エプソン,インクジェット技術でパターンを描く20層回路基板を試作
 セイコーエプソンは,インクジェット技術を利用してパターンを描く多層回路基板の試作に成功したと発表した.20層の回路基板を製作したところ,基材を除く厚さ(配線層+絶縁膜)が200μm,配線幅が50μm,配線ピッチが110μmで,導通を確認できたという.

 インクジェット技術はプリンタなどによく利用されているが,最近では回路基板のパターンの形成やディスプレイなどの構造材料の塗布にも応用され始めている.同社では,インクジェット方式としてピエゾ型を採用している.この方法では,電圧を加えるとピエゾ素子が変形して流路を押し縮め,ノズルから液体が飛び出す.

 今回の試作基板の場合,表面処理を施した基材の上に,メタル層を形成する液体(金属材料と溶剤の混合液)をインクジェット・ヘッドから直接塗布(描画)する.塗布する段階では,粒径が数nm〜数十μmの金属材料(Ag,Ni,Auなど)は有機物で包まれており,導電性はない.塗布後,150℃の熱処理によって有機物を除去することにより,金属配線が形成される.フォトマスク作成,フォトレジスト形成,露光,現像,エッチングといった工程が必要な従来のパターン形成と比べて工数が少なくなり,材料の使用量や廃液の排出量を大幅に低減できる.また,層間の絶縁膜もインクジェット・ヘッドから直接塗布すれば,容易に多層化できるという特徴がある.

 本技術を用いた同社の多層回路基板製造の研究は,2003年6月から3年間,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成を受けて進められている.信頼性など,これから検討するべき点もあるが,2007年ごろには同社の製品に本技術を適用していきたいという.

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セイコーエプソン株式会社

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