TOPPERSプロジェクト,リアルタイムOSと汎用OSを一つのプロセッサ上で安全に共存させるデュアルOSモニタを無償で公開
 名古屋大学 大学院情報科学研究科 附属組込みシステム研究センター(NCES)と名古屋大学 高田研究室は,リアルタイムOSとAndroidなどの汎用OSを安全に共存させるためのデュアルOSモニタ・ソフトウェア「SafeG」を開発した.本ソフトウェアは,TOPPERSプロジェクトがオープン・ソース・ソフトウェアとして2011年6月に配布を開始する.

 本ソフトウェアはARMプロセッサのコアに実装された保護技術「ARM TrustZone」を利用して,リアルタイムOSと汎用OSをハードウェア上で分離して動作させる(リアルタイムOSをTrust状態で,汎用OSをNon-Trust状態で実行する).これにより,万が一汎用OSが誤動作したとしても,リアルタイムOS側には影響を与えずにすむ.

 例えば,カー・ナビゲーション・システムなどに使われることを想定して開発したという.カー・ナビゲーション・システムには,Androidなどのようにネットワーク経由で新たな機能を追加したいという要求がある一方で,確実に実行させたい処理もある.その両方の要求に応えるために,二つのOSを搭載するケースがあるという.

 本ソフトウェアを使って二つのOSを切り替えながら動作させる際には,リアルタイムOS側の割り込みを常に優先するため,リアルタイムOSのリアルタイム性は損なわれない.OSの切り替えにかかる時間は1μs〜2μs程度(210MHz動作の「ARM1176JZF-S」で測定).また,本ソフトウェアのコード・サイズは1.5Kバイト以下である.

 今回配布を開始するソフトウェアは,リアルタイムOSとしてTOPPERS/ASPカーネルを,汎用OSとしてLinuxおよびAndroidを用いている.また,ARMのシングル・コア・プロセッサのみに対応している.今後は,OS間の通信機能や柔軟なスケジューリング機構,マルチコア・プロセッサへの対応などについて開発を進める.なお,NCESは,共同で本ソフトウェアの開発を進める企業を募集している.

■連絡先
NPO法人 TOPPERSプロジェクト
TEL:03-3865-5616
E-mail:secretariat@toppers.jp
名古屋大学 大学院情報科学研究科 附属組込みシステム研究センター(NCES)
TEL:052-789-4228
E-mail:nces-office@nces.is.nagoya-u.ac.jp

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