


[写真1] 今回の友好的M&Aについて説明する
アドバネット社 取締役社長兼COOの栗原和也氏




Q3.ユーロテック・グループにおけるアドバネッ ト社の位置づけは?

シアグリ氏: 私たちは,小型コンピュータとスーパーコン ピュータを製造しています.しかし二つの製品の間は,穴のあいた状態でした.そこで,私たちは,made in Japanのボードコンピュータとブランドを自社製品のラインナップに入れたいと考えていました.ですから,ア ドバネット社の位置づけは他のグループ企業とは異なり,ユーロテック日本支社ではなく,ユーロテック・グルー プのアドバネット社となります.また,これまでは,ユーザに対して,VME やCompact PCI 等の標準バスボードを提供できませんでしたが,アドバネット社の参加により新しい製品ラインナップの提案が可能となります.つまり自社のカタログになかった製品を加え,同時にアジアにおける拠点を持つことができました.これまでのモバイル製品以外の組み込み分野にも進出できるようになります.


[写真2] アドバネット社の位置づけについて解説する
ユーロテック社CEOのロベルト・シアグリ氏




Q4.今回のM&Aによって日本のユーザが得るメリットはありますか?

シアグリ氏 グループ企業は,各社の専門をあたかもバスのように繋ぎ,各国の市場で必要な製品を供給します.アドバネット社がユーロテック・グループになったことで,日本のユーザが得るメリットは,世界にあるユーロ テック・グループのリソースを活用できるシナジー効果 があります.

栗原氏 アドバネット社がユーロテック社に期待している事,つまりアドバネット社のユーザが得るメリットは,ユーロテックグループの総合力です.例えば,ユーロテッ ク社の試験設備を使用しEMC 試験や振動試験を行い,今まで以上に製品の品質を上げていきたいとも考えています.また,今後は世界標準の対環境ボードコンピュー タを製造したいと考えています.


Q5.これからの日本国内における活動はどう展 開されますか?

栗原氏 アドバネット社は,いままで日本企業としてユー ザに強い信頼を築いてきました.そこで,今回ユーロテック社のグループ企業になることについて正直不安はありました.ユーザは,日本企業がステアリングを操る状態 から,ヨーロッパの会社がステアリングを握るようになって不安があると思います.しかし,今回のM&Aに関して,アドバネットは,協議当初より,経営陣や事業体制,経営方針,製品開発,品質保証などを一切変更しない事 を条件に合意に踏み切りました.

 今回のアライアンスは,双方の相乗効果を考えた合意となっています.アドバネットのボードコンピュータを製造する姿勢は今までと一切 変わりません.この旨を現在ユーザに直接お伝えしてい ます.ユーザの反応は非常にポジティブに理解していただき,この友好的M&Aの成功を確信しています.また,グローバル化の波が進む日本において,日本の中小企業が海外進出を考えた場合このような友好的M&Aは効果的な手段として積極的に検討されるケースが増えてくるのではないかと思います.我々はそのモデルケースになりたいと考えています.


[写真3] 栗原和也氏とロベルト・シアグリ氏




■ユーロテック社の概要
 会社設立は1992 年,本社所在地はイタリアのアマロ市.PC-104(ISA バス準拠の規格)の小型コンピュータ(ナノPC)でスタートし,その後1997 年からPCIを使用したシステムを開発.しかし,イタリア国内での需要がないと判断し開発を中止した.その後,M&Aによるグループ企業のグローバル化を始め,アメリカ,フランス,フィンランドなどでPC-104を開発している 会社を買収し2005 年に会社を上場.これまでのモジュール単体での販売から,システム化での販売を始め,輸送,防衛,産業 分野に展開した.グローバル化よる,ユーザ・ニーズの変化からVME やCompact PCIなどの標準バスボードの技術が必要と判断し,アドバネット社へ今回のアライアンスを提案した.



■本記事に関するお問い合わせ先
株式会社アドバネット 広報
〒101-0046 東京都千代田区神田多町2-2 ハヤカワNo.3 ビル3 階
TEL : 03-5294-1731
FAX : 03-5294-1734
本記事に関するニュース・リリース
http://www.advanet.co.jp/news/news071016.html




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