しかし,本書では,あえてハードウェア面の解説を充実させたのだと見るべきだろう.本書は,それぞれのハードウェアが実現すべき役割を,スペクトラム拡散技術の原理をベースに解説している.Bluetoothプロトコルという概念にとらわれず,今後の移動体通信システムの主流ともなるスペクトラム拡散技術の応用例を紹介しながら,Bluetoothを他のシステムと対比させているのが本書の特徴である.
携帯電話とパソコンの業界が学際的に技術開発を進めたBluetoothは,現在のIT(information technology)市場においてもっとも先進的な技術の融合を提示している.すなわちモバイルとインターネットの双方を十分に理解していなければ,Bluetoothに対する本当の理解には至らない.
パソコンのソフトウェア技術者などからすると,通信手段がワイヤレスであろうとなかろうと,ほとんど意識していないのが現状である.一方,携帯電話の設計技術者からすると,「あとはソフトウェアで対応してくれ」と考えがちである.しかし,Bluetoothではこれら双方の利点を生かした技術が使われている.
あえてスペクトラム拡散技術に焦点をあてている本書は,ソフトウェア技術者に対するワイヤレス通信のハードウェア技術書として,これまで知られていなかったワイヤレスの世界をソフトウェア技術者に教えてくれるであろう.
宮津和弘
日本エリクソン(株)