Texas Instruments,マイクロミラー・デバイス利用のディスプレイ機器の光効率が従来の1.8倍になる光投射技術を発表
 米国Texas Instruments社は,マイクロミラー・デバイス(DMD:Digital Micromirror Device)を使ったディスプレイ機器の光投射技術「SCR(Sequential Color Recapture)を発表した.この技術を用いると,従来に比べてプロジェクタの光効率が理論上1.8倍になる.同社はまた,DMD利用のプロジェクタ向けチップ・セット「D1000ファミリ」を発売する.集積度と輝度を上げたD1000ファミリを用いて,2002年には重量1.3kg,輝度2,000ルーメンのプロジェクタ製品の開発を実現できるという.

 DMDは,シリコン・マイクロマシン技術を用いて微細な可動ミラーを多数配列したものである.このデバイスを用いたディジタル・ディスプレイ技術(DLP:Digital Light Processor)では,DMDのミラー角度の変化により,スクリーンに映像を映し出す.このDLP技術は軽量または高輝度大型プロジェクタの市場ですでに採用されている(図1).プロジェクタの用途に応じて,使用するDMDの個数(1または3個)は異なる(表1).

 同社は,一つのDMDを用いたDLPシステム(1チップDMDシステム)に,SCR方式を採用してシステム全体の光効率を上げた.1チップDMDシステムでは,光源を出た光は円盤状のカラー・フィルタを通ってDMDにたどり着き,その後,投影レンズを介してスクリーンに照射される.従来の方式では,カラー・フィルタがRGBの順に回転するので,ある時点で取り出せるのは一つの色だけである(図2).一方,SCR方式では,このカラー・フィルタを変更することによって,一度に3色(RGB)を取り出せるようになった(図3).また,SCR方式では,今まで使われていなかった2/3の光を再利用できる.光源から発射された白色光(RとGとB)は,SCRインテグレータ・ロッドを通ってカラー・フィルタ(SCRホイール)に到達する.このとき,B,G(シアン)の光は赤いフィルタを通過せず,反射して戻っていく.反射した光は,SCRインテグレータ・ロッド入り口の端でまた反射し,フィルタへ戻る.フィルタ面積の2/3はGとBであるため,戻ってきたシアン光の2/3は出力光として再利用できる.これを無限回,光の速度で繰り返すと,理論上,光効率は従来の1.8倍になるという.

 D1000ファミリは,DMDチップ「DMD1000」とDMDコントローラ「DDP1000」,ミラー駆動用波形ジェネレータ「DAD1000」から構成される.また,このチップ・セットと組み合わせて使う開発ツール「DLP Composer」も用意する.

 DMD1000は,従来ミラー角度が±10度だったものを±12度にした.これによって,光源から受ける光学範囲が広がり,輝度が従来と比べて20%上がった.DMD1000については,解像度の異なる3種類の製品をそろえている.すなわち,0.7XGA(解像度1024×768ピクセル),0.55SVGA(同800×600),SXGA(同1280×1024)である.

 DDP1000は,4個のSDRAMを搭載していたが,DDP1000では1個のRDRAMに置き換えた.

 DAD1000は,従来は約60個の部品で構成されていた波形ジェネレータを1チップに集積したものである.

 D1000ファミリの顧客への出荷は2002年から開始する予定である.

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