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組み込みソフト開発のしきいを下げる“リアルタイムOS”のすべて
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おわりに


 この記事をご一読いただいたみなさんの中には,組み込みシステム関連記事としては,かなり原理的,抽象的な説明が多かったと感じられる方が多いかと思います.  現場で活躍されていらっしゃる方にとっては,おそらく実際のリアルタイムOS適用例がなく,不満に思われたかとも思います.

 確かに,具体例は必要だと思います.機会があればぜひ紹介させていただきたいと思います.しかしながら,今回このような構成にした理由は,初めて計算機システムの構築に関わる人たちにOSのしくみを基礎的なことから,ぜひ,知ってほしいと思ったからなのです.

 プログラムを組むこと自体は,この組み込みシステムの世界に入り,仕事をするような志を持った方にはなんでもないことだと思います.むしろ,プログラムを組むことが大好きで,自分の手で何か物を作ってみたい,と思う方が多いことを筆者は期待しています.

 しかし,組み込みの世界には,VBやVC++でアプリケーション・プログラムを作るようなリッチな開発環境に慣れている人にとっては,かなり厳しいハードルが待っているかもしれません.それはICE(in circuit emulator)を使った地道なハードウェア上の確認作業であるとか,gdbに代表されるような表示のキャラクタ・ベースのデバッガであるとか(まちがってもカラフルなGUI環境を思い浮かべてはいけない),APIのドキュメントも何もないなかで開発しなければならないとか…と書いてしまっては言い過ぎかもしれません.しかし,そのような環境で仕事をしなければならないことが多々あるのです.新しい組み込みシステムを作るときには,それは普通 のことなのです.とりあえず,その場にあるツールを何とか使っていくしかない場合だってあります.何もかも,自分でゼロから作り上げていかなければなりません.

 そうしたときに何が自分の武器になるでしょうか?もちろん,身につけたプログラミングの技は使えるでしょう.しかし,それ以上に必要になってくるのが,計算機,つまりハードウェアに対する知識と,そのハードウェアを使いこなすだけの力をもったOSの基本的な知識や理論だと思うのです.特定のOSに特化した知識であってももちろんかまいません.それは別 のOSを使う際の基礎となってくれることでしょう.

 さらに,自分がOSを作らなければいけないような場合(組み込みシステム開発の場合,それもよく起こるイベントの一つです),やはりOSに関する知識が身に付いているのとそうでないのとを比べれば,差は歴然としてくると思います.どんなシステムにも応用できる知識とは,退屈ではあるかもしれませんが,基本的な知識にほかならないと思います.基礎のないところに大きなビルは建てられないのと同じことが,計算機システムの構築にもいえると思います.

 この記事がそうした知識を得るきっかけとなれば,これに勝る喜びはありません.


参考文献
  1. Andrew S. Tanenbaum,Modern Operating Systems,Prentice Hall,Inc.,1992.
  2. 情報処理学会編,『エンサイクロペディア情報処理2000〜 2001』,オーム社.
  3. Michael Barr著 有馬三郎訳,『C/C++による組み込みシステムプログラミング』,オライリー・ジャパン.
  4. 高橋延匡,土居範久,益田隆司著,「オペレーティング・システムの機能と構成」,1983,岩波書店.
  5. 岡本茂監修 大島邦夫・堀本勝久著,『最新2001−'02年版パソコン用語辞典』,技術評論社,2001.


いけざき・しお

◆筆者プロフィール◆

池崎史生.高校時代に悪友に影響され理系の道を志す.某私立大学の工学部情報工学科に滑り込み入学したがアキバで買ったパチもんApple IIが原因で落第する.何社か勤めた後,某国立大学工学部に編入し,大学院に進学.某研究室で組み込み用OSを作る野望のみを移植される.が,諸般 の事情で修士取得を逃す羽目に陥る.その後某研究所で働きつつ合間にドイツに行くなど各地を放浪する.最近ようやくVLIWなchipの会社に就職し,社会保険をゲットした.野望はそのうち計算機分野と科学史分野で博士号を取ること(N2爆).

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