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エンジニア教育談義
大嶋洋一 |
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2003年7月,小泉首相が長として推し進めている知的財産戦略本部から「知的財産の創造,保護及び活用に関する推進計画」が発表された.いよいよ知的財産に関する本格的な改革活動が動き始める.この中には「大学における知的財産の創造を推進する」という項目が掲げられており,大学における特許教育は今後ますます熱心になることが予想される.
では,現状大学の現場ではどのような特許教育が行われているのだろうか.ここではその一例として,群馬大学において筆者が担当している「特許管理」の集中講義のようすを紹介する. ●約140名の工学部学部生が参加 特許管理の授業として,土曜日の9時〜 16時の講義を2日間行った.受講者は工学部の学部生であり,約140名が受講した. 講義の主な内容は,1日目が「エンジニアにとっての特許制度の意義」,「特許制度の簡易フローの理解(着想から審査結果まで)」,「国内特許情報の入手方法」,「海外特許情報の入手方法」,2日目が「特許公報の実際」,「特許請求の範囲」,「拒絶理由の条文の理解」,「審判制度について」である. ●「難しい特許」を身近に感じるためのくふうが必要 1日の授業時間が長いことと,ほとんどの受講者が特許を初めて学ぶため予備知識がゼロに近いということを前提に,講師としていくつかのくふうを試みた. 1)自分がわからないことは他人もわからない―疑問点の共有化 第1に,「授業への参加度」という項目を設けて,できるだけ受講者が授業に積極的に参加するように配慮した.これは単純に言えば,授業中に質問した者に対して授業参加度としてポイントを与えるシステムである.授業時間外に個別に質問した者に対してはポイントが与えられない.つまり,他者も抱えていると思われる問題を共有化して理解する機会を設けた質問者の貢献度を評価したのである.また,質問をするといっても初心者は何が聞きたいのかがはっきりしないケースが多い.質問者の意図を対話によって確認しながら,質問の内容を整理する必要がある.対話型による質問はこれに適した方法である. 2)得意なものを生かして興味を深める―インターネットの活用 第2に,インターネットを利用しながら実践的な内容(例えば,特許庁のホームページの電子図書館の利用方法など)を紹介した.現在の多くの若者は,パソコンを使うことにかけては筆者などよりも優れている.特許データベースの存在や,パソコンを利用してそのデータベースを検索する方法などを簡単に説明したことで,特許について興味を持ってもらえたようである. ただし,今回の授業では受講者数の関係上,講師が操作した内容をスクリーンで追いかけるという形式にとどまった.各受講者が自分でキーボードを叩いて特許データベースを体験できるようにすれば,さらに受講者の興味が増すように思う. 3)自分で発明してみることがたいせつ―発明提案書の作成 第3に,2回の講義の間に「自分自身で発明してみる」という提出課題を与えた.まず,各自に好きなように発明を書いてもらう.次に,その発明について先行技術調査を行った結果を整理する.このようにして,明細書を書く一歩手前の段階までを体験してもらった.ここでは,ウェッブスターが開発している「発明提案書作成ツール」を利用した.各受講生がウェッブスターのホームページからダウンロードして利用できるように,同社に協力いただいた. ●興味を持ってもらわないと何も始まらない 各講義日の最後に,授業の効果を確認するための簡単なテストを行った.テスト自体は,30〜60分程度で記入できるようにA4用紙1枚の分量である.初日は特許審査のフローについて,2日目は主な拒絶理由条文についての説明を求めた.解答用紙には「意見・感想」の欄を設けたが,特に強制しなかったにもかかわらず,ほぼ全員がコメントを書いてくれた.講義を通じて実感したことは,特許制度について多くの受講生が興味を持っていることである.「一かく千金を夢見て」というタイプもいれば,著作権や国際問題といった内容にひかれる学生もおり,興味の対象はさまざまである. 限られた時間の中で,講師が最優先すべき課題は,特許に対する興味を引き出す,あるいは育てることであろう.まずは導入の場面で興味を感じてもらい,興味を持った時点であらためて特許制度に関する情報を提供してさらに深い興味へとつなげる,という一連の流れを作り出すことがたいせつだと感じた. (本コラムはDESIGN WAVE MAGAZINE 2003年9月号に掲載されました) |
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◆筆者プロフィール◆ |
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